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ラ・ロッシュ邸マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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Chers amis,親愛なる日本の皆さまへ

昨年2015年は、ル・コルビュジエ(1887-1965)没後50年にあたる節目の年。パリのポンピドー・センターでは、この天才的な建築家にして、先見の明のある都市工学者としてのル・コルビュジエにオマージュを捧げた大回顧展「ル・コルビュジエ:人間のサイズ」を開催し(2015年4月29日-8月3日)、その多様な才能を明らかにしました。建築家ル・コルビュジエはデザイナーにしてデッサン家、画家であり彫刻家でもあったという多彩なアーティストで、じつに革新的なアプローチでわたくしたちの暮らしを一変させ、20世紀に深い影響を与えたのです。その完璧な一例が、本日、皆さまをご案内するラ・ロッシュ邸(1923-1925年)。パリ16区に位置し、1996年に歴史的建造物に指定された邸宅です。

ル・コルビュジエ、本名シャルル=エドゥアール・ジャンヌレは、スイスに生まれました。13歳で学校を中退し、家族が営んでいた時計製造業の道に進みます。画家になることを望んだ彼は、その後デッサン学校へ通い、17歳で今度は建築家を目指します。そしてヨーロッパ各地を巡りつつ、すぐれた建築家のもとで学んでいきました。例えばパリではオーギュスト・ペレ(1874-1954)に師事し、鉄筋コンクリートの技術を学びます。ドイツではペーター・ベーレンス(1868-1940)のもとで1910年から1911年の間修行し、レギュレーター(調整器)を用いて図面を引く技法を習得しました。これら初期の経験はその後のル・コルビュジエに深い影響を与えることになりました。こうした旅の合間に描かれたデッサンや習作は、彼の後年の著書の挿絵にもなっています。

1917年には、彼は完全にパリに居を定め、1918年には、画家アメデ・オザンファン(1886-1966)とともに『キュビスム以降』を出版しました。これは彼らがともに創始したピュリスム(純粋主義)運動のマニフェストともなっていました。キュビスムや未来派の行き過ぎを公然と非難し、秩序や単純な形態への回帰を訴えたのです。
1920年、ル・コルビュジエとオザンファンはともに総合芸術雑誌『レスプリ・ヌーヴォー(新しい精神)』を創刊。ジャン・コクトー、ルイ・アラゴン、オーギュスト・ルミエールら、数多くのアーティストが寄稿しました。しかしその後、ル・コルビュジエはこの運動と距離を置くことになります。
1920年代、彼の従兄弟の若い建築家、ピエール・ジャンヌレ(1896-1967)とともに、自分たちの建築事務所を立ち上げ、10年ほどの間にパリやその近郊に一連の実験的な邸宅を建てていきます。その代表的なものがラ・ロッシュ邸やポワシーのサヴォワ邸(1928-1931年)です。これまでのあらゆる建築の常識を打ち破った彼らは、1927年に近代建築の五原則「ピロティ・屋上庭園・自由な平面・水平連続窓・自由な立面」を提唱するのです。

高い建物をつくることで高層集密型都市を形成するという未来都市の新しい構想を実現するために、1928年、ル・コルビュジエはCIAM(近代建築国際会議)を設立します。これをきっかけに、ル・コルビュジエの名は国際的に知られるようになりました。1933年には、『アテネ憲章』を出版。近代生活にふさわしい都市機能として、日常、仕事、余暇に関わる独立したゾーンを備えるべきであるとして、近代都市計画の基礎を提示しました。

さらに、平均的な人間のサイズ(183cm)をもとにした測定法「モデュロール」を参照しつつ、彼は1943年より黄金比に基づいた均整のシステムを形式化します。1947年、マルセイユに巨大な平行六面体の「光り輝く町」を建築しました。ここには生活に必要な設備がすべて整えられており(幼稚園、屋上のテラスにあるジムetc)、メゾネット型のアパルトマン360室が、「室内の道」といえるような幅広い廊下に面して並んでいます。1945年から1965年までの20年間は、彼がもっとも精力的に活動した時期で、その間、インドのパンジャブ地方の新興都市シャンディーガルの都市計画を実現しています。
しかし1965年、ル・コルビュジエは突然、この世を去ることになります。コートダジュールの尖った岩山の上に最小限の生活スペースとしてつくった別荘に滞在中、いつものように海に泳ぎに出た際に溺れたのです。偉大な建築家の死に対して、ルーヴル宮の中庭で国葬が営まれました。指揮をとったのは、当時の大統領、ドゴール将軍(1890-1970)のもとで文化大臣をつとめていた作家アンドレ・マルロー(1901-1976)でした。

Update : 2016.2.1

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