
私たち多くの日本人にとって、フランス19世紀の絵画といえばすぐに思い浮かぶのが、モネ(Claude Monet)やルノワール(Pierre-Auguste Renoir)をはじめとした印象派です。印象派の画家たちは、明治から大正にかけての日本文学界で活躍した白樺派によって日本に紹介されました。日本に西洋絵画の魅力が伝えられたのは、このときがほぼ最初といえるそうです。多くの日本人が初めて目にした西洋絵画は印象派だったのです。しかし、19世紀の印象派が生まれたのは、アカデミスム絵画があってこそのことでした。今回の展覧会はそうした、19世紀フランス美術の大きな流れを、目に見える形で私たちに伝えてくれています。
展覧会場に入ってまず、最初に思うことは、展示されている絵画がとても大型だということです。今回展示されているなかで最大の作品は、第2章で登場するアンリ・レーマンの(Henri Lehmann)≪預言者エレミヤ≫。なんと228.5×294cmという巨大な作品です。戸外制作に励んだ印象派の画家たちの作品を見慣れている私たちにとって、その大きさは圧倒的な迫真性を伝えてくれます。

ダヘッシュ美術館蔵
Dahesh Museum of Art, New York 2002.37s
また神話を題材として扱うことが多かったアカデミスム作品には、裸体画が多いのも特徴です。卓越した技術力で表された完璧な肉体は、その背後にある神話や聖書の物語を知らなくとも、私たちの美意識に訴えかけるものでした。また第1章から第4章までを辿ることによって、そうした裸体画の描かれ方も時と共に変化していくことが分かるのも、今回の展覧会ならではの見どころのひとつでしょう。
![]() 大原美術館 |
![]() シェルブール=オクトヴィル、トマ=アンリ美術館蔵 Cherbourg-Octeville, Musée d'art Thomas-Henry |

村内美術館
そしてこれまで日本で見られなかった画期的な展示がなされているのが第4章でした。多様な様式の絵画が一堂に会するこのセクションは、19世紀の美術界の状況をそのまま再現しようと試みた展示だそうです。ロマン派らしい色彩豊かな作品から、リアルにモデルを再現した肖像画、これぞ印象派というような絵画、そして大規模な装飾画といった作品が次々に登場し、当時の美術界の厚みを感じることができました。
美術の教科書で学んだ歴史が、77点の作品を通して実感できた今回の展覧会。画集などではなく、やはり本物の絵を見て感動することがいかに大切かを痛感した機会ともなりました。
![]() オルセー美術館 © Photo RMN/H.Lewandowski/digital file by DNPartcom |
![]() パリ市立プティ・パレ美術館 © Petit Palais / Roger-Viollet |

- 会期
2009年6月12日(金)〜8月31日(月) - 会場
横浜美術館 - 所在地
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1 - Tel
045-221-0300 - URL
美術館 http://www.yaf.or.jp/yma/
展覧会 http://www.france19.com/ - 開館時間
10:00-18:00
*金曜は20:00まで。
入館は閉館の30分前まで - 休館日
木曜日
*ただし8月27日(木)は開館 - 観覧料
一般:1,400円
大学生、高校生:1,100円
中学生:800円
小学生以下:無料
*毎週土曜日は高校生以下無料
(生徒手帳、学生証要提示)
- MMF3Fギャラリーでは7月2日から「カルコグラフィーで見るアカデミスム」を開催します。詳しくはこちら≫

- MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、「フランス絵画の19世紀」展のカタログを閲覧いただけます。
- MMFブティックではこの展覧会のチケットを販売しています。
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