「『ルノワールならもうわかっている』と思われるかたもいるかもしれません。しかし、まだまだ再発見してもらえることがたくさんあるのです」。 東京・六本木の国立新美術館で開幕した「ルノワール展」のオープニングの席でこう話すのは、今回の展覧会の監修者シルヴィ・パトリ氏。前オルセー美術館絵画部門主任学芸員で、現在はアメリカのバーンズ財団の副館長を務めるキュレーターです。彼女が語る、今回の展覧会の4つのポイントとともに、その見どころをレポートします。
今回の展覧会のポイントとして、パトリ氏がまず挙げたのが「作品のクオリティ」。世界3大ルノワール・コレクションに数えられるオルセー美術館とバーンズ財団でキャリアを積んだ彼女が、自信を持ってそう語るほど、今回のルノワール展の出品作は傑作揃いなのです。これはシンプルながら実現が難しく、そして鑑賞者にはもっとも嬉しいポイントでしょう。とりわけ、オルセー美術館とオランジュリー美術館がそれぞれ所蔵する関連作品を並べた構成は、この展覧会でしか堪能することのできない贅沢です。
1860年代半に絵画の道に入り、1919年、78歳で生涯を閉じたルノワールには、60年に及ぶ画業があります。展覧会では10章立ての構成で、ルノワールの画業の変遷を辿ります。その内容は、オルセー美術館が誇る初期ルノワールの名画2点から始まり、都市生活を主題とした作品や身近な人々の肖像画等を経て、ルノワールがその死の年に描き上げたという裸婦像までの約100点。印象派から古典回帰の時代を経て、独自の境地へ到達した“ルノワールの全貌”がよくわかる構成になっています。
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