オランジュリー美術館
2006年5月17日待望の再オープン!
  長らく再オープンが待ち望まれたオランジュリー美術館が、2006年5月17日、その扉を開くことになりました。今月は、再オープンを目前に控え、ついに明らかになった今回の改装の詳細をいちはやくお伝えいたします。画家クロード・モネの最後の大連作『睡蓮』を飾るこの美術館の大改装が始まったのは、2000年1月のこと。そして、6年間にも及ぶ改装期間を経てオランジュリー美術館は、モネが望んだとおりの陽光に満ちた温室さながらの空間をついに取り戻したのです。
2000年に始まったオランジュリー大改装計画最晩年のモネが構想した空間とは?
 
▲モネが晩年を過ごしたジヴェルニーで自ら造園を手掛けた「水の庭」
©G.VAHE / Fondation Claude Monet
 最愛の妻アリスと長男ジャンの相次ぐ死、そして弱まりゆく視力──。20世紀初頭、70歳を過ぎて度重なる悲劇に見舞われた画家クロード・モネが、自らの人生の最後を託したのは、『睡蓮』の壁画で一室を飾るという壮大な計画でした。そして、1918年、モネは大連作『睡蓮』の国家への寄贈を提案。1926年に86歳で死去する直前までジヴェルニーのアトリエで『睡蓮』に筆を入れつつ、自らの芸術の集大成を飾る美術館の設立を夢見たのでした。
 そして、画家の死の数ヵ月後、チュイルリー公園の一画にオランジュリー美術館が開館しました。モネの構想に基づき、建築家カミーユ・レフェーヴルが手がけたのは、1852年にナポレオン3世が築いた温室(オランジュリー)を改造した建物で、布張りのガラス天井から外光が燦々と降り注ぐ美術館。高さ2m、広さ500m2のふたつの楕円形の間は明るい光に満ち、壁いっぱいに飾られた『睡蓮』が、来館者をきらめく水辺の風景の世界に引き込んでいきました。
2000年に始まった大改装では、オランジュリーがもっともオランジュリーらしかった当時の空間を取り戻すことこそが、最大の目的となりました。キーワードは「光」です。
 
▲クロード・モネ『睡蓮 朝』(部分)1914-26年頃 200×1275cm(全寸法)
©Photo: RMN / digital file by DNPAC
 
▲ジヴェルニーの庭に咲く睡蓮の花
©G.VAHE/Foundation Claude Monet
 
 
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失われた「光」を取り戻すために──80年の時を越えて再生した「睡蓮の館」
 
『積み藁』『ルーアン大聖堂』『ポプラ』そして『睡蓮』──。『印象─日の出』に始まるモネの芸術は、まさに「光」の探求そのものでした。失明の危機にあった最晩年のモネは、自らの芸術の命ともいえる「光」を失う恐怖と闘いながら、水面にきらめく光と睡蓮の花が織り成す微妙なニュアンスを繰り返し描きました。だからこそ、完成した大連作『睡蓮』を飾る美術館には、明るい「光」が必要だったのです。
 しかし、開館当初のオランジュリーの「光」は、1960年代に行われた改装によって失われてしまいます。展示スペースを拡張するために2階建てに改築され、「睡蓮の間」から自然光が奪われてしまったのです。さらに、ホワイエが壊されて新しい展示スペースへと続く大階段が玄関に設けられたために、「睡蓮の間」へのアクセスが遮断され、美術館全体が回りにくいものとなってしまいました。
 2000年に始まった改装では、美術館からこの60年代の改築の痕跡を消し、モネの構想どおりの「睡蓮の間」が再建されることになりました。まずは、「睡蓮の間」への外光を遮断していた2階部分をすべて取り除く。さらには、玄関の大階段を取り除き、ホワイエを復活させて各展示室へのアクセスを容易にしました。こうして、「睡蓮の間」はガラス張りの天井から自然光が注ぐなかで大連作『睡蓮』の世界を堪能するという、モネが構想したとおりの空間の魅力を取り戻すことに成功しました。
 
▲『睡蓮』の間へと続くホワイエ ©Agence Brochet / Lajus / Pueyo
 
▲ホワイエはモネの構想に基づき、再建された ©Agence Brochet / Lajus / Pueyo
 
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今、ふたたびその魅力を見直すために──「ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション」
 
▲ルノワール『道化の衣装のクロード・ルノワール』
1909年 120×77cm
ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション
©Photo RMN/ ©Frank Raux
 今回の改装のもうひとつの目的は、オランジュリー美術館のもうひとつの至宝「ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション」のために十分な展示スペースを設けるということでした。セザンヌ、ルノワール、ルソー、マティス、ピカソ、ドラン、ユトリロ、モディリアーニ……。印象派から1930年までのフランス画家とフランスで活躍した外国人画家の主要作144点からなるこのコレクションを築いたのは、画商兼美術収集家のポール・ギヨームとその妻、そして彼女の二度目の夫ジャン・ヴァルテールでした。彼らのコレクションは、1959年から1963年にかけて国家に寄贈され、オランジュリー美術館で公開されることに。そのため「睡蓮の間」の上部に2階部分が設けられましたが、コレクションの全貌を提示するには不十分な展示スペースでした。
今回の改装では、地下に新たに3100m2ものスペースが生まれ、「印象派からピカソまでの流れを追う」この充実したコレクションも、広々とした展示室で、ゆっくりと楽しむことのできるものとなりました。
 さらに、企画展示スペースも増設され、ワークショップ・ルームやブックショップ、ライブラリーなどのパブリック・スペースも充実しました。開館時間等にやや変更があり、午前中は団体のみの受付となりましたが、その一方で、開館時間が延長され、夜間開館も行われるようになったので、夜のオランジュリーを楽しむという贅沢な選択肢も生まれました。
▲アンリ・ルソー『ジェニエ親父の二輪馬車』
1908年 97×129cm
ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション
©Photo RMN/ ©Herv Lewandowski
2000年に始まったこの改装は、当初の予定以上に長い時間が費やされました。その原因のひとつは、地下への拡張工事を進めていた2003年、16世紀の城壁の遺跡が発見されたことでした。こうしてまたひとつ、パリの新たな“歴史”を刻みつつ再オープンしたオランジュリー。今後開催されることになった企画展も楽しみな美術館です。
 
▲1階に「睡蓮の間」、地下に「ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション」の展示室と企画展示室。
©Agence Brochet / Lajus / Pueyo
 
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オランジュリー美術館
所在地
  Jardin des Tuileries 75001 Paris
アクセス
  地下鉄コンコルド(Concorde)駅下車
開館時間
  9:00-18:00
休館日
  火曜日、5月1日、12月25日
 
MMFで出会えるオランジュリー
B1Fインフォメーション・センターでは、「睡蓮」や「ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション」など、オランジュリー美術館をテーマ別に解説した冊子のほか、「睡蓮」や「ジャン・ヴァルテールとポール・ギヨーム・コレクション」のカタログを閲覧いただけます。
ブティックでは、モネにちなんだ商品をご用意しております。
オランジュリー美術館訪問にあわせて、大連作『睡蓮』をはじめとするモネの傑作群を生んだジヴェルニーのモネの庭を訪れになることもおすすめします。
詳しくはこちら→
▲モネが晩年を過ごし、『睡蓮』をはじめとする作品群を生んだジヴェルニーの庭
©G.VAHE / Fondation Claude Monet

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