Français 日本語
ランブイエ城マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
informations 3 2 1

19世紀にはナポレオン1世(1769-1821)が、城の改修に着手しますが、正面前庭左側の翼の取り壊しは、全体の調和を乱す改悪工事であったといえましょう。内装を見直し、全体を修復するというナポレオンの改修工事の中で、とりわけ特別な注意が払われたのは、乳製品加工所の改修でした。1815年6月22日、皇帝の座から退いたナポレオンは、エルバ島への追放前夜、フランス本土最後の夜をここで過ごしています。

その後王政復古によって、ランブイエ城は再びブルボン家のものとなり、庭に面したファサードを中心に改築されます。1852年、今度はナポレオン3世の所有となりました。そして共和政下では1893年より大統領がランブイエで狩猟をするという伝統が再開され、1895年に保養地に、1896年には大統領別邸となり、2009年まで使われてきました。第五共和政において、城はフランスを公式訪問した数々の国家元首を迎えます。ジスカール・デスタン大統領時代の1975年には、ここランブイエ城で第1回先進国首脳サミット(G6)が開催されました。日本からは三木武夫元首相(1907-1988)もサミットに参加され、このシャトーを訪れたのですよ。

古の城塞のうち、現存しているのは大きな塔だけです。18世紀の居室群に隣接するこの塔は、ここでフランソワ1世が亡くなったことから、14世紀頃から「フランソワ1世の塔」と呼ばれています。

城がとりわけ大きな変化を遂げたのは19世紀で、当時のものとしては直角を成すふたつの建物が残されています。直角の部分を閉じるかたちで鉄柵が設けられており、主翼の中心線上に位置し、新古典主義様式のペディメント(破風)を頂くエントランスがあります。このエントランスに入ったわたくしを出迎えてくれるのは、ルネサンス様式の正面階段。丸天井の梁はレンガづくりです。庭に面したファサードはやや不統一な感がありますが、18世紀につくられた鉄細工のバルコニーのあるファサードは、もっとも統一感があり、窓やレンガのペディメントと屋根窓が規則的に並んでいます。ここはトゥールーズ伯爵の「集会のアパルトマン」にあたります。もうひとつのファサードはふたつの塔に挟まれて、大運河に面しています。こちらは19世紀に行われたさまざまな工事のせいで調和が崩れてしまっているのですが、中でも、新たに穿たれた3つの大窓が美を損ねているといえましょう。花壇側のファサードは、ほかのふたつとは異なり、2階と3階の間に中間階のある変わった構造になっています。

見学は2階、「皇帝のアパルトマン」からスタートします。ひと続きになった3つの部屋からなり、19世紀の家具を置いたことで見違えました。控えの間には、ナポレオンの朝食の場であったマホガニーの簡素な丸テーブル、そして、ナポレオン専用であったという肘掛け椅子が置かれています。寝室には、直線的でシンプルな帝政様式のマホガニーの家具(ベッド、ナイトテーブル、化粧台、姿見)がしつらえられています。これらはすべて、執政政府時代と第一帝政期に財務大臣を務めたガエート公爵の旧蔵品。ウジェーヌ・グージョン作のパステルの大きな肖像画(1844年)は、ターバンのようなものを髪に巻いた姿で公爵夫人を描いており、東方の出身である夫人の出自を思い起こさせます。1807年に画家ピエール・フランソワ・ゴダールがポンペイ様式で装飾した美しいバスルームは、ナポレオンと彼の帝政の栄光を讃える内容(戴冠式、トロフィー、鷲、ミツバチなど)になっています。錫でメッキした銅製の浴槽が置かれたアルコーブの両側には鏡があり、豊かな壁面装飾を映し出しています。ジャン・ヴァスロが描いた14のメダイヨン(円形の絵画/1809年、1810年)は、イタリア風景や皇帝の領土の風景を題材にしています。

そして、続くのは「集会のアパルトマン」です。大きな窓は庭園に面しています。1730年から1736年にかけて、トゥールーズ伯爵によって改装されたこのアパルトマンには、非常に洗練された繊細なロカイユ様式の装飾が施されています。とりわけ素晴らしいのがブドワール(婦人の間)。白く塗られた円形の愛らしい小さな部屋で、コーニスに沿ってスタッコ(大理石風の壁材料)のフリーズがはしり、四隅には世界の四大陸を象徴する動物があしらわれています。小さなサロンは、伯爵家のプライベートな空間として用いられたもので、18世紀にオービュッソンでつくられた大きなタピスリー《猪狩り》で飾られています。控えの間の装飾はもう少し簡素です。

Update : 2018.8.1

ページトップへ

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。