ジュール・ヴェルヌ博物館
子ども時代の夢を思い出させてくれるミュゼ<ジュール・ヴェルヌ博物館>
博物館正面入口
© Régis Routier Ville de Nantes
2005年はヴェルヌの没後100周年にあたり、フランス各地でさまざまなイベントが開催され、新刊書や特集雑誌の出版が相次ぎました。特に、生誕の地ナントと、ヴェルヌが亡くなるまで35年間暮らしたアミアンでは、展覧会やパレード、コンサート、上映会、講演会など、子ども向けから大学主催のアカデミックなものまで、一年を通じて数多くの催しが開かれました。10月には、ナントの「ジュール・ヴェルヌ博物館」がリニューアルオープン。ここを訪れればいつでも、ヴェルヌの夢と空想の世界に浸ることができます。
ナントとジュール・ヴェルヌ博物館
ジュール・ヴェルヌ時代のナント港
© Régis Routier Ville de Nantes
ジュール・ヴェルヌは1828年、フランス北西部の町ナントで生まれました。ロワール河の河口に位置するナントは18世紀には砂糖と奴隷貿易で栄えた港湾都市。現在でも、華やかな壁面彫刻や凝ったデザインの窓枠などに当時の豊かさが偲ばれます。ロワール河沿いの高台、19世紀の瀟洒な邸宅に、1978年、作家の生誕150周年を記念して、ジュール・ヴェルヌ博物館が開設されました。これまで地味な印象がぬぐえなかったこの博物館は、今年、障害者のアクセスにも配慮して内装を一新。更にマルティメディアを導入し、最新の研究成果をもとに大幅な展示替えをおこないました。

館内玄関
© Régis Routier Ville de Nantes
博物館には手書き草稿のコピーや書簡、豪華装丁本、挿絵、ポスター、そしてヴェルヌが所有していた地球儀やコンパス、ヴェルヌがコレクションしたさまざまなオブジェ、驚異的な機械やノーチラス号の模型などが展示されています。

心躍る彼の世界に満ちた空間を、たとえばミュゼおすすめのこんなルートで楽しんでみませんか?
彼の創造力の港<1階>からスタート
ジュール・ヴェルヌのサロン(居間)
サロンとオノリーヌの肖像
© Régis Routier Ville de Nantes
まずは1階サロンでヴェルヌご本人にボンジュール。サロンに入ると、ジュール・ヴェルヌとその妻オノリーヌの肖像が迎えてくれます。肘掛け椅子と振り子時計はヴェルヌの居間にあったもので、食器類とともにナント市に寄贈されました。生前、ヨーロッパ各地から訪れるジャーナリストを迎えた、豊かでありながらも決して華美にすぎない人気小説家の居間の雰囲気を彷彿とさせます。
すべてが冒険への船出につながった子供時代
ヴェルヌの子供時代を想わせる展示室
© Régis Routier Ville de Nantes
サロンを出ると、ヴェルヌの子供時代や家庭環境に関する品々が展示されています。ナントで過ごした子供時代はヴェルヌの創作に決定的な影響を与えました。「私が生まれたナントにはそういう雰囲気がありました。長い航海の出発点で終着点でもある商業都市の海辺のざわめきの中で私は育ったのです」とヴェルヌは後に語っています。家の窓からは港で働く人々が見え、海軍工廠に行けばそこで動いている機械類を見ることができました。家出してインド行きの船に乗り込み、父親に連れ戻されると「これからは空想の中でしか旅行しません」と言ったというヴェルヌ。後にヴェルヌの作品を作り上げるさまざまな要素が子供時代を過ごしたナントには揃っていたのです。
無限の夢のキーワード「海」
サン・ミッシェル3号の模型
© Régis Routier Ville de Nantes
ジュール・ヴェルヌは海と航海に魅せられた作家でした。生涯3隻の船を所有し、3隻目の「サン・ミッシェル3号」は、全長33メートルの蒸気船でした。『驚異の旅』シリーズの半分は海での冒険を描いています。
いよいよ彼の作品世界<地下1階>に潜入
出版社社主エッツェルとの出会い
ジュール・ヴェルヌ小説の原本
© Régis Routier Ville de Nantes
父親の意向もありパリの大学で法学を専攻していたヴェルヌは、文学への情熱が押さえきれず、1862年、『気球に乗って五週間』を出版社の社主ピエール=ジュール・エッツェルに託します。この作品は翌年出版されるやいなや大成功をおさめました。ヴェルヌの才能に注目したエッツェルは、『驚異の旅』シリーズと銘打って次々に彼作品を発表します。以後、ヴェルヌとエッツェルはフランス文学史上例のない密接な協力関係を結ぶことになりました。エッツェルは、小説の進行に口をはさみ、文体を直し、筋立てや登場人物にまで意見しました。ヴェルヌはこうした要求に反発しつつも、大きな刺激を受けていたといいます。また、クリスマス時期に贈り物用として豪華装丁を出すなど、エッツェルのたぐいまれなマーケティングのセンスがヴェルヌの商業的成功を支えていました。エッツェル版とよばれる豪華装丁版は、現在でもコレクターの間で絶大な人気をあつめています。
地球のすべてを探検した百科全書的小説
『驚異の旅』シリーズは、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、海上、海底、空中、地底など地球上のあらゆる世界を舞台にした百科全書的小説とも言えます。地球をすみずみまで眺めわたし、地理学的啓蒙の役割も果たしていました。また、科学的発見の相次ぐ19世紀に生きたヴェルヌの作品では、潜水艦ノーチラス号や空中艇アルバトロス号など、作者が想像した驚異的な機械の数々が重要な役割を果たしています。
 
ときめきは小説を超えて
世界一周を空想したヴェルヌを想わせる部屋
© Régis Routier Ville de Nantes
1872年に新聞連載小説として発表された『八十日間世界一周』は、出版されるとベストセラーになり、10万部以上を売り上げました。その後版を重ね、各国語に翻訳され、映画化、マンガ化も実現し、世界中で広く知られるところとなります。
この小説を初めに演劇に仕立てたのはジュール・ヴェルヌ自身でした。作品がパリのポルト・サン・マルタン劇場、ついでシャトレ劇場で上演されると大変な評判を呼び、ヴェルヌの名声を更に高めます。小説をもとにゲームやパズル、幻灯機のプレートなどが作られた事実は、ヴェルヌの人気がどれほど高かったかよく表しているといえるでしょう。
もっと深く浸りたいなら<地下2階>へ潜伏
尽きることのないヴェルヌの魅力。もっと知りたい方は、地下2階の図書室と視聴覚室で、さらなる理解を深めることができます。
阿部明日香(文)
Muse´e Jules Verne
© Régis Routier Ville de Nantes
所在地:
3, rue de l'Hermitage, 44100 Nantes
休館日:
火曜日、日曜日の午前中、祝日
開館時間:
10:00-12:00、14:00-18:00
入館料:
一般:3ユーロ
割引:1.5ユーロ(毎月第4日曜日、学生の団体、18歳未満、障害者)
MMFで出会えるジュール・ヴェルヌ
インフォメーションセンター
ジュール・ヴェルヌ没後100周年特集雑誌をインフォメーションセンターにて閲覧いただけます。
 

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