Dossier special - 海外の特集

  • 1.ウフィッツィ美術館とメディチ家
  • 2.美術館訪問
  • 3.名画10選

ウフィッツィ美術館 Galleria degli Uffizi

名画10選

それではウフィッツィ美術館の名画の数々のほんの一部、10点ほどご紹介します。

1.ジョット《マエスタ(オンニッサンティの聖母)》(1306-1310頃)

フィレンツェの北のムジェッロ出身の画家ジョットはじめトスカーナ地方の画家たちは、中世においてイタリア絵画が発展していく基礎を築きました。より3次元的かつ人間らしさを色濃く表現した絵画は、それまでの宗教画の世界観を一新しました。巨大な板のパネル、金箔の背景、色鮮やかな色彩が、13世紀から14世紀前半にかけての絵師たちの高度な技術力を証明しています。

2.フィリッポ・リッピ《聖母子と二天使》(1460年代)

カルミネ会修道院の画僧であったにもかかわらず奔放な女性遍歴を持ったフィリッポ・リッピの名作です。ヴァザーリによると、フィリッポ・リッピが50歳の頃、23歳の修道女ルクレツィアを絵のモデルになってくれとかどわかし、自宅に連れ去ってしまったという話が伝わっています。聖母マリアはそのルクレツィアがモデルで、幼子キリストの姿で描かれたのが彼らの息子であり自身も優れた画家になるフィリピーノ・リッピという説もあります。

ボッティチェッリ《ヴィーナス誕生》(1484)

▲ボッティチェッリ《ヴィーナス誕生》
©Alinari, Licensed by AMF, Tokyo / DNPartcom

ウフィッツィ美術館で一番人気のある名画。青く明るい空、エメラルドグリーンの海を背景にして、生まれたばかりのヴィーナスが大きなホタテ貝の上に立っています。バラの花が降り注ぐ中、風神ゼフュロスとアウラが吹く風に背を押されて、ヴィーナスが岸辺にたどり着きます。赤い服を手にして迎える姿は、春の女神ホーラもしくは三美神のひとりと考えられています。

4.ボッティチェッリ《春》(1482頃)

諸説ありますが、ボッティチェッリと親交のあった友人、メディチ家傍系のロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコの結婚式に際して描かれた寓意画ではないかと考えられています。古代のルクレツィウスとオヴィディウスの古典著作と、メディチ家と親交のあった詩人アニョロ・ポリツィアーノの詩編から着想を得た作品です。右端に描かれた翼を持つ姿は風の精ゼフュロスで、妖精クロリスを追って我がものにし結婚し、彼女に草花を芽生えさせる能力を与えます。左隣の花のドレスに身を包んだ姿はクロリスが変容した後の春の女神フローラです。中央にはこの園の主であるヴィーナス。その頭上には目隠しされたキューピッドが愛の矢をつがえています。白いドレスに身を包んだ3人は踊る三美神の伝統的な姿です。左端の若い男はメルクリウス神。

5.ヒューホー・ファン・デル・フース《ポルティナーリ家の三連祭壇画》(1475)

メディチ家の銀行業をブルージュ(現ベルギー)で代表していたトンマーゾ・ポルティナーリの注文で、初期フランダース絵画の画家ファン・デル・フースが描いた巨大な祭壇画です。1483年にフィレンツェに到着した本作は、その写実的な表現や高い技術力で当時のフィレンツェの芸術家たちを強く刺激しました。北方ルネサンスの作品でありながら、ボッティチェッリの《ヴィーナスの誕生》の向かい正面に展示されています。15世紀後半の同時期に、フィレンツェとブルージュで描かれた作品を見比べるという意味で、粋な展示と言えるかもしれません。

6.レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知》(1472頃)

天才画家レオナルドの初期の名作。遠近法により構成された画面に、処女マリアと受胎を告げる大天使ガブリエルの姿が描かれています。トスカーナ地方に特徴的な糸杉がある中景、青くかすむ遠景にレオナルドの特徴がよく表れています。写実的な草花の描写や、見事な衣服のひだの描写、受胎告知という場面の緊張感がすばらしい。

ミケランジェロ《トンド・ドーニ(聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ)》(1503-1504頃)

▲ミケランジェロ《トンド・ドーニ(聖家族と幼い洗礼者聖ヨハネ)》(中央奥)
写真協力:Webpromoter

絵画作品としてはフィレンツェに存在する唯一のミケランジェロ作品。フィレンツェの商人アニョロ・ドーニとその妻マッダレーナの注文で、娘のマリアの誕生(1507年9月8日)を祝って描かれたのではないかと考えられています。円形の画面に幼子キリスト、聖母マリア、ヨゼフが表されています。ヨゼフの背後の男は古代彫刻のラオコーンがモデルです。

8.ラファエロ《ヒワの聖母》(1505-1506)

▲ラファエロ《ヒワの聖母》(右手前)
写真協力:Webpromoter

10年にも及ぶ修復が終わり、2008年の再公開から描かれた当初の鮮やかな色彩がよみがえった作品です。後世の規範にもなった優美な作風を存分に堪能できるようになりました。羊毛で財をなした商人ロレンツォ・ナージとサンドラ・カニジャーニの婚礼に際して注文されました。洗礼者ヨハネが手にし、幼子イエスが頭をなでるヒワ鳥は、のちの受難を象徴しています。

9.ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》(1538頃)

官能的なヴィーナス像は、ヴェネツィア派の代表的画家ティツィアーノの作。古来、女性のヌードは神話や聖書の登場人物として描かれるのが決まりですが、足元に眠る子犬や、背景の召使たちの現実的な描写からは、これが生身の女性としての意味合いを匂わせます。なまめかしい肢体、恥じらうような左手のポーズ、愛を象徴するバラと、魅惑的なまなざし。後世の画家たちにも大きな影響を与え続けた傑作です。

10.カラヴァッジョ《バッカス》(1595頃)

▲カラヴァッジョ《バッカス》

バロック絵画の幕開けを告げる鬼才カラヴァッジョの刺激的な作品です。酒の神バッカスが、若い男性の姿で描かれています。ワイングラスを差し出す左手の指先が黒ずんで汚れ、右手は帯をほどくような仕草を見せているところ、さらにワインで上気した顔の潤んだまなざしからは、退廃的な雰囲気が伝わってきます。印刷物の図版ではまず判別不能ですが、実際に本物の絵を見ると、左のワインのカラッファに画家の顔がうっすらと反射しています。本場でしか味わえない秘密がここに隠されています。

[FIN]

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Update : 2014.1.7 文・写真 : 山本浩幸(Hiroyuki Yamamoto)
ブリュッセル在住、出版人/インスピレーション出版
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ウフィッツィ美術館

所在地
Piazzale degli Uffizi, 50122 Firenze
Tel
+39 055-2388651
E-Mail
direzione.uffizi@polomuseale.firenze.it
開館時間
火〜日:
8:15〜18:50(最終入場は16:45)
休館日
月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
入館料
6.5ユーロ ※予約手数料4ユーロ
アクセス
「Santa Maria Novella」駅から徒歩約10分
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