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エスコフィエ料理博物館
料理はフランスが誇る生活芸術のひとつ。
その素晴らしさを世界に知らしめる一翼を担ったのが、
20世紀初頭のベル・エポックの時代に、パリ、ロンドンなどの一流ホテルで
料理長を務めたオーギュスト・エスコフィエです。
エスコフィエが残した業績を讃え、また多くの料理人が築き上げたフランス料理の
伝統を辿るために、料理博物館がエスコフィエの生家に作られました。
フランスでも唯一の料理専門博物館です。
近代フランス料理の父、エスコフィエ
▲エスコフィエの仕事のパートナーだったホテル王、セザール・リッツ。
 オーギュスト・エスコフィエ(Auguste Escoffier)は1846年、ニースの小さな村、ヴィルヌーヴ・ルーベの鍛冶屋の家に生まれます。料理上手な祖母の影響を受けたというエスコフィエは、13歳の時に叔父のレストランで料理修行を始めました。のちに南仏からパリに移り、当時の著名人御用達の「プティ・ムーラン・ルージュ」を皮切りに、いろいろなレストランでの経験を積みながらしだいに頭角を表します。そして1884年、モンンテカルロの「グランドオテル」の料理部長に就任した時に、生涯の仕事のパートナーとなるホテル王、セザール・リッツ(César Ritz)と出会います。その後はリッツが手がけたロンドンの「サヴォイ・ホテル」、「カールトン・ホテル」、パリの「オテル・リッツ」などの料理長を務め、ヨーロッパ中にその名を轟かせました。
 エスコフィエがこれほど有名になったのは、彼が作る料理がただ美味だっただけではありません。それは、客の嗜好や料理が供されるシチュエーションに合わせた創造性に富んだものだったからです。代表的なものは、ワーグナー(Richard Wagner)のオペラ『ローエングリン(Lohengrin)』に出演していたプリマ、ネリー・メルバ(Nellie Melba)のために作ったデザート「ピーチ・メルバ」でしょう。
▲ピーチ・メルバ。
▲ネリー・メルバからエスコフィエに送られたピーチ・メルバのお礼。

歌劇に登場する白鳥と飴細工の演出に、歌姫はことのほか感激したといいます。この他にもエスコフィエは数々の著名人との交流の逸話にこと欠きません。またセット・メニューを考案したほか、サービスの方法や調理の合理化、料理界の近代化を進めた改革者でもあります。5,000以上のレシピを記した料理のバイブルとも言われる「ル・ギード・キュリネール」などの執筆にも勤しみ、2,000人以上ともいわれる後進の教育、また料理人の地位向上のために尽くした人でもありました。

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師の偉業を讃えるために作られた博物館
▲エントランスの肖像画。中央がエスコフィエ。
 エスコフィエの生家に作られたこの博物館は、エスコフィエの弟子のひとりであるジョセフ・ドノン(Joseph Donon)が提唱して1966年に作られました。博物館のエントランスには師を囲む形でドノン夫妻の肖像画が飾られています。その次の間はエスコフィエ家の台所。古い暖炉には19世紀初めのロティスール(くさりで回す肉のグリル装置)があります。エスコフィエはこのグリル装置を回すことから修行を始めたといいます。
エスコフィエはこうした機械もいくつか発明しており、彼が考えたオリーブの種抜き器やマッシュ・ポテトを作る装置も並んでいます。また南仏の伝統的な料理、ブイヤベースの食卓も再現されています。
 次の部屋は、19世紀に博覧強記で、ピエス・モンテなどの盛りつけ方を考案し「料理の建築家」と呼ばれたアントナン・カレーム(Marie-Antoine Carême)の肖像画から始まります。この部屋ではこの偉大なる料理の先人と同様、近代フランス料理の発展に貢献したエスコフィエのキャリアや功績が語られています。その隣はエスコフィエが生まれた部屋で、ここには彼が使っていた机、本箱、残した書類や手紙が展示されています。
▲再現されたブイヤベースの食卓。
     
▲アントナン・カレームの肖像
▲エスコフィエが生まれた部屋と彼の机。
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田中久美子(Kumiko TANAKA/文・写真) ページトップへ
▲小さなレストランが並ぶヴィルヌーヴ・ルーベの博物館界隈。
 
エスコフィエ料理博物館
所在地
 
3, Rue Auguste Escoffier
06270 Villeneuve-Loubet Village
Tel
 
33 (0)4-93-20-80-51
Fax
 
33 (0)4-93-73-93-79
開館時間
 
14:00-18:00
(7〜8月は19:00まで開館)
※水曜・金曜日は午前(10:00-12:00)も開館
休館日
 
土曜、祝日、11月
入館料
 
一般:5ユーロ
学生:2.5ユーロ
団体割引:3ユーロ
(20名以上のグループ)
※11歳未満は無料

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