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MMFのwebサイトをご覧になっているみなさまに、パリから素敵な便りが届きました。差出人は、美術を心から愛するマダム・ド・モンタランベール。日々、美しいもの、真なるものを求める彼女は、四季折々に輝くミュゼの上質な愉しみ方を教えてくれます。フランスへ旅立つとき、このコーナーにお誘いが届いていたら、マダムの隠れ家のようなミュゼに足を伸ばしてみませんか。 |
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葡萄畑広がるボルドー地方へと新酒を楽しむ旅に出たわたくしと主人は、ボルドーの町に立ち寄り、幾日かを過ごすことにいたしました。ボルドーはフランスで最も美しい町のひとつ。18世紀の建物が残る美しい街並みと美食文化、そして日々の生活を楽しむ術「アール・ド・ヴィーヴル」を心得た人々の暮らしぶりでよく知られています。 |
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▲ボルドー美術館とその庭
©A.de Montalembert |
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▲ペルジーノ『玉座の聖母子と聖ヒエロニムス、聖アウグスティヌス』(16世紀)
©DGAC Bordeaux |
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ボルドーがフランス有数の港町として繁栄を謳歌したのは18世紀のこと。とは申しましても、建造物のファサードは美しく修復され、ガロンヌ川沿いの埠頭もまた新たに整えられていますので、街路をそぞろ歩けば今なお往時の華やぎと洗練された古典的な雰囲気が感じられます。ただひとつ現代的なものといえば、ボルドーっ子ご自慢の路面給電式のトラムでしょうか。
さて、今回は皆さまをボルドー美術館へご案内いたしましょう。建築を命じた大司教の名にちなんでパレ・ド・ロアンと呼ばれる1784年に建てられた市庁舎のお隣にあるこのミュゼには、市庁舎の庭園を挟むように建つふたつのギャラリーがあります。
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ミュゼの歴史はナポレオンの時代まで遡ります。当時第一総督であったナポレオンは、国王の美術コレクションやイタリア遠征などで得た戦利品を展示するためにこの美術館を創設したのです。その後1870年に、美術館はドラクロワの絵画16枚を焼くという火災に見舞われ、建物の一部も焼失してしまいます。現在のミュゼは、1875年から1881年にかけて再建されたということです。
コレクションは、ルネサンスから現代に至るまでの西洋芸術の流れをたどるじつに豊かなもの。20世紀絵画の一部は改装工事のためにご覧になることができませんが、素晴らしい作品は他にもたくさんありますから、ご心配には及びません。
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▲ヴェロネーゼ『聖家族と聖女ドロテア』(16世紀)
©DGAC Bordeaux
この作品はカン美術館で、2006年7月3日までに行われる「ヴェネチアの栄光展」で展示されています。 |
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まず、南館ではイタリア・ルネサンスから19世紀までの絵画をお楽しみいただけます。イタリア・ルネサンス絵画では、ペルジーノ(1446-1523)の『玉座の聖母子と聖ヒエロニムス、聖アウグスティヌス』やヴェネツィア出身のティツィアーノ(1488-1576)やヴェロネーゼ(1528-1588)の作品が印象深かったように思います。また、イタリアの画家カラヴァッジオ(1571-1610)の流れを汲む「カラヴァッジオ主義」の画家たちの作品群もこのミュゼが誇るコレクションのひとつ。カラヴァッジオは迫真のリアリスムと鮮やかな明暗表現で知られていますが、その影響は画家ジョヴァンニ・ド(1604-1656)の『師と弟子』によく表れています。明るい色彩を加えてくすんだ色(赤褐色)を際立たせることで画面にコントラストが生まれ、人物の手と顔に強い印象が与えられています。なんと力強い作品なのでしょうか。わたくしは、深い感銘を覚えずにはいられませんでした。
フランドル絵画では、艶やかな花の描写を得意とし「ビロードのブリューゲル」と讃えられたヤン・ブリューゲル1世の『婚礼の踊り』を是非、ご覧になってください。宴の輪のなかでダンスを踊り、音楽を奏でる村人たちの自然な姿──。なんとも明るい光景で、見ているわたくしも楽しい気分にさせられました。 |
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▲シャルダン『肉の塊のある静物』(1730年)
©DGAC Bordeaux |
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18世紀のオランダ絵画といえば風景画がよく知られていますが、フランス・ハルス(1580-1660)の肖像画も忘れてはなりません。彼の作品に、『胸に手を置く男』という若い男の肖像画があります。青年は白いバチスト(リンネルで織った非常に薄い布)の襟のある黒衣を身にまとっているのですが、その衣装を飾る装飾ひとつひとつが、さまざまな調子の黒で描き分けられた見事な作品です。
18世紀のフランス絵画にも多くの画家の作品がありましたが、シャルダン(1699-1779)の『肉の塊のある静物』を見て、彼がいかに革新的な画家であったかを改めて実感いたしました。華やかなロココ美術の時代にあって同時代の画家とは一線を画したシャルダンは、無駄なものを省き、日常的ななにげない対象を描き出しました。そこに、今日のシャルダンの人気の秘密が隠されているのでしょうね。 |
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ギャラリーをまわるうち、わたくしと主人がふと足を止め、時を忘れて見入った一枚の絵がありました。ボルドーの画家ピエール・ラクール(1745-1814)の『港の一部と、ボルドー河畔のシャルトロン地区およびバカラン地区の景観』(1806)と題された作品です。描かれているのはワイン商の豪華な邸宅が立ち並ぶシャルトロン地区の町並み。ボルドーの街は今も変わらず、そうした姿を見せています。
さて、一方の北館(一部は改装中です)の展示室では、彫刻家ジャンヌ・プープレ(1874-1932)の特別展が行われていました。素晴らしい才能に恵まれ、時代を先駆けるようなフェミニズム的思想の持ち主であったプープレですが、今回の特別展は、その死後初めて彼女に捧げられたオマージュとなりました。
ジャンヌ・プープレはボルドーの美術学校とパリのアカデミー・ジュリアン(女性を受け入れたアトリエ)に学び、ロダン(1840-1917)やブールデル(1861-1929)らとも交流しました。ロダンは彼女の才能に注目し、自分とプープレの作品に、ある共通点を認めました。それが特別展のタイトルともなった「簡潔さに宿る美」です。 |
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▲ジャンヌ・プープレ『身づくろいをする女性』(1907〜1910年)
©M.A.I.A.D. Roubaix, photo A Le prince |
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この特別展は、プープレという彫刻家が古典主義の純粋さと近代芸術の美点をあわせもつ偉大な芸術家であったということを改めて知る機会となりました。彼女の芸術の素晴らしさが国を越えて、日本の皆さまの心にも届くことを心より願っています。
親愛をこめて。 |
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▲ボルドー美術館の北館
©A.de Montalembert |
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▲ボルドー美術館入口
©A.de Montalembert |
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▲ボルドー美術館南館
©A.de Montalembert |
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住所 |
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2a
cours d'Albert, 33000 Bordeaux |
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Tel |
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05.56.10.20.56 |
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Fax |
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05.56.10.25.13 |
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URL |
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アクセス |
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1トラム(AまたはB路線):パレ・ド・ジュスティス(Palais
de Justice)、もしくはオテル・ド・ヴィル(Hôtel
de Vill)下車
パーキング:メリアデック(Mériadeck)駐車場、もしくはサント・クリストリ(Saint-Christoly)駐車場 |
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休館日 |
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火曜・祝日 |
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開館時間 |
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11:00-18:00 |
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入館料 |
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常設コレクションは入場無料
特別展入場料:5ユーロ(割引料金は2.50ユーロ) |
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特別展 |
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ジャンヌ・プープレ:簡潔さに宿る美
Jane Poupelet: la beauté dans
la simplicité
会期:2006年6月4日まで |
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アルベール・ベゴー
Albert Bégaud
会期:2006年6月22日〜10月1日 |
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イタリアおよび北方ルネサンス前派〜マルカデ・コレクションから〜 |
Primitifs
italiens et nordiques de la collection
Marcadé
会期:2006年7月17日まで |
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交通 |
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パリ、モンパルナス(Montparnasse)駅からTGVアトランティック線でボルドー・サン・ジャン(Borudeaux
St. Jean)駅まで約3時間。 |
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MMFのインフォメーション・センターでは、ボルドー美術館で開催中のジャンヌ・プープレの特別展のカタログをご覧いただけるほか、パンフレット(フランス語・英語)をお持ち帰りいただけます。
*パンフレットの部数には限りがあります。 |
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フランス南西部、アキテーヌ地方最大の都市で、赤ワインの産地として世界的に名高い。ワイン貿易で繁栄した18世紀の歴史的建造物が今も残る美しい街で、ワインのショップはもちろん、ワインに関する博物館などもある。 |
www.bordeaux.fr |
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マダム・ド・モンタランベールについて
本名、アンヌ・ド・モンタランベール。
美術愛好家であり偉大な収集家の娘として、芸術に日常から触れ親しみ、豊かな感性が育まれる幼少時代を過ごす。ブルノ・デ・モンタランベール伯爵と結婚後、伯爵夫人となってからも、芸術を愛する家庭での伝統を受け継ぎ、ご主人と共に経験する海外滞在での見聞も加わり、常に芸術の世界とアート市場へ関心を寄せています。アンスティトゥート・エテュディ・デ・スペリア・デザール(IESA)卒業。 |
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