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▲美術館1階の様子。右奥に展示されているのはカミーユ・ピサロ。
© kleinefenn@ifrance.com |
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1873年、ノルマンディー地方の港町ル・アーヴル──。ここに、夜明けの港を描くひとりの画家の姿がありました。画家の名はクロード・モネ(Claude
Monet)。完成した作品はのちに印象派絵画の誕生を宣言することになる『印象─日の出』でした。
そんな記念すべき一枚が生まれた町にふさわしく、ル・アーヴルには現在、フランス有数の印象派コレクションを所蔵する美術館があります。 |
作家アンドレ・マルロー(André
Malraux)が1961年に創設したマルロー美術館です。当時、文相を務めていたマルローは、第二次世界大戦の深い傷跡の残るル・アーヴルの町に、文化センターを兼ねた美術館をオープンすることを決定し、市民が芸術に親しみやすい空間をと、開放感溢れるモダンな美術館を設立したのです。前身となったのは、第二次世界大戦によって破壊されたル・アーヴル美術館でした。
その後、美術館のコレクションは寄贈や購入によって充実し、19世紀フランス絵画を中心に、17世紀から現在までの西洋美術の流れを追うことのできるものとなりました。そして、1999年には、設立当初の建築美を尊重するかたちで全面改装を終了。しかし、そのわずか数年後、マルロー美術館は、再度の改装の必要に迫られる嬉しいニュースを受け取ることになったのです。 |
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▲ルノワール『観光客』(1888年)。
Auguste Renoir :L'Excursionniste, 1888,
Legs Charles-Auguste Marande, 1936, Le Havre,
Musée Malraux |
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▲「セン=フォールズ・コレクション」の展示室。手前はルノワールの『ニニ・ロペスの肖像』(1876年)。Auguste
Renoir :Portrait de Nini Lopez, 1876
©Collection SENN, Le Havre, Musée
Malraux.
©kleinefenn@ifrance.com |
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ドラクロワ(Eugène
Delacroix)、クールベ(Gustave Courbet)、ルノワール(Pierre-Auguste
Renoir)、モネ(Claude Monet)、ボナール(Pierre Bonnard)、シスレー(Alfred
Sisley)、マルケ(Albert Marquet)、マティス(Henri Matisse)……。2004年12月、印象派を中心に、後期印象派やナビ派、フォーヴィスムまでを含む計206点ものフランス近代美術の名品が揃うプライベート・コレクションが、マルロー美術館に寄贈されることになりました。 |
寄贈者はエレーヌ・セン=フールズ(Hélène
Senn-Foulds)。コレクションは、彼女の祖父のオリヴィエ・セン(Olivier Senn)が19世紀末から20世紀初頭にかけて築いたものでした。ル・アーヴルに生まれ、実業家として財をなしたオリヴィエ・センは、芸術に造詣の深い人物でした。1986年に町の「芸術友の会」のメンバー、1906年には美術愛好家と芸術家からなる団体「現代芸術サークル」の創設者となり、同時代の芸術家を庇護する一方で、確かな審美眼で優れた作品を買い求め、自らのコレクションを作り上げていったのです。
この「セン=フールズ・コレクション」の寄贈によって、マルロー美術館はフランス第二の印象派コレクションを有する美術館となりました。そして、この大規模なコレクションを展示するスペースを確保するために、2006年、再び改装されることとなったのです。 |
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▲改装によって外光が入るようになった中2階。
壁に展示されるのはブーダンのコレクション。
© kleinefenn@ifrance.com |
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このコレクションの展示場として選ばれたのは、美術館の中2階でした。改装を手がけた建築家グループは、展示用の壁の位置を変更することを提案。それまで展示室と外界とを遮っていた壁の位置を変え、また取り除くことで、この素晴らしいコレクションにふさわしいスペースと雰囲気を作り出したのです。こうして誕生した「セン=フールズ・コレクション」展示室の何よりの魅力は、自然光、そして海を望む素晴らしい眺望です。訪れた人々は外光が射す明るい空間で絵画を鑑賞しつつ、港町ル・アーヴルの象徴である海を眺めるという贅沢な時間を楽しめるようになったのです。 |
もちろん美術館の見どころは「セン=フールズ・コレクション」だけではありません。オリヴィエ・センと同時代の美術愛好家マランド(Charles-Auguste
Marande)が遺した印象派からフォーヴィスムまでのコレクションのほか、ブーダン(Eugène
Boudin)、デュフィ(Raoul Dufy)など、ル・アーヴルゆかりの画家の遺族からの寄贈作品のほとんども、これまで同様、常設展示されていく予定です。また、新たに「グラフィック・アート」展示室も完成し、これまで収蔵庫で眠っていた作品も公開されるようになりました。 |
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▲「セン=フォールズ・コレクション」の展示室。
©Collection SENN, Le Havre, Musée
Malraux.
©kleinefenn@ifrance.com |
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▲ブーダン『空の習作』(1888〜1895年頃)。
Eugène Boudin : Etude de ciel, vers
1888-1895, Don Louis Boudin, 1900, Le Havre,
Musée Malraux. |
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ブーダンやデュフィはもちろん、ル・アーヴルの町にインスピレーションを受けた画家は数多くいます。モネ、クールベ、コロー(Jean-Baptiste
Camille Corot)、シスレー……。幾多の芸術家に愛されたこの町は、2005年7月、ユネスコ世界遺産に認定されました。第二次世界大戦によって壊滅的な被害を受けたのち、世界的な建築家オーギュスト・ペレ(Auguste
Perret)の手によって機能的かつ前衛的な美をもった町として生まれ変わり、都市遺産としての価値が認められたのです。 |
さらに、今年は「ARTS, LE
HAVRE 2006」と題して第1回ビエンナーレ(6月1日〜25日)も開催され、「芸術と歴史の町」として世界的に知られるようになったル・アーヴル。その中心として、人々と芸術とを繋いできたのが今回、改装工事を終えて再オープンした「マルロー美術館」です。生まれ変わったミュゼの何よりの魅力は、約1世紀にわたり個人コレクターが所蔵してきたフランス有数の印象派コレクション。これまで、ほとんど一般に公開されることのなかった“隠れた名画”探訪の旅に、ノルマンディーの地を訪ねてみませんか。
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▲クールベ『波』(1869年)。
Gustave Courbet : La Vague, 1869, Achat de
la Ville du Havre avec l'aide de l'Etat et
de la Région Haute-Normandie, 2003,
Le Havre, musée Malraux. |
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▲ヴァン・ドンゲン『モンマルトルのパリジェンヌ』(1907〜1910年頃)。
Kees Van Dongen : La Parisienne de Montmartre,
vers 1907-1910, Legs Charles-Auguste Marande,
1936, Le Havre, Musée Malraux. |
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所在地 |
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2
boulevard Clemenceau
76600 Le Havre |
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Tel |
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02
35 19 622 62 |
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Fax |
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02
35 19 62 77 |
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開館情報 |
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月曜〜金曜日:11:00-18:00
土曜・日曜日:11:00-19:00 |
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休館日 |
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火曜日、1月1日、5月1日、7月14日、11月11日、12月25日 |
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入館料 |
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一般:5ユーロ
割引:3.8ユーロ(6名以上の団体、障害者など)
※毎月第一土曜日は無料。 |
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アクセス |
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SNCFル・アーヴル(Le
Havre)駅からバス(3番線)でマルロー美術館(Musée
Malraux)下車。 |
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B1Fインフォメーション・センターでは、「セン=フールズ・コレクション」のカタログのほか、2004年に開催されたクールベの「波」に関する展覧会や、戦後ル・アーヴルの再建に関する展覧会のカタログなどのマルロー美術館関連図書を閲覧いただけます。 |
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フランス北西部、ノルマンディー地方の都市。19〜20世紀初頭には、セーヌ川の河口にある大貿易港として繁栄するが、第二次世界大戦で壊滅的な被害を受ける。戦後の都市計画により近代都市として復興し、2005年にユネスコ文化遺産に登録された。対岸のオン・フルールとは、ノルマンディー橋で結ばれている。 |
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交通 |
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パリ・サンラザール(Saint
Lazare)駅からSNCFでル・アーヴル(Le Havre)駅まで約2時間。 |
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