『岸辺露伴ルーヴルへ行く』



『岸辺露伴ルーヴルへ行く』
『Rohan au Louvre』
著者:荒木飛呂彦
19×26.5cm
日本語/134ページ/刊行2011年
フランス語/126ページ/刊行2010年
価格/日本語版2,800円(税込)
本体記載価格/19.5ユーロ
MMMでは海外書籍のお取り寄せも承っております。
BD(ベー・デー)*
「バンド・デシネ(bande dessinée)」の略で、フランス・ベルギーを中心とした地域の漫画のこと。「フランス漫画」と訳されることもある。ストーリー重視の日本の漫画に対して、作画の芸術性が追求されるのがBDの特徴。

日本の漫画とルーヴル美術館のコラボレーション

フランスは日本の漫画を高く評価し、層の厚い「マンガファン」がいることで知られています。事実、フランスは日本に次ぐ、世界第2位の日本の漫画の消費国。“Manga”はもはや、フランス語の辞書にも登場する一般名詞となっているのです。

今月ご紹介するのは、フランスにおける“Manga”の存在感を象徴する一冊、荒木飛呂彦氏の『岸辺露伴ルーヴルへ行く』です。この作品は、ルーヴル美術館とフュチュロポリス社が共同で展開する「BD*プロジェクト」の一環として、日仏両国で出版されました。

この「BDプロジェクト」とは、BDを通じてルーヴルの魅力を伝えようという試み。フランス国内外の作家に、ルーヴルを題材にしたBDの制作を依頼するというもので、現在までに5冊の単行本が出版されています。フランス・ベルギーのBDを代表する顔ぶれが集まりましたが、そこへただひとり“Manga”を代表する作家として参加したのが荒木飛呂彦氏でした。

荒木氏といえば、現在も連載中の『ジョジョの奇妙な冒険』の作者として知られていますが、本書の表題となっている岸辺露伴も、「ジョジョ」シリーズの登場人物。〈人を「本」にしてその人物の人生を読む〉という特殊能力を持つ漫画家で、本書では、ルーヴルに所蔵されているという謎の絵を追う主人公です。前半は日本、後半はパリのルーヴル美術館で繰り広げられる物語は、読者をぐいぐいと引き込むストーリー展開で、まさに“Manga”の真骨頂。露伴の知られざる過去が明らかにされているのも、「ジョジョ」ファンにはうれしいポイントです。

また、西洋美術の作品にヒントを得た登場人物たちの独自のポージングは荒木作品の特徴ですが、今回はルーヴルの所蔵作品から着想を得たポーズが随所に登場するので、それを探しながら読むのも本書の楽しみ方のひとつでしょう。普通は決して見ることのできない、ルーヴル美術館の裏側が克明に描かれているのは、荒木氏自らが行った現地取材の賜物です。日本語版の巻末には荒木氏のインタヴューを含む、制作秘話も収録されています。

フランスを魅了する“Manga”の世界──。MMFインフォメーション・センターでは、本書の日本語版、フランス語版の両方が揃うので、読み比べてみてはいかがでしょうか。

※3FのMMFギャラリーでは「「BDで楽しむルーヴル美術館」展」(8/3〜10/8)開催中です。

Back Number