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ラ・ロッシュ邸マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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そろそろ、ラ・ロッシュ邸探訪へと参りましょうか。ル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレの理論に基づいて設計されたラ・ロッシュ邸は最初の「ピュリスム邸宅」のひとつ。平らな屋根とピロティ、白い大きなファサード、水平連続窓を持つ、近代建築の素晴らしい一例といえましょう。シンプルで洗練されたこの邸宅はふたつの部分から構成されています。ひとつはル・コルビュジエの兄アルベール・ジャンヌレ一家の邸宅で、もうひとつはその友人のスイス人コレクター、ラウル・アルベール・ラ・ロッシュ(1889-1965)の自宅兼ギャラリーです。パリの銀行で働いていたラ・ロッシュは、1918年にル・コルビュジエと出会います。ル・コルビュジエの描くピュリスム絵画の簡潔さに魅せられたラ・ロッシュは、彼の助けを借りて近代絵画(ピカソ、ブラック、レジェ……)の一大コレクションを築きます。これらの絵画を展示するための邸宅の設計をル・コルビュジエに依頼することを思いついたのは、1922年イタリア旅行の最中でした。

建築家とは、芸術・建築・都市計画に関わるものだという考えをル・コルビュジエと共有していたラ・ロッシュは、自らのライフスタイルにふさわしいシンプルな家を望み、ル・コルビュジエに全権委任しました。そして、簡素さと厳密さを特徴とする、個性的な素晴らしい邸宅が完成したのです。ラ・ロッシュには相続者がいなかったため、彼の死後、邸宅の所有権はル・コルビュジエに遺贈され、その10年前に設立されたル・コルビュジエ財団の拠点となりました。そして1970年、財団はアルベール・ジャンヌレから彼の邸宅部分を買い取り、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸として一般公開することとなったのです。

趣のある袋小路の奥に位置し、幅が狭く複雑なかたちの土地に二世帯住宅をつくるために、二人の建築家は創造力を発揮しました。複数の視点から見て見事なパースペクティブをつくり出し、多色装飾を用いることで、彼らは、初めて自分たちの理論を実践したのです。袋小路に入ると、建物のボリューム感と白さに圧倒されます。ピロティの上に乗せることで、カーブしたファサードに軽快さが感じられるのが見事です。右手のラ・ロッシュ邸の入り口扉上の水平連続窓が、建物のふたつの部分を統合し、ホールを明るくしています。低い天井の下を通って中に入ると、ホールの素晴らしい開放感に驚かされます。4階まで吹き抜けになったホールは自然光に満たされ、目がくらむような5メートルの高さの壁が続いているのです。天井は天然の淡いシェンナ(黄褐色)、壁の色は床のタイルの白、階段の黒に合わせてあります。隠し階段のある右手は私的な居住空間になっており(ラ・ロッシュの寝室、バスルーム、キッチン)、左手の2階には、ギャラリーと図書館があり人を迎える空間になっています。

Update : 2016.2.1

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