中世の彫刻から ポップアートまで─ 動物と芸術との関係を 紐解く個性的なアートブック

パズルで楽しむ動物画の世界、 彫刻で学ぶ動物の寓意

 MMFでは12月、パリのクリュニー中世美術館を特集しました。今月は「動物たちで眺めるカルコグラフィー」の展示を開催しています。そこで、今月は動物をテーマにした楽しいアートブック2冊をご紹介します。

 一見すると謎ばかりの《貴婦人と一角獣》も、登場する動物たちに込められた意味を知れば、よりその世界を楽しむことができます。こうした動物の寓意を分かりやすく紹介しているのが「昔々の動物たち」。17世紀から19世紀に制作された彫刻を通じて、当時のヨーロッパの人々の動物観を知ることができる一冊です。紹介されているのは、山羊や鷲、馬、蝙蝠といった動物のほか、蟹や蝶などの彫刻30点。「鷲」は、威厳ある風貌と空高く飛ぶ習性から<勇敢>、「蝙蝠」は不安定な飛び方から<恐怖>を象徴するというように、それぞれの寓意が生物としての特徴とからめて楽しく解説されています。紹介されている彫刻は、ルーヴル美術館やオルセー美術館、ヴェルサイユ宮殿の庭園のものが中心ですが、なかにはモンパルナス墓地やコンコルド広場などにある作品もあります。この本に登場する動物たちを探して、ミュゼめぐりやパリ散策をするのも楽しいかもしれません。
 一方、描かれた動物の姿をちょっと変わったスタイルで楽しめるのが「動物たちのアルファベット」。AからZまでのアルファベットではじまる動物たちを主題にした絵画26 点が、3つの絵札を合わせると一枚の作品が完成するというパズル形式で収録されています。紹介されているのは、ジェリコーの「馬(Cheval)」やルソーの「ジャガー(Jaguar)」といった“オーソドックス”なものから、葛飾北斎の「雉(Faisan)」、アステカ文明の伝説の鳥「ケツァル(Quetzal)」、ウォーホルのポップな「豚(Porc)」など時代やジャンルを超越した絵画の数々。各作品には、想像力を刺激する詩的な文章が添えられています。

 
「昔々の動物たち」
Autrefois...Les animaux
14×19cm/69ページ
フランス語/刊行2000年
著者/ヴェロニク・ウィルマン、ジョエル・ロドレダ
本体記載価格/9.91ユーロ
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「動物たちのアルファベット」
L'Abécédaire des ANIMAUX
17×20cm/54×3ページ
フランス語/刊行2003年
著者/エリザベス・ド・ランビリー
本体記載価格/13.9ユーロ
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ところで、Xではじまる動物なんているのでしょうか……答えは「ジフォドン(Xiphodon)」。恐竜の時代に存在し、今や絶滅してしまったラクダに似た草食動物ということです。
 
 
 
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