移民歴史館
  パリ東部ヴァンセンヌの森の近く、
ポルト・ドレ駅を出ると目に飛び込んでくるエキゾチックな建物。
昨年10月にリニューアルオープンしたばかりの「移民歴史館」です。
この威風堂々とした建物は、1931年の国際植民地博覧会の際に
造られたもので、歴史建造物にも指定されています。
1960年、「アフリカ・オセアニア美術館」として生まれ、
市民に親しまれてきたこの美術館は、ケ・ブランリ美術館
オープンにともない、同館のコレクションがケ・ブランリに移されて閉館。
「移民歴史館」として再スタートを切ることになりました。
今月はフランスの文化、歴史に大きな役割を果たしてきた、
「移民」をテーマにしたこの博物館をご紹介します。
 
移民文化を伝える博物館コンセプト 多種多様なコレクションの魅力
フランスに文化的多様性をもたらした 移民の歴史や暮らしをたずねて
▲ファサードにはダイナミックな浅浮き彫りが施されている。
 「移民」とは(フランスでの移民法上の定義によると)、フランス国外で生まれ、かつ生まれた時の国籍がフランスではなく、フランスに住む人のことを指します。1999年の国勢調査によるとフランスの移民の数はおよそ431万人で、フランスの人口の7.4%にもあたり、そのうちの156万人はフランス国籍を取得しているといわれます。
 パリに旅行して観光地以外の場所に足を伸ばせば、インド料理店が軒を連ねる界隈や、アフリカ系の人向けの理容店がずらりと並ぶ通り、トルコ系の人が店先でケバブを焼く風景に遭遇することでしょう。
また、ことさら異国情緒あふれる例を引き合いに出さずとも、フランスに暮らせば、かかりつけの医者が実はポルトガル出身だったとか、友人の両親がドイツ出身だとか、移民を身近に感じる例にはことかきません。
 フランスは19世紀からコンスタントに移民を受け入れているヨーロッパ随一の移民大国。移民たちはやがてフランスで子どもを産み、育て、次世代を形成していきます。また、彼らがもたらす異国の文化は、フランスに文化的多様性をつくり出してきました。こうして、さまざまな歴史と文化を背負った人々が集まって「フランス」という国を形成しています。フランスの歴史とは、移民の歴史でもあるのです。
 移民歴史館は、こうしたフランスの歴史的、文化的あるいは社会的背景を踏まえ、移民の歴史に関わるさまざま資料を収集、保存、公開することを目的に誕生しました。折しも、フランスでは2007年に「移民・国家アイデンティティー省」が創設されたばかり。パリ郊外で「移民系」の若者が暴動を起こしたニュースも記憶に新しく、移民の引き起こす問題ばかりに目がいくなかで、移民の歴史がフランスの歴史の一部であることを認め、調査・研究・保存する意味があるのだと声をあげた国立の博物館の存在は、それ自体で非常に大きな意味を持つといえるでしょう。
▲1階のパティオを思わせる吹き抜けのホールには、フランスと植民地をテーマにしたフレスコ画が描かれている。
移民文化を伝える博物館コンセプト 多種多様なコレクションの魅力
阿部明日香(Asuka Abe/文・写真)
著者プロフィール:
東京大学およびパリ第一(パンテオン・ソルボンヌ)大学博士課程。
専門はフランス近代美術、特にその「受容」について研究中。
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移民歴史館
URL
 
http://www.histoire-immigration.fr/
1820 年代から現在までのフランスの移民の歴史を映像と音声で伝えるコンテンツをはじめ、展覧会の詳細など、博物館からのメッセージが満載のwebサイトです。
所在地
 
Palais de la Porte Dorée 293, avenue Daumesnil 75012 Paris
Tel
 
01 53 59 58 60
E-mail
 
info@histoire-immigration.fr
開館時間
 
10:00-17:30
※土曜・日曜は10:00-19:00
(いずれも入館は閉館時間の45分前まで)
休館日
 
月曜日、1/1、3/24、5/1、5/12、7/14
入館料
 
一般:3ユーロ
割引料金:2ユーロ
※18歳以下、障害者などは無料
※毎月第一日曜日は無料

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