夜の銀座でアートを楽しむ〈画廊の夜会2011〉

銀座は300軒とも400軒ともいわれる画廊が軒を連ねる「画廊の街」。銀座を象徴するイベント〈画廊の夜会〉です。年に一度、初夏の一夜に銀座のギャラリーが夜9時までオープンし、来館者にワインやシャンパンを振る舞いつつ、画廊の雰囲気を楽しんでもらおうという企画で、今年は6月3日(金)に開催されました。「画廊」、しかも「銀座の画廊」──。敷居が高いのでは…、とやや気後れしつつ夕刻の銀座に向かいました。

 

〈画廊の夜会2011〉Aコース : 洋画家の個性を堪能

【日動画廊】

【銀座 柳画廊】

【銀座・ジャンセンギャラリー】

【ギャルリーためなが】

マップ
 

▲〈夜会〉の提灯を掲げたエントランス(日動画廊)

老舗揃いのギャラリー巡りツアーに参加

 〈画廊の夜会〉は、「銀座ギャラリーズ」が主催する銀座5丁目から8丁目にある画廊で構成されたイベントで、7回目となる今年は28の画廊が参加とのこと。しかし、“画廊初心者”には、どこの画廊から巡ればいいのか分かりません。そこで、今回はまず、毎年銀座ギャラリーズの事務局が企画しているテーマ別のギャラリー巡りツアーに参加してみることにしました。いくつかあるコース(いずれも定員は先着6名・無料)の中から選んだのは、「洋画家の個性を堪能」コース。「日動画廊→銀座柳画廊→銀座・ジャンセンギャラリー→ギャルリーためなが」と老舗揃いのコースです。


▲会場奥では飲み物が振る舞われた(日動画廊)

 はじめに訪れたのは銀座5丁目の「日動画廊」。ちょうどこの日は、フランスの現代作家ニコル・ボッテ展の初日でした。「もともと〈画廊の夜会〉はフランスのヴェルニサージュ*に倣って始められたものです」と話すのは広報の水口よしのさん。日動画廊では毎年、〈夜会〉にふさわしい作家を選び、その個展初日を〈夜会〉にあてているそうです。確かに、深い赤と金箔が印象的なボッテの作品は、〈夜会〉にぴったりな大人の雰囲気。作品が並ぶ会場は広くて、明るく、まるで美術館のようです。「画廊はとても気楽な場所。待ち合わせに使っていただいても構いません」と笑顔で語る水口さんの言葉どおり、会場は意外にも若い女性や会社帰りと見られる男性など、気楽にアートを楽しむ方々で賑わいを見せていました。

ヴェルニサージュ*ギャラリーで開催される展覧会の初日(あるいは一般公開に先立つ特別招待日)の夜に行われるオープニング・パーティのこと。

▲所狭しと作品が並ぶ会場(銀座柳画廊)

▲鳥をテーマにした岡野博氏の作品(銀座柳画廊)

 次に向かったのは泰明小学校脇にある「銀座 柳画廊」。ここでは、広島生まれの作家岡野博氏の個展が開催中で、岡野氏ご本人も会場におられました。ワインを片手に岡野氏とお話に興じる方々もいらっしゃいましたが、アーティストと直接交流が楽しめるのは、まさに〈夜会〉の醍醐味でしょう。着物姿で出迎えてくださった副社長の野呂洋子さんは、「私たちは〈生活の中にアートを〉をテーマに活動をしています。〈夜会〉もその一環。どうぞ、お気に入りの一枚が見つかるまで何度でも画廊に足をお運びください」と話してくれました。


▲入り口付近に並ぶアールヌーヴォーのランプの数々(銀座ジャンセンギャラリー)

▲さりげなく置かれた藤田嗣治の作品(銀座ジャンセンギャラリー)

 3軒目に訪れたのは銀座6丁目の「銀座ジャンセンギャラリー」です。こぢんまりしたギャラリーはとても入りやすい雰囲気。そして、一歩足を踏み入れてみて驚きました! エミール・ガレやドーム兄弟のランプの数々や、シャガールや藤田嗣治などの、まるで美術館にあるような絵画が並びます。「うちの目的はびっくりしてもらうこと」と話すのは、社長の向田耕介さん。銀座でギャラリーを営む目的は「銀座にふさわしい“高い絵”を置くことで驚いてもらい、そして若い人にもこうしたミュージアム・ピースに肌で触れ、さらには値段を知る機会を持ってもらうこと」にあると言います。向田さんの気さくな雰囲気と、店内に飾られた高価な作品とのギャップがなんとも面白い、驚きのギャラリーでした。


▲詩情あふれる作品が並ぶ(ギャルリーためなが)

▲落ち着いた雰囲気の会場(ギャルリーためなが)

 画廊巡りの一夜を締めくくったのは、銀座7丁目、MMFのほど近くにある「ギャルリーためなが」です。会場には、繊細な筆致と抑制された色彩の作品が並びます。「今回、紹介しているのは、スペイン・リアリズムの旗手アンヘル・ブスカです。その詩情あふれる世界の素晴らしさは直接ご覧になっていただくのがいちばん」と話すのは、吉田美樹子さん。そもそもこの〈夜会〉は、パリに支店を持つギャルリーためながのご主人が発起人となって、始められたイベントだそうです。「〈夜会〉をきっかけに、どうぞ画廊へ足をお運びください。何度も通っていただければ、それぞれの画廊のポリシーや取り扱い作家の個性が分かってますます面白くなっていくと思います」と画廊巡りの醍醐味を語ってくださいました。


 “画廊初心者”にはハードルが高いと思われた老舗揃いの画廊巡りでしたが、どのギャラリーもとても気楽にアートを楽しめる雰囲気で、「画廊=敷居が高い」という紋切り型のイメージは完全に崩されました。これを機に、画廊に行くことが生活の一部になりそうです。そして、いつかは“自分だけの一枚”を──と夢が広がりました。

 ところで、画廊といえば値段が付されていない、というイメージがありませんか? 今回訪れたギャラリーでは、どこもきちんと明記されていました。

 皆さんもぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょう。

 

Update : 2011.7.1

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