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カルヴェ美術館(アヴィニョン)マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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2階に上がるには、もう一度大回廊を通り、壮麗な階段を上ります。階段は青みがかったバルバンタンの石と、白いフォンヴィエイユの石でできていて、2色使いが美しい装飾になっています。この階段の下には、イチジクの木を彫った2体の面白い彫像と、市庁舎から持って来られたフィリップ・ソーヴァン(1697-1792)の巨大な絵画《君主権》が飾ってあります。階段の上には、ピエール・ミニャールの兄、ニコラ・ミニャール(1606-1668)作《福音史家ヨハネ》が掛けられています。

かつて2階は居室となっていましたが、1834年にルーヴル美術館の大回廊をモデルに改装され、素晴らしい「ヴェルネ大回廊」に生まれ変わりました。回廊の名は画家のヴェルネ一族へのオマージュとして名づけられました。クロード=ジョゼフ(1714-1789)、息子のカルル(1758-1836)、孫のオラス(1789-1863)は、歴史画家で、戦闘場面を得意としていました。彼らの中で最も有名なのはおそらくクロード=ジョゼフで、ヴァン・ロー(1707-1771)による彼の肖像画(1768年)を見ることができます。クロード=ジョゼフは特に海景画で有名でした。ルイ15世は彼にフランスのすべての港を描くシリーズを注文しました(彼は15点描いています)。ここには、《凪いだ日の入港》(1777年)、《海の朝》(1767年)をはじめとする6点の装飾パネルが展示されています。《海の朝》では、靄の表現に心を奪われます。猛り狂う波の間に難破船を描いた《嵐》は、画家の類い稀な演出の感覚を物語る一枚といえましょう。隣にはユベール・ロベール(1733-1808)の作品が2点あります。彼は、《ローマのコロセウムとコンスタンティヌスの凱旋門の前を通る群衆》(1770年)のように、廃墟と彫刻とモニュメントを組み合わせて溢れんばかりの想像力で描く画家です。他の画家一族に、パロセル家がおり、大回廊の中央に19世紀の白大理石の胸像が5点あります。ルイ(1634-1694)をはじめとして、その息子のひとりピエール(1670-1739)は、アヴィニョンの数多くの教会に作品を残しており、ニコラ・ド・ラギリエール(1656-1746)によるエレガントな肖像画を見ることができます。

回廊の奥にはロマン派の画家テオドール・シャセリオー(1819-1856)の重要な作品《泉のほとりで眠る浴女》(1850年)があり、上半身がすらりと長い官能的な女性が描かれています。回廊の両側にオラス・ヴェルネの《マゼーパと狼》(1826年)のふたつのヴァージョンが展示されています。
回廊の端まで行き引き返す際には、小部屋の中もご覧ください。とりわけ、角の部屋にはジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825)の傑作《ジョゼフ・バラの死》(1794年)があります。この作品はおそらく美術館で最も重要な作品です。ダヴィッドは、ヴァンデの反乱で亡くなった革命の英雄、殉教者となった若い共和派の鼓手を描いているのです。またエドゥアール・マネ(1832-1883)の《ギターと帽子のある静物画》も忘れてはなりません。黒い帽子と白いナフキンの色彩が鮮やかなコントラストをなしています。
もし時間がおありでしたら、カルヴェ美術館のすぐ近くにある別館、ラピデール美術館にも足をのばしてください。17世紀に建設されたバロック様式のかつてのイエズス会の礼拝堂の中にあり、古代ギリシアや古代ローマの考古学コレクションをまとめています。

アヴィニョンに立ち寄り、教皇庁に行くことがありましたら、ぜひカルヴェ美術館にも足をお運びください。ここはアヴィニョンで最も古く最も重要なミュゼで、世界中のあらゆる時代、あらゆる文明に開かれた美術館なのです。そう、創設者エスプリ・カルヴェが望んだように。

友情を込めて。

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Update : 2015.12.1

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