斜面に建った美術館は2階建てです。「高い地上階」では、1980年代までにサルポトリーで収集された砂糖入れやランプなどのブジエを展示しています。ブジエは、職人たちが決められた普段の作業では手掛けることができなかったものを、休み時間に作った作品です。販売目的ではなく、余技でオブジェを作ることは許されていました。
「低い地上階」に降りると、庭に面したガラス張りの大きな展示室に出ます。すがすがしい空気と光が感じられる、庭の緑がそのまま入ってきたような空間です。低い台を中央に細長く置き、ほとんどの作品を手で触れられるほどの位置にガラスケースなしで展示しています。シンプルな内装が、色とりどりのガラス作品をかけがえのない宝石のように引き立てています。
芸術部長のアンヌ・ヴァンラトゥム(Anne Vanlatum)さんは、パリの装飾芸術美術館でガラス工芸を専門とする学芸員を長年務めてきました。「ミュズヴェールから職のオファーが来たとき、迷わず決めた」と言います。 「歴史的なガラス作品は別として、現代美術としての彫刻的なガラス工芸だけを扱っています。使える食器のような器は扱っていません」。そう語るヴァンラトゥムさんに、MMMの読者のために作品を数点選んでいただきました。
イザベル・モノー(Isabelle Monod/1945-)は、ガラス工芸家の夫と南仏で制作するジュネーヴ生まれのアーティストです。小さなキューブを集めて、中に小さなオブジェを入れ、風が通る軽やかで繊細なインスタレーションを作りました。
ドイツ人のウド・ゼンボック(Udo Zembok/1951-)は、3〜4層のガラスを重ねることで深みのある色を出しています。大きなカンヴァスに単色を乗せたマーク・ロスコ(Mark Rothko/1903-1970)の世界が3次元で表現されたような作品です。
Update : 2017.4.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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