Dossier special - 海外の特集

  • 1.オランジュリーで出会うブリヂストン美術館の名品
  • 2.展覧会レポート−6つのセクションで辿る珠玉のコレクション
  • 3.オランジュリー美術館学芸員に聞く本展の魅力

パリ・オランジュリー美術館 ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション展

▲オランジュリー美術館学芸員のセシルさんとポール・ギヨームの肖像画

オランジュリー美術館学芸員に聞く本展の魅力

今回コミッショナーを務めるオランジュリー美術館学芸員のセシル・ジラルドー(Cécile Girardeau)さんに、本展覧会について MMMが単独にお話を伺ってきました。

まず石橋財団ブリヂストン美術館のコレクションに初めて出会ったときの感想をお聞かせください。
オランジュリー美術館の学芸員になってから、早い時期に作品搬入の付き添いのために出張する機会がありました。そこで初めて東京に行った際にいくつかの美術館を訪れたのですが、そのうちのひとつがブリヂストン美術館でした。当時行われていたのはブリヂストン美術館所蔵のコレクションを紹介する「ベスト・オブ・ザ・ベスト」という企画展です。まず展示されている作品の質の高さにたいへん魅了されました。中でも印象に残ったのは、セザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》、ピカソの《腕を組んですわるサルタンバンク》、ルノワールの《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》の作品で、今もそれらは心に焼きついています。
本展の作品のセレクションはどのように行われましたか?
作品のセレクションはブリヂストン美術館の学芸員の方々との共同作業で進めましたが、展示できる名品を選ぶのには熟考を要しました。展示室のスペースは約500uと限られているため、さらに作品を絞る必要がありました。しかし最終的に一貫性のある内容でセレクションできたことにとても満足しています。
日本の洋画の印象をお聞かせください。

▲青木繁《海の幸》1904年 
石橋財団ブリヂストン美術館蔵

私にとっては真の発見でした。それは本展で日本の洋画作品を見るフランス人の観客にとっても同じことだと思います。日本の洋画の中に見出すことのできる多様性とその奥深さは歴然です。本展ではひとつの流派のように「洋画」を紹介していますが、実際洋画にはさまざまな研究方法、それぞれたいへん異なる画家たちの個性があります。その内容の豊かさには本当に驚かされました。
本展の印象派コレクションの中で、特に注目した作品はなんでしょうか?

▲クロード・モネ《睡蓮》1903年 
石橋財団ブリヂストン美術館蔵

印象派のコレクションの中で注目したのはやはりモネの優れた作品群です。特にオランジュリー美術館のコレクションを想起させる《睡蓮》の作品が印象深かったです。オランジュリーではふたつの大展示室でモネの素晴らしい「睡蓮」を展示しているからです。またヴェネツィアの風景画やアルジャントゥイユの洪水にもとても心を打たれました。
 本展覧会でこれらの作品を紹介できるのをたいへん嬉しく思います。モネの作品だけでなく、本展のあらゆる世代の作品のセレクションの質には本当に感銘を受けています。おのおのの作品が美術史の中で特別な位置を占めており、それらが一体となることで完璧な展示内容に仕上がっています。
オランジュリー美術館のコレクションとの共通点も多く見受けられますね。

▲オランジュリー美術館の常設展、ポール・ギヨームのコレクションの展示

その通りです。私たちもその類似性に気づきました。例えばキリコ(Giorgio de Chirico/1888-1978)、モディリアーニ、スーティン(Chaïm Soutine/1893-1943)、ルソー(Henri Rousseau/1844-
1910)、ピカソなどの共通のアーティストのコレクションが挙げられます。ピカソに関しては1920年代の新古典時代の作品というさらなる類似点があります。これはマティスのコレクションも同様です。それ以外にもいくつもの一致点がありますが、とりわけ古典的なモダンアートの作品の好みが似ていることに驚いています。
日本の観客へのメッセージがありましたらお願いします。
日本人の方々はこれらのブリヂストン美術館のコレクションをすでによくご存知かと思います。しかしながら現在ブリヂストン美術館は休館中のため、パリで鑑賞する絶好の機会です。展示方法も異なるので、別の目線で鑑賞できるかもしれません。またオランジュリー美術館のコレクションと比較しながら鑑賞するのも面白いでしょう。きっとブリヂストン美術館のコレクションの新しい側面を発見していただけると思います。

[FIN]

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Update : 2017.6.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

パリ・オランジュリー美術館 ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション展

会期
2017年4月5日(水)
〜2017年8月21日(月)
会場
Jardin des Tuileries (côté Seine) 75001 Paris
TEL
+33(0)1 44 50 43 00
URL
http://www.musee-orangerie.fr/
開館時間
9:00-18:00
※7月14日の午前は閉館
休館日
火曜日
入場料
一般:9ユーロ
割引:6.5ユーロ
オルセー美術館との共通券:16ユーロ
アクセス
地下鉄1番線、8番線、12番線Concorde駅から徒歩3分
※この情報は2017年6月更新時のものです。
MMMで出会える ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション展
MMMライブラリでは、本展のカタログを閲覧いただけます。
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