「マリー=アントワネットの  衣装管理人の記録、1782年」
 
モードの担い手、またはファッション中毒─ アントワネットの真の姿は?
 《AE I 6 no 2》──パリ、国立古文書館にはこの分類番号のもと、一揃いの生地見本が保管されています。簡潔なコメントとともに大切に保管されていたこれらの生地は、マリー=アントワネットの衣装や装飾品の管理を任されていたマダム・オシュンが所有していたもの。つまり、フランス最後の王妃のドレスに用いられた生地なのです。着道楽で知られたアントワネットのワードローブを知るためのこの貴重な資料は、2006年10月から2007年2月まで同館で開催された特別展で公開され、多くの人々の関心を集めました。
  本書はその特別展のために作られた図録。生地見本帖の再現と解説図録からなる豪華なカタログですが、とりわけ素晴らしいのが生地見本帖です。一枚一枚の生地の風合いはもちろん、長い歳月を経て劣化した紙のマチエールまでをそのままに再現し、製本は往時の方法どおり糸綴じ──いかにもフランスらしいこだわりが随所に隠されていて、ページを繰るだけでも楽しめる一冊です。
 見本帖を開いてみて驚かされるのは、どの生地も予想に反してシンプルで地味、質素な織りだということです。数多の記録や絵画はアントワネットの衣装がいかに贅沢なものだったかを伝えてきました。そのイメージとこの生地見本との間のギャップはなぜ生まれたのか。
 
「マリー=アントワネットの衣装管理人の記録、
1782年」
Gazette des atours de Marie-Antoinette de 1782
22.3×33.6cm/
解説図録45ページ、生地見本帖43ページ
フランス語/刊行2006年
価格/12,600円(税込)
その答えは衣装に対する趣向の変化にあります。18世紀末のフランスでは、衣装の価値は、かつてのように素材の良し悪しではなく、スタイルにあったのです。こうして、目まぐるしく流行が変わるようになった当時の宮廷で、つねにその最先端にいたのがアントワネットでした。彼女は単なる流行の媒介役でしかなかったのか、あるいは新しいモードの創造者だったのか──。本書は、豊富な資料や図版とともに、その実像に迫ります。
 
 
 
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