ポー城国立美術館

アンリ4世伝説を語りかける展示室

▲海亀の甲羅でつくられたアンリ4世のゆりかご。

 3階では、まずアンリ4世の母親であるジャンヌ・ダルブレ(Jeanne d'Albret)の寝室を見学することができます。ここにあるベッドはジャンヌ・ダルブレのものではないことが分かっていますが、同時代のものです。高さがあり、寒さを防ぐためのカーテンがついています。長さが短いのは、当時は横にならずほとんど座る姿勢で眠ったためです。この部屋の壁も、部屋を区切ったり飾ったりするのに中世以来使われていた、タピスリーに似た織物で装飾されています。大きなベッドがもう一つ隣の部屋にあります。こちらも同時代のもので、1553年12月12日から13日の夜、ジャンヌ・ダルブレが息子アンリを生んだと伝えられていますが、実際、お産をしたのは城にある別の部屋でした。部屋の中央にある海亀の甲羅は、新生児のゆりかごとして使われたのものかもしれません。アンリ4世の祖父アンリ・ダルブレ(Henri d'Albret)のコレクションには海亀の甲羅が確かに含まれていましたが、甲羅やアンリ4世が戦場でかぶった帽子を彷彿とさせるダチョウの羽のついた兜を展示し、アンリ王伝説を演出したのはルイ=フィリップ時代になってからのことでした。

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 1819年にアングル(Ingres)が描いた絵画をはじめ、城のあちこちにアンリ4世の一生の主要なエピソードを題材にした彫刻や絵画が飾られています。ヴァロワ朝最後の王アンリ3世(Henri III)が、まさにノストラダムス(Nostradamus)の予言通りに暗殺されると、アンリ4世が王位につきます。宗教的、政治的、軍事的な要素がからみあっていたため、アンリ4世をめぐる話はとても複雑です。宗教的には、フランス王となるためにプロテスタントを放棄し、カトリックに改宗しなければなりませんでした。また女性との関係も彼の人生を語るうえでは重要な要素となっています。

▲「アンリ4世の間」。奥に見えるのは《騎乗のアンリ4世》、1611年頃。   ▲「アンリ4世の間」。奥に見えるのは《マルスに扮するアンリ4世》、1600-1606年。
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▲ピエール・レヴォアル 《子どもと遊ぶアンリ4世》。

 アンリ4世は、生涯で2度結婚しています。最初の妻は「マルゴ王妃」の通称で知られるマルグリット・ド・ヴァロワ(Marguerite de Valois)、そして次に結婚したのが、ルイ13世(Louis XIII)の母となるマリー・ド・メディシス(Marie de Médicis)です。それ以外にも多くの恋人と浮名を流し、なかでも3人の女性にはとりわけ執心していたと伝えられています。それは、王妃になることを望んだガブリエル・デストレ(Gabrielle d'Estrées)やアンリエット・ダントラグ(Henriette d'Entragues)、そして年若いシャルロット=マルグリット・ド・モンモランシー(Charlotte-Marguerite de Montmorency)です。アンリ4世はシャルロットが夫によってスペインへと連れて行かれると、スペインとの戦争も辞さないほどの構えを見せます。アンリ4世の「色男」という評判は≪バルコニーの婦人の前で馬に乗るアンリ4世≫の絵画によって証明されているようです。また、19世紀の作品≪子どもと遊ぶアンリ4世≫からは、よき父親としての姿も垣間見ることができます。

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▲アンリ4世の「トリックトラックゲーム」。

 アンリ4世は、1610年5月14日、忠臣シュリー(Sully)に会いにいく際、ルーヴル宮殿の近くフェロヌリー通りで暗殺されますが、このことがアンリ4世の伝説誕生に大きく寄与しました。
 アンリ4世は国王らしく超然としていると同時に善良な人物として知られ、フランスの歴代国王のなかでもっとも人気があります。ポー城美術館は、「トリックトラックゲーム」などアンリ4世ゆかりの品々を展示し、その足跡をとどめる一方で、アンリ4世の伝説に関わる資料も数多く所蔵しています。美術館の版画・デッサン室には、アンリ4世とポー城および周辺風景という2つのテーマで、16世紀から20世紀までのデッサン300点以上、版画3500点以上が所蔵されています。

原文・写真:バンジャマン・ヌーヴェル(Benjamin Nouvel)
和訳:阿部明日香
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時代の権力者によって 改築されてきたポー城の歩み
19世紀の豊かな装飾を愛でる
アンリ4世伝説を 語りかける展示室

ポー城国立美術館

  • 所在地
    2, rue du château - 64000 Pau - France
  • Tel
    +33(0)5 59 82 38 02
    33(0)5 59 82 38 22
  • URL
    http://www.musee-chateau-pau.fr/
  • 開館時間
    <9月16日~6月14日>
    9 :30-11 :45、14 :00-17 :00
    <6月15日~9月15日>
    9 :30-12 :30、13 :30-18 :45
  • 休館日
    1月1日、5月1日、12月25日
  • 入館料
    <常設展示>一般:5ユーロ
    割引:4ユーロ
    毎月第一日曜日は無料

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