エッフェル塔にも程近いパリのセーヌ河沿いの遊歩道に、大小異なる大きさの写真がレイアウトされたパネルが道なりに続きます。これらの展示パネルは川の流れによって砕かれた石が岸に散在する様子をイメージしたもの。不規則の中にもリズムの感じられる独特の展示が印象に残ります。
第4回目のフォトケでは、《Regarde-moi ! 》(私を見て!)というテーマのもと、人間の姿そのものに焦点を当てた展示が行われました。今年はアフリカ、中東、中央アジア、極東アジア、旧ソビエト連邦、ラテンアメリカ、東南アジア、オセアニアの8つの地域29カ国から40の写真家たちが選ばれました。今回アート・ディレクターに起用されたのは、スペイン国籍で、現在ブラジルのサン・パウロ在住のフランク・カルロ(Frank Kalero)氏。写真雑誌の編集や写真フェスティバルのディレクターなど、国際的に活躍する写真のスペシャリストです。
展示の大部分はポートレート作品で占められ、異なる国籍の人々のまなざしが会場に交錯しました。人種も実にさまざまで、国の数以上に人種の数が存在することを実感させられる内容です。それぞれの写真家がシリーズで撮った作品群は、南アフリカのアパルトヘイト、イス
ラム女性の身に着けるスカーフ、南米の複雑な人種構成をテーマに据えた作品など、メッセージ性の高いものばかり。その土地の民族と風土が、時にはあるがままに、時にはユーモアや皮肉を交えて表現されています。参加した写真家たちの多くが、自国から一度は遠く離れて暮らした経験を持っており、故郷に戻ってシリーズ作品に取り組んだ例も少なくありません。そのため文化、宗教、人種、歴史、労働など、自国の土地で暮らす人々を取り巻く環境を、より客観的な視点でとらえている点にも注目できます。各展示作品からは、まさに「私を見て!」と言わんばかりの強い主張と個性が発せられ、フォトケの会場全体を包み込んでいました。
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新進の写真家と作品をご紹介します。>>
Update : 2013.12.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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