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シャナ・オルロフのアトリエマダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
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Chers amis,親愛なる日本の皆さまへ

ポルト・ドルレアンのほど近く、パリ14区の魅力的な袋小路ヴィラ・スーラには、皆さまにぜひお訪ねいただきたいアートスポットがあります。この通りには20世紀初頭、多くの芸術家のアトリエがつくられました。そのうち、今日まで残されているのは2軒。タピスリーの下絵などで知られる画家ジャン・リュルサ(1892-1966)、そして本日皆さまをご案内するシャナ・オルロフ(1888-1968)のアトリエです。

シャナは彫刻家として成功を収めた類いまれな女性であるのみならず、芸術で身を立てることのできた数少ないアーティストです。そのアトリエは、20世紀当時のままパリに残された希少なアトリエのひとつで、現在はシャナの孫であるエリック・ジュスマン氏が所有し、一般公開されているのです(要予約。金曜日から日曜日ガイド付見学のみ)。わたくしがアトリエを訪ねた日、ジュスマン氏は、彼の祖母であるシャナの彫刻作品の素晴らしさを、広く知ってもらいたいという家族の願いをお話しくださいました。アトリエに入ると、数多の彫刻が迎えてくれて、その数に圧倒されます。そしてその作品からは、作者の温かく人間的な人柄が伝わってくるようでした。

芸術家通りとしてのヴィラ・スーラの歴史は、ジャン・リュルサとその弟で建築家のアンドレ(1894-1970)に始まりました。ふたりはここに芸術家村をつくろうと考えたのです。彼らは土地を買い、当時流行のモダニズム・スタイルの洗練された小さな家を何軒か建て、数多くの芸術家たちがここに居を定めることになりました。マイヨールの弟子の彫刻家ロベール・クチュリエ、画家で版画家のマルセル・グロメールを皮切りに、サルヴァドール・ダリ、アメリカの作家アナイス・ニンとヘンリー・ミラー、ロシアの画家シャイム・スーティンらが続きました。そして1925年、シャナ・オルロフが7番地と7-2番地のふたつの区画を買い、オーギュスト・ペレ(1874-1954)の設計による住居兼アトリエを建設します。「教皇」と呼ばれることになる鉄筋コンクリートのユニークな建物です。シャナは1926年に息子とともにここに移り住み、以降40年以上、彼女が亡くなるまでここを住処としたのです。

この空間で何よりも優先されるのは、光、そして機能性です。ギリシャの神殿を思わせるコーニスが際立つファサードは、この路地の他の建物の滑らかなファサードとは対照的。上部には、千鳥格子状にレンガが貼られていて、立体感を形づくっています。ワインレッドに塗られた木製の扉は、大型の彫刻作品の出し入れができるよう、かなり大きなつくりになっています。扉の上の大部分が窓ガラスになっており、内部に光を通しています。家の後ろ側にあるアトリエでは、天井から光を取り込めるようになっています。

Update : 2019.6.3

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