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イル=ド=フランス美術館〜ソー公園〜 バックナンバーを読む
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▲上空からのソー公園の眺め
©CG92/Olivier Ravoir
親愛なる日本の皆さまへ

皆さま、パリの南に位置する「ソー公園」をご存じでしょうか。RER(地域急行鉄道網)で簡単に行けるのでパリからのアクセスもよく、散策にぴったり。週末ともなれば、多くのパリジャンたちでにぎわいます。お目当ては、パリ近郊でもとりわけ美しいと評判の公園、そして城とオランジュリー(オレンジ温室)、ロロール館からなるイル=ド=フランス美術館です。


▲ソー城の外観
©A. de Montalembert

1670年に、国王ルイ14世(1638-1715)の宰相コルベール(1619-1683)は、ヴェルサイユからもパリからも近い、この広大な地所を購入しました。そして、ヴェルサイユ宮殿の庭を手がけたル・ノートル(1613-1700)や内装を担当したル・ブラン(1619-1690)といった、当代随一の芸術家たちを雇い、絢爛豪華な城と庭園を築かせたのです。これには「太陽王」ルイ14世すら感嘆の声をあげたといいます。コルベールが亡くなると、その息子のセニェリー侯爵(1651-1690)が跡を継ぎ、領地を220ヘクタールまで拡大。再びル・ノートルに依頼し、大運河、運河に臨むテラス(今日では「パンタードのテラス」と呼ばれています)、噴水や滝といった数多くの水の芸術作品が点在する美しい景観を造らせました。さらに、建築家ジュール・アルドゥアン=マンサール(1646-1708)の設計によるオランジュリーが建てられました。この美しい建物は、現在は、企画展やコンサートの会場として使われています。


▲アントワーヌ・コワスヴォー(1640-1720)による宰相コルベールの胸像
©A. de Montalembert

フランス革命の時代を迎えると、この場所にあったものは、城を含めてほとんどすべてが破壊されました。1798年には、裕福な農業開拓者がこの地所を購入し、残されていたすべての資財を売り払います。しかし1828年、その娘が後のトレヴィーズ公、ナポレオン・モルティエ(1804-1869)と結婚すると状況は一変します。トレヴィーズ公は、この場所の修復に乗り出したのです。ル・ノートルの図面に従って公園を整備し、コルベールの城があったのと同じ場所に新しい城を建築しました。それから、さまざまな所有者の手を経た後の1923年、セーヌ県がこの地所を購入。その2年後には、建物と彫刻は歴史的建造物に指定されるとともに、公園全体が一般公開されることとなり、かつての輝きを取り戻しました。


▲ふたつの詰め所のある正門
©A. de Montalembert

ソー公園の散策は、誰しもが正門から始めます。門の両側には、フランス古典主義の典型的なスタイルであるペディメントのあるふたつの館とふたつの詰め所があります。詰め所の上には、ジャン=バティスト・テオドン(1645-1713)の手による彫刻が飾られています。それらは、コルベールの紋章である「番犬」と「一角獣」を表し、それぞれ、忠誠と誠実を象徴しています(これは宰相に求められる資質を暗示しています)。これらの彫刻はいずれもムラージュ(複製彫刻)で、オリジナルは園内のオランジュリーに保管されています。

入り口を入って右手には、近年、現代的なスタイルに改修された厩舎があります。その隣には、馬の水飲み場もありますので、忘れずにご覧になってくださいね。旅や狩りから戻ったときに馬が喉の渇きをいやし、水浴びできるように傾斜しています。


▲ロロール館の外観
©A. de Montalembert

▲ロロール館への小道
©A. de Montalembert

お次は、ロロール館へと続く小道を進みましょう。ロロール館は、17世紀の庭園の残るフランスでもとても珍しい建築物。1670年から1672年にイタリア建築から着想を得て、コルベールのために建設されました。丸屋根を頂き、両側には手すりのある階段があります。丸屋根の内側には、ル・ブラン作の素晴らしい絵画、夜と闇を追い払う二輪馬車に乗った暁(ロロール)の寓意像が描かれています。ロロール館の前には、アイリスの庭があり、毎年5月には美しい色彩と芳香で訪れる人々を楽しませてくれます。


▲ロロール館の天井画
©Collection musée de l’Ile-de-France, Sceaux. Photo Pascal Lemaître

公園にはたくさんの花壇があり、また北の植え込みには日本の桜もあって、春ともなれば、素晴らしい景観を見せてくれます。さまざまな種類の木があり、鳥や哺乳類(アカギツネ、ムナジロテンなど)が暮らし、沼には両生類も生息するこの公園は、自然保護区にも指定されていて、たくさんの驚きが隠されています。ル・ノートルは、23mの勾配を巧みに利用し、公園の中心線に沿って大滝を造りました。この滝から流れ出した水は1937年に修復された10段の階段を通って、ロクトゴン(八角形)の泉へと向かいます。テラスは、ロダン(1840-1917)が手がけた怪人面の彫刻で装飾されています。公園にある9つの泉からは、毎日朝11時になると噴水が吹き出します。とりわけ、10mもの噴水が上がるロクトゴンの泉の見事なことといったら!



▲さまざまな花が咲く庭の花壇
©A. de Montalembert

▲庭園のそこかしこにある噴水
©CG92/Olivier Ravoir

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