ピカソ美術館
ピカソが手放さなかったピカソ芸術の宝庫<ピカソ美術館>
いまならこんな歩き方〜20周年を機に、ふたたびピカソ美術館へ〜
ピカソの源にふれる「デッサンの情熱」展
ピカソの版画・デッサン用の3F展示室
© Photo RMN/R.G.Ojéda
/ distributed by DNPAC
ピカソが生まれて初めて発したのは「ピス!ピス!」というスペイン語で鉛筆を現す言葉。「鉛筆をちょうだい」といっては、欲しいお菓子も、見たものも、鉛筆で描いてみせたといいます。それほどまでに、デッサンが言葉であり、表現であったピカソ。幼いころより「ラファエロのようにデッサンできた」という巧みさを超えて、喜び、悲しみ、そして情熱を、日記のように描いた1枚1枚は、人間ピカソの身近な感情を伝えてくれます。ピカソ美術館では、開館20周年を記念して、所蔵する1500点以上のデッサンから選出した「ピカソ。デッサンの情熱」展を開催。どれもがピカソが肌身はなさず所蔵していた、まさに素顔のピカソたち。日常のピカソに会いに行く気分で、ふらりと出かけたい展覧会です。
 
王帝時代のなごりを残す歴史あるマレ地区
ピカソ美術館が建つマレ地区は、古くは大修道院の沼(マレ)があったところでその名の由来になっています。14世紀になり、国王シャルル5世が、ここマレ地区のサン・ポール館に移り住み、それ以降、王宮地区として18世紀初頭まで栄華を極めました。そのころ、豪華な邸宅も建ち並び、パリの知的な人々が集まる高級住宅街となりました。現在でも、気品のある街並みに、ギャラリー、ブティックが立ち並ぶ、おしゃれなエリア。古き良きものと新しい流行が混在する、パリさしさが楽しめます。
ピカソ芸術と歴史ある館が共存する〜ピカソ美術館〜
300年の時を経てピカソと出会った館「オテル・サレ」
オテル・サレ内観、
ジュピターの間へ続く大階段
© Photo RMN/Bergeret /
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現在ピカソ美術館となった「サレ館」は、ルイ14世の時代1659年に、塩税徴収官ピエール・オーベールが3年を費やして建てた館です。私服を肥やした徴収官に対し周りが皮肉を込め「オテル・サレ(塩の館)」と呼んだこの邸宅は、ヴェルサイユ宮殿を手掛けた職人による彫刻装飾など、当時の建築芸術の粋をつくしたマレ地区でも有数の美しさを誇る邸宅です。その後、ヴェニス大使公邸などを経て、革命時には国家財産となったことも。1815年以降は、技術工業中央学校の校舎、工芸学校だったこともあり、バルザックの学舎でもありました。しかしマレ地区が衰退した20世紀には荒廃寸前に。1964年にパリ市の所有になり、歴史的建造物として認定された1968年からは修理が重ねられ、1974年ピカソとの出会いを迎えました。
9年をかけて「サレ館」から「ピカソ美術館」へ
地階、展示室16
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ピカソが亡くなった翌年の1974年、当時の文化担当国務大臣がこの「サレ館」をピカソ美術館にしようという案が決定されました。「私は古い家が好きなんだ」と語り、ボワジュール城をはじめ歴史ある館に住んだピカソが気に入っていた館のひとつでもありました。4つの候補からローランド・シムネの設計が選ばれ、1976年から開館の1985年に向けてサレ館はピカソ美術館として改装されました。17世紀の個人邸宅を、世界中からの来訪者が訪れる現代的な美術館にするために、結果として、長い歴史の間に作り替えられたものを撤去し、サレ館本来ののびやかな空間が再現されました。またジャコメッティにより、シャンデリア、長椅子、テーブルや数々の装飾品が特別に誂えられ、ピカソ作品と空間の美しい融合が完成されました。
ピカソが手放さなかった膨大なコレクションを収蔵
展示室11:「化粧する女たち」
© Photo RMN/Bergeret /
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「ピカソの世界一のコレクターは私である」と自身がいったとおり、ピカソは生涯にわたる膨大な作品を手元に保存していました。それらは自身が惚れ込んで売却を拒否し続けた傑作、または身近な人々を描いた愛情溢れる作品など、どれもがピカソの分身といえる作品です。1990年19歳でフランスに移住して以来の生涯にわたる作品を残し、遺言ひとつ残さず世を去ったピカソ。遺産相続の際、相続税としてフランスに収められたそれらの作品を、ピカソに一番近かった理解者たちが6年をかけて厳選しピカソ美術館に収蔵しました。その数、絵画203点、彫刻158点、レリーフ29点、陶器88点、デッサン1500点以上、ノート約30点、版画1600点以上。各時代のバランスのとれたコレクションにより、ピカソ芸術が諦観できます。また、ドガ、ユトリロ、シャガールや、民族芸術などのピカソ個人のコレクションも見ることがでいます。
生涯をたどるように導かれる、部屋ごとの時代別展示
展示室1:ピカソ20歳の「自画像」を
含む「青の時代」
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「ギターを持つ男」を含む展示室4
© Photo RMN/R.G.Ojéda
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永遠の芸術を求めるように、ひとつの絵画手法にとどまらなかったピカソ。パリのピカソ美術館では、邸宅のつくりを生かし、一室ごとに時代、テーマで展示され、年代を追って鑑賞できるように順路が示されています。「青の時代」を展示した2階の大部屋にはじまり、1階、彫刻が立ち並ぶ庭、地下、そして中庭へ。邸宅におじゃました気分で、20の展示室をめぐるうちに、ピカソの生涯がとても身近に感じられてきます。創作の年代順であるために、人生の流れの中で創作されていった、彫刻、レリーフ、陶器、コラージュ、デッサンなどが、心地よく混在するのもピカソ美術館ならでは。それらがバランス良く展示され、サレ館の空間ともうひとつの芸術を生み出しているかのようです。ひとまわりした後は、彫刻の庭でアートを深呼吸するもよし、小さなカフェで一息つくもよし。豪奢と情熱が、自由に溶け合う、パリならではのピカソ美術館は、何度でも訪ねてインスパイアーされたいミュゼのひとつです。
Muse´e Gustave Moreau
©Photo RMN / Daniel Arnaudet
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PARIS MUSEUM PASS 利用可能施設
所在地:
Hôtel Salé 5, rue de Thorigny 75003 Paris
休館日:
火曜日、1/1、12/25
開館時間:
(4/1〜9/30)9:30-18:00
(10/1-3/31)9:30-17:30
入館料:
一般:6,70ユーロ 18 -25歳:5,20ユーロ
18歳未満,現役教育関係者:無料
毎月第一日曜日は無料
MMFで出会えるピカソ
インフォメーションセンター
作品「アヴィニョンの娘たち」習作のためのデッサンを結集し好評を博した1988年開催の「アヴィニョンの娘たち」展から2004年開催の「ベーコン―ピカソ」展までの、ピカソ美術館で開催された展覧会カタログ、同館が収蔵するデッサン・版画レゾネ、パリの同館の他、アンティーブのピカソ美術館、ヴァロリスのピカソ戦争と平和美術館のコレクションガイドなど、計30冊の書籍、ビデオ、DVDをインフォメーションセンターにて閲覧いただけます。
「ピカソ美術館」コレクションアルバム(日本語版)、DVD「マティス−ピカソ」はご希望によりご購入いただくこともできます。
 

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。

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