ストラスブール近現代美術館(Musée d'Art Moderne et Contemporain de Strasbourg)は、イル川左岸、16〜17世紀の町並みが残る歴史地区「プティット・フランス」のほど近くに位置します。
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1998年に開館したこの美術館は、フランスの建築家アドリアン・ファインシルベール(Adrien Fainsilber 1932-)により設計されました。建築のコンセプトは、平明さと開放性。さまざまな場所にガラス張りが採用されており、建物の中心部(Nef)からは、旧市街も眺望できます。このガラス張り構造の技術は、すでにパリのラ・ヴィレット(La Villette)に建つシテ科学産業博物館(Cité des Sciences et de l'Industrie)でも採用されています。
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ここには1870年から現代までの充実したコレクションが収められており、印象派からフォーヴィスム、現代美術までの歩みを辿ることができます。なかでも充実しているのが、ストラスブール生まれのギュスターヴ・ドレ(Gustave Doré)やハンス・アルプ(Hans Arp)のコレクションです。
展示室はどこもゆったりと広く、白壁にスポットの照明で明るい雰囲気です。1階入り口の向かって右は、特別展示室。特別展は4ヵ月おきに開かれますが、2009年初めには、ハンス・アルプ展も開かれました。
ドレの部屋の隣は、印象派の展示室。モネ(Claude Monet)の《ひなげしのある麦畑》やピサロ(Camille Pissarro)の《小さな建物》などのフランス印象派の作品のほか、リーバーマン(Max Liebermann)の《アムステルダムの孤児院の庭》といったドイツ印象派の名作が並びます。
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印象派の部屋の隣では、アール・ヌーヴォーの家具などが展示されています。なかでも見逃せないのは、エミール・ガレ(Émile Gallé)と同時代に活躍したアルザス生まれのシャルル・スピンドレー(Charles Spindler)の作品。スピンドレーは、アール・ヌーヴォーの家具のほか、アルザスの景色などを寄木細工で表した作品を制作したアーティストです。
さらに先に進むと、ピカソ(Pablo Picasso)の《ギターを持つ女》(1924)とレイモン・デュシャン=ヴィヨン(Raymond Duchamp-Villon)の《大きな馬》(1914-1955)、ジョルジュ・ブラック(George Braque)の《静物画》(1911)が並んで展示されています。そして、ルネ・マグリット(René Magritte)、マックス・エルンスト(Max Ernst)、ハンス・アルプといったシュルリアリストの作品が続きます。
1886年ストラスブール生まれのハンス・アルプ(Hans Arp)は、チューリッヒでダダの結成に参加し、シュルレアリスムのグループにも加わるなど、20世紀美術のパイオニアともいわれるアーティストです。『自然に自然と同化する、自然とのハーモニー』と主張し、抽象とシュルリアリスム的な要素を併せ持つ独自の芸術スタイルを築きました。

なかでも、1933年以降に制作された丸彫り彫刻は、抽象作品の厳格さに真っ向から対決しているかのような柔らかなフォルムで、強い存在感を放ちます。
2階の現代芸術の展示室の向かいには、旧市街を一望できる「アール・カフェ(Art Café)」があります。ここの内装は、日本人画家黒田アキが手がけたものです。
アデミック日本・ヨーロッパコンサルティング社代表取締役。コーディネーターとして活動中。
和訳・写真:遠藤利加
- ライン河とヴォージュ山脈にはさまれたフランスの北東に位置する地方。ローマ時代から交通の要衝として栄えてきた。2007年にTGV東ヨーロッパ線が開業し、パリとストラスブール間は2時間20分で結ばれた。世界遺産に指定された旧市街のほか、アルザスワイン街道を巡る旅も人気が高い。
- アルザス地方観光局
http://www.tourism-alsace.com - ストラスブール観光局
http://www.ot-strasbourg.fr/
- 所在地
1, Place Hans Jean Arp - Tel
+33(0) 3 88 23 31 31 - 開館時間
<土・日曜日>10 :00-18 :00
<月・水・金曜日>12 :00-19 :00
<木曜日>12 :00-21 :00 - 休館日
月曜日 - 入館料(特別展見学料を含む)
一般:6ユーロ
25名以上のグループ、
25歳以下の学生:3ユーロ
18歳以下:無料
- MMFインフォメーション・センターでは、ストラスブール近現代美術館の図録を閲覧いただけます。

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