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ポール・ベルモンド美術館マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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古典的伝統に連なるポール・ベルモンドの作品にとって、シンプルで洗練されたビュシヨ城以上の展示場所はないでしょう。内部の空間はとてもよく考えられており、独創的で素晴らしい展示になっています。白壁の明るい展示室には彫刻の完成作が飾られ、温かみのある板張りでくつろいだ雰囲気の展示室には準備段階の作品や資料、写真、デッサン、メダルが展示されています。そしてこの美術館にはもうひとつ大きな特徴があります。それは、「触れるギャラリー」の存在です。ここでは鑑賞者、とくに目の見えない方が彫刻に触ることができるのです。なんと素晴らしいアイデアでしょう!

入り口を入ると、まず、パリのアトリエがベルモンド在りし日のままに再現されており、わたくしたちをこの芸術家の世界へと誘います。ここに集められた品々(イーゼル、肘掛け椅子、椅子、石膏の習作など)は、いずれも彼が人生を共にしたものばかり。当時のアトリエの写真も随所に飾られて、彫刻家の仕事場の雰囲気を今に伝えています。ベルモンドの一日は、午前中はモデルを前にしたデッサン、午後は彫刻にあてられていたそうです。

小さなガラスケースには、ベルモンドのアカデミー会員としての正装の一部、剣と二角帽が飾られています。そして正面広場には、ベルモンドの重要なテーマ「記念像」「古典的伝統」「肖像」をそれぞれ代表する3点のブロンズ作品が展示されています。右手の《歩く若い女性》(1958年)は、この美術館を象徴する作品。風に髪をなびかせる女性は、形態と量感を新しい手法で単純化することで、自由で誇り高い近代的な若い女性を表現しています。中央の《休息のアポロンまたは青年》(1956-1958年)は、完璧な身体を持つ若い男性によって理想美を表現した作品です。古代神アポロンは、ベルモンドの作品にたびたび登場する主題です。左手には、妻マドレーヌの彫刻(1938年)があります。母性的な姿勢で表された妻の肖像は、白壁中央のニッチにあって、素晴らしい存在感を放っています。1931年から1937年にかけて、彫刻家はマドレーヌをモデルに、さまざまな素材を用いて頭部や胸像をシリーズで制作しました。

1階の最初の部屋では、ベルモンドの彫刻家としてのキャリアの形成過程を示す展示が行われています。1934年につくられた高浮き彫りの石膏の模型をご覧になってください。《仕事の成果を受け取るアルジェ市》というタイトルが冠されたこの作品は、アルジェ市の公民館のファサード装飾のためにつくられたもので、記念像は建築装飾の一部を成すべきだという彼の考え方を表しています。1937年のパリ万博の際にシャイヨー劇場のロビーのために制作された石膏作品《イヴ、あるいは春》(1933年)はバランスと調和の見本のような作品で、小さな庭を望む大窓の間に置かれています。そして奥の黒いニッチには、数々の肖像彫刻が飾られています。そのなかにベルモンドの師でもある友人の肖像彫刻《シャルル・デピオ》(1975年)もあります。デピオは、型にはまったアカデミスムとも、ロダンの表現主義とも一線を画した彫刻家グループのリーダーでした。

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