リュミエール美術館
世界のシネアストが集まる映画の聖地<リュミエール美術館>
1階 映画の黎明期を辿る展示の数々
モンプレジールの駅前にあるリュミエール美術館一画
© Andreas Licht
映画の発明者であり、最初に撮影、上映した人物として名高いリュミエール兄弟。この美術館は、彼らの父のものであった美しい邸宅に兄弟が生み出した映画の黎明期の記録や記念の品を集めたミュゼです。

1895年の映画発明当時、リュミエール家は写真乾板などの製造業を営んでいました。父のアントワンヌは画家兼肖像写真家で、長男のオーギュストと2歳下のルイは早くから父の仕事を手伝うようになりました。ルイが17歳の時に乾板を発明したことにより、一家の家業は隆盛を極めました。アントワンヌはリヨンの西、モンプレジール(私の喜び)という美しい名前の場所に工場と家を構えました。工場は当時ヨーロッパで最大のものでありました。リュミエール兄弟が最初に撮影した映画は、この工場の門から出てくる職工たちを撮ったものでした。
映画黎明期の機材。
暖炉の上には母親の肖像彫刻
© Andreas Licht
この美術館の1階には、彼らが映画を開発するに至った経緯を説明するパネル、工場の模型、最初のカメラなどの機材が並べられています。最初の映画フィルムは17ミリ、50秒。当時、撮影カメラを指したシネマトグラフという言葉は、ギリシャ語の「動く」という意味のキネジスから生まれたといいます。
世界最初のフィルムが絶えず上映
© Andreas Licht
リュミエール兄弟はこの発明品を使って世界を記録するというプロジェクトに着手しました。彼らは自分たちで、またガブリエル・ヴェールなどのカメラマンを派遣して、約1500本の記録映画を撮りました。日本にも早くも1897年にヴェールが来日しており、明治時代の風俗を記録した貴重な映像が残されています。これらの作品群はここで見ることができます。
世界で撮ったフィルムを一挙に上映している
© Andreas Licht
リュミエール兄弟の発明は映画だけではありませんでした。彼らは義手、ミシン、医療器具などの改造にも貢献しており、それらの展示物に彼らの天才の一端が示されています。360度のパノラマで写真が映し出されるフォトラマもリュミエール兄弟が発案しました。
2階  古きよき時代のブルジョワ一族の肖像
左:サンルーム/右:大階段
© Andreas Licht
この美しいアール・デコ様式の館は1899年から1902年にかけて建てられたものです。

精緻なディテールに彩られていますが、特に素晴らしいのがステンドグラスとタイル、大理石で飾られた1階のサンルームと、エントランスにある大階段です。階段の手すりの基盤にはフランスの象徴でもある雄鶏の大きな木彫があります。
左:館の模型/右:アントワンヌの部屋
© Andreas Licht
アントワンヌは進取の気性に富んでいた人物で、「夜撮影できるように」とリヨンで最初に家に電気を引いた人だったといいます。
14歳で孤児となり、写真家に弟子入りして技術を学んだ人でした。この父の部屋が2階に当時のままに残っています。母親の肖像は1階の展示室の暖炉の上にあります。彼女の部屋には今この館の模型が飾られています。
左:家族の写真/右:マルグリット
これらのカラー写真はオートクロームと命名された
© Andreas Licht
「映画よりも作るのが難しかった」というカラー写真も1903年に兄弟が発明したもので、リュミエール家には美しい色つきの家族写真がたくさん残されています。 大半の写真はオーギュストの妻、マルグリットによって撮影されたもので、そこには裕福で幸せそうな一家の様子が記されています。これらの写真も2階で公開しています。 またこのフロアにはリュミエール社のカメラマンだったガブリエル・ヴェールが撮った写真のコレクションもあります。
3階 シネアストのための図書館
3階はアントワンヌのアトリエだった場所で、天井の高さはなんと8メートル。
ここには現在図書館が入っています。
世界各地から集めた7000冊を超える蔵書(日本語のものもある)と3万部以上のプレス資料、テーマ資料、そして600冊以上の雑誌類があります。
主に映画関係者、学生に公開されています。
リュミエール・シネマトグラフのポスター
© Institut Lumière
現代の作品に見るリュミエールの影響
映画誕生100周年記念の様子
© Institut Lumière
美術館の地下には小さな上映室がふたつあります。そこではリュミエールの映画が今までの映画作品に与えた影響の軌跡を見ることができます。また現在、リュミエール研究所が行っている企画作品なども上映されています。その代表的なものが、映画誕生100周年の1995年に、世界からヴェンダース、グリーナウェイ、キアロスタミ、シャヒーン、アンゲロプス、吉田喜重、アイボリーなど40人の映画監督たちを招いて、最初のフィルムと同じ構図、場所、撮影時間で撮った短編作品です。また最初のカメラを使って、当時と同じ手法で監督たちの国の現状を語るフィルムを撮るというプロジェクトも同時に行われました。日本では吉田喜重監督が「映画に映らないもの」をテーマに広島で撮ったものが公開されています。
リュミエール研究所の活動
リュミエール兄弟の巨大モニュメント
© Andreas Licht
リュミエール美術館のあるメトロの駅、モンプレジール(私の喜び)には大きなリュミエ−ル兄弟のモニュメントがあります。その裏側はスクリーンとして、リュミエール研究所が主催して、夏の夜などに野外上映会が行われます。

また美術館の向かい、庭をはさんだ場所にあった最初の映画が撮られた工場自体は取り壊されてしまいましたが、一部を保存し、映画発祥の地を記念して、現在はプルミエ・フィルムと呼ばれるセンターが作られています。このセンターには269席の上映室があり、フランスでも最先端をいくデジタル上映や耳の不自由な人のための音響施設の研究が行われています。ゆったりとした各シートには、世界の偉大な映画関係者のネーム・プレートが。ここでは絶えず古今の名作の企画上映会が行われており、リヨンのシネマファンが集まる場所となっています。
左:センターのガラスの建築物には、工場の一部がある
右:ズラリと有名な名が並ぶ「シネアストの壁」
©Andreas Licht
昔のリュミエール家の地所全般、現在の美術館、公園、モニュメント、そしてこのセンターを管理、運営しているのがリュミエール研究所です。映画発展のための機関として、1982年にベルトラン・タヴェルニエを所長として設立されました。 映画発祥の国、フランスの面目躍如の旺盛な活動を行っています。巡礼のようにこの研究所を訪れた世界の映画関係者たちを記念して、外壁には彼らの名前と訪問した日を刻んだ記念のプレートが並んでいます。
Muse´e Lumie`re
© Institut Lumière
所在地:
25, rue du Premier-Film 69008 Lyon
休館日:
月曜日、1/1、5/1、12/25
(その他の祝日の月曜日は開館)
開館時間:
11:00-18:30
入館料:
一般:6ユーロ
割引:5ユーロ(18歳未満、60歳以上、学生、教師)
団体:4ユーロ(同一家族4人以上または家族でない場合は8人以上 )
URL:
http://www.institut-lumiere.org/
MMFで出会えるリュミエール美術館
インフォメーションセンター
リュミエール美術館内の見取り図、 各展示室の解説付きパンフレット(フランス語、 日本語)をインフォメーションセンターにて ご覧いただけます。
 

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。

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