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▲シテ科学産業館
©A. de Montalembert
親愛なる日本の皆さまへ

今回は皆さまを、パリの西、ラ・ヴィレット公園の中に佇む、とある“ミュゼ”へとご案内いたしましょう。わたくしの父、ポール・ドゥルヴリエ(1914-1995)が初代館長を務めたシテ科学産業館です。


▲シテ科学産業館
©A. de Montalembert

シテ科学産業館が建つのは、ラ・ヴィレット門からパンタン門のあいだに広がる55ヘクタールの地。かつては屠殺場がありましたが、冷凍技術の発達に伴い屠殺場が閉鎖されると、フランス政府によって整備され、1970年、科学と音楽を中心とした文化施設が創設されました。シテ科学産業館はその中核をなす施設で、創設の年から1984年まで館長を務めたのが、わたくしの父でした。その功績へのオマージュとして、父の名を冠した小さな建物もあるのですよ。
ですから、ラ・ヴィレットに向けるわたくしの思いが格別なものであることも、皆さまにはお分かりいただけるでしょう。ここがまだ工事中のとき、父はわたくしたち子どもにヘルメットをかぶらせて、工事現場を熱心に案内して回ったものでした。


▲ラ・ヴィレット公園内を流れるルルク運河
©A. de Montalembert

ラ・ヴィレットにもともとあった建物を改築するためのコンペを勝ち抜いたのは、建築家のアドリアン・ファンシルベ(1932-)でした。ファンシルベは、いつでも現場にいられるように、3ヘクタールの用地に建つ長さ250m、幅150m、高さ50mの巨大な建物の真正面、つまりルルク運河の船の中にオフィスを構え、この建物をミュゼに変えるという偉業を成し遂げました。


▲シテ科学産業館の受付ホール
©A. de Montalembert

建物には、生命と宇宙に関する3つのコンセプトがありました。ひとつは「水」です。建物の周りを堀が取り囲み、生命と宇宙をつなぎます。ふたつ目は、エネルギーの源である「光」。奥行き100m、幅20mの巨大なエントランス・ホールに、直径17mもあるふたつのガラス張りの丸天井からさんさんと光が降り注ぎます。3つ目のテーマは「植物」で、自然エネルギーを利用した3つの大きな温室が、公園に向かって建っています。

シテ科学産業館は、多くの人に科学への興味を持ってもらうために設立されました。しかし、所蔵コレクションはないので、厳密な意味での“ミュゼ”ではありません。最も大きな特徴は、来館者の五感に響くような展示がなされていること。来館者は、ゲームや実験を主体的に楽しみながら、さまざまな発見をすることができます。つまり、科学産業館は、複雑な現代世界をよりよく理解するためのヒントやツールを提供し、科学やテクノロジーが、わたくしたちの社会においてどのような立ち位置にあるべきかという問いを投げかけているのです。

見学のためのちょっとしたアドバイスをひとつ。科学産業館に着いたら、まず受付に行き、参加したいワークショップの時間を確認してください。あらかじめ予約しておかなければなりませんから。


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