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ランブイエ城マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。バックナンバーを読む
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大サロンはというと、エレガントな板張りに畑仕事や狩猟、園芸(鎌、麦の穂、狩猟用のラッパ、鉄砲、果物籠)といった自然主義的なモティーフが描かれています。ルイ15世時代の黄色いダマスク織張りの肘掛け椅子が部屋を明るくしています。見事な板張り装飾が施された会議の間には、フランドルのタピスリーを張ったルイ15世時代の肘掛け椅子12点と長椅子が置かれています。奥の壁には、バラ色を基調とした美しいタピスリーがあります。フランソワ・ブーシェ(1703-1770)の作品から取ったギリシア神話のふたつの場面《川から上がるヴィーナス》《眠るアモルを眺めるプシュケ》を表したもので、1791年ゴブラン製作所で織られました。
ニッチの上にブドウの房や、麦の穂、果物籠が描かれた「子午線の間」は、18世紀には食堂として使われていたのでしょう。白い釉薬をかけた陶器のフライパンが、ニッチにぴったりと収まっています。調和のとれた内装の小礼拝堂は、格天井とトロンプ・ルイユ(だまし絵)のピラスター(付け柱)で装飾されています。祭壇前のふたつの肘掛け椅子は帝政期のものです。

階下に戻り、大食堂へと参りましょう。ここでは、大運河の素晴らしい眺めが堪能できます。ゴブラン製作所のタピスリーが飾られ、G6主要国首脳会議の際の美しいテーブルセッティングがそのままに再現されています。実際、これは1975年11月16日に行われた公式晩餐会の再現なのです。6人の首脳をはじめとする18名の招待客がそれぞれどこに座ったのかも分かるようになっています。コンソールテーブルの上には、当時のメニューも置かれています。
1階では、印象的な大理石の間を忘れずにご覧ください。素晴らしい装飾は1556年のもので、白や青やフランス南部・ラングドック産の赤い大理石板でできています。最後に、窓から外に出て、素晴らしい陶器の小部屋をご覧になることをお忘れなく。これは、かつてのマリー=アントワネットの浴室で、壁にはひとつひとつデザインの異なるデルフト焼のタイルが貼られています。

城を見学した後は、庭園での散歩を楽しみ、現存する小さなふたつの「ファブリック(建物)」を見に行きましょう。まずはイギリス式庭園の真ん中にある貝殻で飾られた田舎家です。これは1779年にド・パンティエーヴル公爵の義理の娘ランバール公爵夫人(1749-1792)のために建てられたもので、この種の建物としては、フランスに現存する唯一のものです。ランバール公爵夫人は、マリー=アントワネットの親しい友人でもあり、悲しいことに、フランス革命の際に断頭台の露と消え、切られた首が槍に差されて王妃の前に差し出されたことで有名な女性です。水に囲まれた藁葺き屋根のこの小さな建物は、外から見たところ、特別驚くべき点はないように思われます。けれども、一歩、内部に足を踏み入れたら、誰もが驚くに違いないつくりになっているのです。円形の部屋の内部には、セーヌ河やアンティル諸島から来たムール貝や真珠といった光沢のある貝とガラスを小さな釘でとめた、素晴らしく洗練された装飾が施され、暖炉の上にはきらめく鏡が置かれています。特別な機会には、18世紀の貴重な家具類も展示されることもあります。そして、隠し扉を通るとブドワール。壁には花飾りや鳥が描かれ、四隅では、自動人形が公爵夫人とともにやってきたご夫人たちに化粧品(粉、香水など)をすすめるようになっていました。

さらに歩を進めると、多くの来場者を魅了してやまない、素晴らしい建物に出ます。1787年、ルイ16世の命を受けて秘密裏に建てられた乳製品加工所は、乳製品(牛乳、チーズ、バター、クリーム、シャーベットなど)の製造と試食のための場所。王妃が制約の多い宮廷から逃れ、より田舎風の生活を送ることのできる空間でした。三つの建物から構成されており、向かって右手にはチーズ職人たちの住居、左手には国王の別邸があります。さらに奥へ進むと、古代回帰趣味的な丸屋根を頂いた小さな寺院が。円形の部屋へと足を踏み入れてみると、内部には、真上からの光の差す部屋の中央に、斑岩をはめこんで星を描いた大理石の丸テーブルが置かれていました。これはナポレオンが置かせたもので、床材の大理石を多色に変えさせたのも、ナポレオンであったといいます。コンソールテーブルは、この部屋やセーヴル磁器の食器のかたちにぴったりで、浅浮き彫りが当時の自然回帰趣味を表現しています。

さらに扉を開くと、「涼気の間」と呼ばれる次の間です。なんとこの部屋には、驚くべきことに、洞窟があるのです。現在は、彫刻家ピエール・ジュリアン(1731-1804)作の《ニンフ、アマルテイアとユピテルの山羊》(1787年)の彫像が置かれていますが、当時は水が滝のように流れていたといいます。同じ画家の浅浮き彫り《牝牛の乳搾り》を見て、わたくしは「アドメートスの牛の群れを見張るアポロン」といった神話の情景を思い浮かべ、また、生きる糧をもたらす自然の豊かさへ思いを馳せずにはおられませんでした。 「古代」と「自然」を理想化した啓蒙の時代、酪農はその哲学に合致するひとつの理想的な生き方とみなされていました。「古代」と「自然」というテーマが18世紀には大変流行したのです。

ランブイエ城の見学を通じて、わたくしたちは14世紀から20世紀までのフランス史の一部を垣間見ることができます。そして同時に、何世紀にもわたって美しく整備され続けてきた庭園と、マリー=アントワネットの乳製品加工所や彼女の友人ランバール公爵夫人の貝殻で飾られた田舎家というふたつの傑出した建物と出会うことができるのです。

友情を込めて。

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Update : 2018.8.1

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