先月に引き続き、ベルギー出身の植物画家、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(Pierre-Joseph Redouté/1759-1840)を特集してお届けします。今月ご紹介するのは、ルドゥーテの生誕の地、ベルギー南部のサン=テュベールにあるルドゥーテ記念館。曽祖父の代から続く芸術一家に生まれたルドゥーテは、若き日にサン=テュベールで職業画家として修業を積みました。現在、町にはモニュメントや彼の名のついた通り、バラ園、そして記念館と、ルドゥーテの功績を偲ぶことのできるスポットが点在しています。
ベルギーの首都ブリュッセルから約130kmの場所に位置するサン=テュベールは、フランスとルクセンブルクの国境に近いフランス語圏の町。このベルギー、フランス、ルクセンブルクにまたがる豊かな森に覆われたアルデンヌの丘陵地帯では、古くから狩猟が盛んに行われていました。サン=テュベールという町の名は、この土地に伝わる狩人の伝説に基づいたもの。7世紀にこの地に狩猟にやって来た若き日のサン=テュベールが、森で出会った雄鹿の角の間に光を放つ十字架を見たのを機に、この地で布教活動を始めたことに由来しています。
起伏に富んだ町の中心部で悠然とした佇まいを見せているのは、サン=テュベールバジリカ聖堂と隣接の旧大修道院の建物です。町にはこれらをはじめとした7世紀から18世紀にかけて建てられた歴史的建造物が多数存在し、宗教とともに歩んできた町の深い歴史を物語っています。
このサン=テュベールの町で、地元出身の最も有名なアーティストとして親しまれているのが、植物画家のピエール=ジョゼフ・ルドゥーテです。18世紀末から19世紀のフランスで華麗なキャリアを築いたルドゥーテは、サン=テュベールの象徴的な存在。町の中心部にある市庁舎前の噴水には彼の胸像が据えられ、バジリカ聖堂へと続く坂道を見下ろしています。
現在ルドゥーテ通りと名づけられた道には、かつてルドゥーテの生家である簡素な一軒家が建っていました。残念なことにこの建物は第二次世界大戦中の砲撃により失われてしまいましたが、現在同地に建てられた住居の壁には、「ルドゥーテ生誕の地」と刻まれた石版が掲げられています。ルドゥーテ記念館はこの生家のあった場所の正面でその扉を開いています。
また記念館から300mほど離れた場所には、バラを描いたことで有名なルドゥーテにちなんだバラ園があり、夏には100種類ものバラを鑑賞することができます。「花のラファエロ」と呼ばれ、世界中で愛されるルドゥーテに故郷の町が敬意を払い、誇りを感じているのが伝わってくるスポットです。
次ページでは、ルドゥーテ記念館の
歴史とコレクションをご紹介します。>>
Update : 2015.4.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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