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オルセー美術館の過去と未来

オルセー美術館展2010 「ポスト印象派」展覧会レポート

“空前絶後の世界巡回展”と称される「オルセー美術館展2010」が、東京・六本木の新国立美術館にて、ついに開幕しました。5月26日初日の開会式では、オルセー美術館のギ・コジュヴァル館長が「質的にも素晴らしい、歴史的な展覧会になった」とあいさつ。詰め掛けた報道陣や美術関係者に、本展の魅力を伝えてくれました。「オルセーを出ることはめったにない」と館長が語った傑作の数々が集う展覧会の様子を、MMFスタッフがレポートします。

最後の印象派からゴッホ、ゴーギャンの世界へ

▲作品を前にあいさつをするコジュヴァル館長

 国内で印象派関連の特別展が相次いで開催される今年は、美術ファン待望の“印象派イヤー”。なかでも、モネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、ルソーなどの傑作115点が一堂に会する「オルセー美術館展2010」は、その大本命と言えるでしょう。
会場を一巡した印象は、「とにかく贅沢」ということ。どれが目玉の作品か決めがたいほど傑作揃いの会場で、MMFスタッフは、先日の記者発表でのコジュヴァル館長のコメントをナビゲーターとして、作品鑑賞を楽しんでみました。

▲クロード・モネ《睡蓮の池、緑のハーモニー》1899年 油彩・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 《日傘の女性》や《睡蓮の池、緑のハーモニー》などのモネ(Claude Monet)の傑作が並ぶ<1886年―最後の印象派>の部屋を抜け、隣の展示室に入ると眼に飛び込んでくるのは、シニャック(Paul Signac)の《井戸端の女たち》。「パレットの上で絵の具を混ぜず、ひとつひとつの色を小さな点にして、補色の関係でカンヴァスに置いていく」(館長談)ことで完成した画面は、めまいを覚えるほどの色鮮やかさで観る者に強い印象を残します。
 19世紀末は、フランス絵画が非常に豊かだった時代でした。この時代「急先鋒の芸術家」(館長談)として、若い画家たちに熱狂的に指示されたセザンヌ(Paul Cézanne)の作品群も、この展覧会の見どころのひとつです。
そして、本展でもっとも広い展示室があてられているのが、ゴッホ(Vincent Van Gogh)とゴーギャン(Paul Gauguin)です。《星降る夜》や《アルルのゴッホの寝室》といった作品からは、「オランダでは暗い色で農民などを描いていたが、パリで色彩に開眼し、それを突き詰めるべく南仏へ向った」(館長談)というゴッホのひとつの到達点がうかがえます。

▲ポール・セザンヌ《水浴の男たち》1890年頃 油彩・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

▲フィンセント・ファン・ゴッホ《星降る夜》1888年 油彩・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

▲ゴーギャン《タヒチの女たち》1891年 油彩・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

▲ゴッホとゴーギャンの作品が並ぶ展示室

象徴主義やナビ派、ルソーの大作が一堂に

▲モーリス・ドニの《テラスの陽光》1890年

 ベルナール(Emile Bernard)の《愛の森のマドレーヌ(画家の妹)》が印象的な「ポン=タヴェン派」の展示室を抜けて<ナビ派>の展示室へ。ここでは、「フランス初めての前衛絵画」(館長談)と目されるドニ(Maurice Denis)の《テラスの陽光》が小品ながら存在感を放っています。「庭園が背景と言われているが、劇場の舞台のしつらえではないか」「さかさまにしても抽象画として成立する」「1910年ぐらいのカンディンスキーを彷彿とする」という館長のコメントを思い出すと、よりいっそう興味深く鑑賞することができました。
 そして、<内面への眼差し>の展示室には「フランスを代表する偉大な絵画」(館長談)というシャヴァンヌ(Pierre Puvis de Chavannes)の《貧しき漁夫》があります。同じ部屋には、モロー(Gustave Moreau)の《オルフェウス》やルドン(Odilon Redon)の《目を閉じて》などもあり、芸術家たちの興味が人間の内面へと向けられた当時の流れがよく分かります。

▲ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ《貧しき漁夫》1881年 油彩・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

▲細密な描写が美しいモローの《オルフェウス》1865年

▲アンリ・ルソー《蛇使いの女》1907年 油彩・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 傑作が次々と現れる今回の展覧会、最後のふた部屋では、たたみかけるように大作が続きます。ルソー(Henri Rousseau)にあてられた展示室では、《戦争》《蛇使い》という彼の最高傑作とも言うべき2点が揃います。ミステリアスな《蛇使い》は、「かつてジュー・ド・ポームにあったオルセーの近代美術を象徴する一枚」(館長談)です。そして、本展の棹尾を飾る<装飾の勝利>の展示室には、5枚のパネルからなるヴュイヤールの《公園》があります。「オルセーの最高傑作10点のひとつに数えられるもの。オルセーを出ることはめったにない」(館長談)という作品です。暖色系の壁紙で包まれた展示室が、かつてこの作品が装飾パネルとして飾られていた邸宅の雰囲気を彷彿とするようでした。

▲エドゥアール・ヴュイヤール《公園 子守、会話、赤い日傘》(右3枚)《公園 質問》(左から2枚目)《公園 戯れる少女たち》(左)1894年 デトランプ・カンヴァス
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 1986年のオルセー開館以来初となる大規模な改装工事を機に実現した本展。「この先、10年、15年かかっても実現しない」とのコジュヴァル館長のコメントも納得の、豪華で贅沢な展覧会でした。会期後半には混雑も予想されますので、是非、お早めに足をお運びになってはいかがでしょうか。

Update :2010.6.1
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オルセー美術館展2010「ポスト印象派」

  • 会期
    2010年5月26日(水)〜8月16日(月)
  • 会場
    国立新美術館 企画展示室2E
  • 所在地
    東京都港区六本木7-22-2
  • Tel
    03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • URL
    美術館 
    http://www.nact.jp/
  • 開館時間
    10:00-18:00
    金曜日は20:00まで
    *入場は閉館の30分前まで
  • 休館日
    火曜日
  • 入館料
    一般:1,500円
    大学生:1,200円
    高校生:800円
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