Francais 日本語 郵便博物館
informations 3 2 1 Paris, le 2 septembre 2008

▲郵便博物館の外観。
©A.de Montalembert
親愛なる日本のみなさまへ

モンパルナスタワーがパリでもっとも高い建物であることは、皆さまご存知でしょうか。このタワーのほど近く、モンパルナスのなかでもとりわけ賑やかな地区に郵便博物館が創設されたのは1973年のことでした。いかにも70年代らしい様式の建物で、明かり窓のないファサードは、小さな角柱を組み合わせた張り出し装飾のパネルで飾られています。



▲アサス通りにひっそりと佇む美術館。
©A.de Montalembert

このミュゼをお訪ねになれば、郵便の歴史を通じてかつてのフランス人の日常に触れることができるだけでなく、郵便という制度が社会の要であることもよくお分かりいただけることと思います。コレクションはとても豊かで、ヴァラエティに富んだ所蔵品に出会うことができます。たとえば、最初の郵便ルート地図や、郵便配達員の制服、郵便受け、配達に使われていた列車や船、飛行機の模型などがあります。博物館は5階建てで15の展示室に分かれており、それぞれがひとつの時代を扱っています。まずはエレベーターで5階まで上がり、ここからゆっくりと階下に向って見学を始めることにいたしましょう。

最初の部屋では、郵便というシステムができる前の時代を紹介しています。始まりは伝言輸送でした。中世においては、私的な輸送システムが大学や聖職者によって組織されていました。羊皮の巻紙に書かれた伝言は「巻物、目録、台帳」と呼ばれ、修道院から修道院へと便りを届ける使者に託されたのです。

お次の部屋では、馬を用いた郵便、そして運送業務の始まりから1850年までの郵便の歴史を辿ってみましょう。フランスの郵便制度は、国王が主要道路に公文書を運ばせるための宿駅を配置させたことに端を発します。後にこれが郵便局の宿に改造され、郵便局の主や御者が出現します。その後このシステムが私的書簡も扱うようになり、「手紙郵便」が誕生することとなったのです。多くの宿駅は富裕な農場主のもので、そこには郵便宿の旗が掲げられていました。ここでは、王家の紋章である百合の花とトランペットを吹く2名の騎手をあしらった1780年の郵便宿の旗が展示されています。また、郵便のための馬を操った御者らにまつわる品々もご覧いただけます。ガラスケースの中には、左腕に、所属する宿駅の袖章がついた制服や、黒くてとても重い乗馬靴などが飾られているほか、数々の日用品(革袋の水筒、手紙や書簡を入れて運ぶ肩掛けかばん)、乗馬用装具(鞍、鈴、鞭、大きな鐙)などもあり、わたくしはとても興味深く拝見いたしました。


▲馬で郵便を運ぶ御者。
水彩 19,5×30,5 cm
Collection Musée de La Poste Paris
© photographie Michel Fischer

▲リール、パリで用いられていた郵便ポスト。
鉄製 1850年
Collection Musée de La Poste Paris
© photographie Michel Fischer

▲19世紀の御者が用いた乗馬靴。
Collection Musée de La Poste Paris
© photographie Michel Fischer

そして、手紙郵便という制度の歩みを辿ることができるのが、3番目の部屋です。革命時、郵便宿は国家の支配下に移り、最初の「マル=ポスト(郵便馬車)」が登場します。ここでは、いくつかのマル=ポストのミニチュアが飾られていますから、じっくりとご覧になって往時に思いを馳せてごらんになってくださいね。旅行者と郵便物を運ぶために地方で用いられていたという「乗合馬車」のみすぼらしいことといったら!きっと、ひどい乗り心地だったでしょうね。そして、この部屋の中央には、黄色と青の見事なマル=ポストの実物が飾られています。


▲郵便馬車(マル=ポスト)を紹介する3つ目の展示室。
Collection Musée de La Poste Paris
© photographie Michel Fischer

▲1818年モデルのマル=ポストの模型。
Collection Musée de La Poste Paris
© photographie Michel Fischer

▲1793年モデルのマル=ポスト。
Collection Musée de La Poste Paris
© photographie Michel Fischer

「郵便配達人」は馬やマル=ポストでフランスを横断し、手紙を郵便局から郵便局へと運びました。彼らには通行優先権があり、楽器を鳴らして自らの来訪を知らせていました。また、強盗から身を守るための武器も備えていました。やがて、手紙の集荷と配達が発展し、組織化されていきます。そして、パリ市内では郵便配達人が自宅まで手紙を届けてくれる「小さな郵便」サービスが設置されることとなったのです。彼らには、ひと目でそれとわかる特徴がありました。前もって自分たちの通行を知らせるために使われた楽器「クラッパー」、重たい肩掛けかばん、リボンで結ぶ白いシャツに、赤いベストの上品な制服などが目印でした。


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