▲博物館の外観。
©A. de Montalembert
皆さまよくご存知のタロットカードには、広い展示スペースが確保されています。タロットカードは78枚のカードからなり、その中に<愚者>と呼ばれる切り札が1枚あります。おそらく15世紀にミラノ、あるいはフェラーラの宮廷で生まれたといわれるタロットカードには、その出自を物語るような、格調の高さが感じられます。この博物館で最も美しいタロットのひとつは、かの有名な《フェラーラの戦車》です。これは1450年頃のタロットの札で、金地に鮮やかな色が配された、じつに繊細ですばらしい出来栄えです。戦車というテーマは、古代ローマの凱旋式からの発想です。このタロットゲームは、<マルセイユ版タロット>とともにフランスでは18世紀に広がりました。
▲博物館で見つけた灰皿。ダイヤ、スペード、クラブ、ハートの形でこんなところまでトランプの世界です!
©A. de Montalembert
博物館の莫大なコレクションには、札を入れる箱や小箱、賭け札、マーカー、ゲームテーブル、カードの製作道具など、数多くの小道具類も収められています。中には、18世紀に読み書きを学ぶ手引きとして用いられたという、珍しい棚もありました。活字棚のようなこの棚には、いくつもの仕切りにカードが収められていて、カードの裏に文字や単語、シラブル(音節)が印刷されているのです。
▲博物館のエントランス・ホール。
©A. de Montalembert
学芸員のマダム・バルビエールが、わたくしと一緒にギャラリーをまわり、とても熱心にご説明くださったおかげで、わたくしはトランプの世界にすっかり魅せられ、また、その歴史を理解することができました。トランプは楽しいゲームでありながら、歴史についても雄弁に語ってくれる、時代の証人なのです。
皆さまもここを訪れれば、国境を超えて輝きを放つこの博物館の魅力がお分かりいただけることと思います。訪れる人はそれぞれの好みや知識に応じて、幅広いコレクションを、遊び心いっぱいのユニークな設備で楽しみつつ、知らず知らずのうちにカードの歴史への興味をかき立てられてしまうのです。
結びに、この博物館の次回の特別展をご案内しておきましょう。マストロヤンニやフェリーニといった映画スターや巨匠たちの写真で知られる、イタリア人写真家ピノ・セッタンニによる「『生きたタロットカード』と写真」展(3月31日-6月27日)です。色鮮やかな衣装を身に着けた、実在の著名人の写真からなるタロットカードが紹介されています。
親愛をこめて。
▲ピノ・セッタンニ《月》
© Pino Settanni
▲ピノ・セッタンニ《恋人》
© Pino Settanni
▲ピノ・セッタンニ《審判》
© Pino Settanni