岐阜県美術館所蔵 「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」展 三菱一号館美術館《グラン・ブーケ(大きな花束)》収蔵記念 Rêves de fin-de-siècle Odilon Reson et ses amis dans la collection du Musée des Beaux-Arts de Gifu

1月17日(火)、丸の内の三菱一号館美術館で幕を開けたばかりの「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」展。世界有数のルドン・コレクションを誇る岐阜県美術館の収蔵品による本展は、浜松、京都と巡回し、東京で終幕を迎えます。そして東京展では、ほかの開場では観ることのできなかった、とっておきのルドン作品にも出会うことができます。それが三菱一号館美術館が新規収蔵した《グラン・ブーケ(大きな花束)》です。展覧会の内容とともに、今回が日本初公開となるパステル画《グラン・ブーケ》のお披露目の様子を、いち早くお伝えします。

「ルドンとその周辺――夢見る世紀末」展の見どころ

夢の世界に無限の可能性を見出したルドンの幻想世界

▲岐阜県美術館所蔵のルドン作品51点、ルドン以外の作品41点、さらに三菱一号館美術館所蔵の《グラン・ブーケ》の計140点が展覧されている

 今回の展覧会の“主役”オディロン・ルドン(Odilon Redon/1840-1916)は、19世紀末に活躍した象徴主義を代表する画家です。でも、象徴主義って、いったいどんな絵画なのでしょうか――? 戸外の光の下で、風景や都会に暮らす人々を描いた印象派と違い、象徴主義の作品は少し分かりにくく映るかもしれません。それは目に見える世界を描いたものではなく、夢や幻想といった目に見えない世界を、いわば画家の心の目で描いたものだから。しかし同時にそれは、目に見えない世界の“不思議”を画布の上で見せてくれるという象徴主義絵画の大きな魅力でもあります。19世紀末、文学者や芸術家がこぞって魅せられたルドンの幻想世界。今回の展覧会は、21世紀のわたしたちに、どんな夢を見せてくれるのでしょうか?

▲幻想的な作品が並ぶ展覧会場

「ルドンの黒」に誘われて画家の心の中をのぞき込む

▲《T.眼は奇妙な意休のように無限に向かう》(『エドガー・ポーに』)
1882年 リトグラフ/紙
26.2×19.8cm
岐阜県美術館所蔵

 本展でまずわたしたちの前に現れるのは、「黒の世界」です。ルドンは、生後間もなく両親から離され、ボルドー郊外のペイルルバードという荒地で育てられることになります。ルドンを育てたのは、父親所有の荘園の管理を任されていた親戚の老人。少し前までは、ルドンは両親に愛されず、ペイルルバードにうち捨てられるように育ったという伝説が流布していましたが、これは誤りのようです。ルドンの両親は病弱なわが子を心配し、家族でしばしばペイルルバードを訪れることもありました。

 しかし、こうした“伝説”が流布したのには理由がありました。そのひとつが、第1部で展覧されている「ルドンの黒」の作品群です。ルドンは放浪の版画家ブレスダン(Rodolphe Bresdin/1822-1885)や、博覧強記の植物学者アルマン・クラヴォー(Armand Clavaud/1828-1890)といった個性的な人々との出会いを通して、

▲《W.日の光》(『夢想<わが友アルマン・クラヴォーの思い出のために>』)
1891年 リトグラフ/紙
21.0×15.8cm
岐阜県美術館所蔵
▲《U.沼の花、悲しげな人間の顔》(『ゴヤ頌』)
1885年 リトグラフ/紙
27.5×20.5cm
岐阜県美術館所蔵
 

「黒」が華やかな色彩よりも、はるかに“精神の代理人”になると感じとりました。そこには確かに、荒涼とした林と沼沢が広がる森閑としたペイルルバードで育った幼い日々が濃い影を落としてはいます。しかしルドンは、この幼少時代の思い出を「寂しい出来事」ではなく、芸術家として、黒の作品群に昇華させました。

 ルドンが芸術家としての第一歩をしるした銅版画やリトグラフといった「黒」の作品との静かな対話から、画家の心の中を見つめる旅が始まります。

闇から光の中へ――花開いた美しき色彩の世界

▲《神秘的な対話》
1896年頃 油彩/画布 65.0×46.0cm
岐阜県美術館所蔵

 黒の作品ばかりを発表していたルドンは、1890年代頃から徐々にパステル画や油彩画も描くようになりました。あれほど固執していた黒の世界から、色彩の世界へとルドンを誘った決定的な理由は、分かっていません。しかし1889年、息子のアリ(Ari Redon/1889-1972)が生まれたことが、新たな世界に画家の目を向けるきっかけになったともいわれています。

 また、1890年代の画家は、青年時代からの精神的な指導者であったクラヴォーの死、さらに創造の源でもあったペイルルバードの売却という、大きな出来事を立て続けに経験しました。こうした心の変化が、ルドンをしだいに黒から色彩へと導いていったのでしょう。

 本展の第2部では、「色彩のルドン」として、油彩画やパステル画が展覧されています。黒の時代にかつて描いていたモティーフを、色彩を使って描き直した油彩画の《神秘的な対話》、さらに《青い花瓶の花束》などは、黒と並び、ルドンのもう一つの代名詞となっているパステルで描かれた名品。パステル独特の輝きは、実際に作品を目の前にすると一層、幻想性を増し、息をのむほどの美しさです。

▲《青い花瓶の花々》
1904年頃 パステル/紙 47.0×60.5cm
岐阜県美術館所蔵
▲《眼をとじて》
1900年以降 油彩/画布 65.0×50.0cm
岐阜県美術館所蔵
Update : 2012.2.1
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岐阜県美術館所蔵 「ルドンとその周辺――夢見る世紀末」展 三菱一号館美術館《グラン・ブーケ(大きな花束)》収蔵記念

  • 会期
    2012年1月17日(火)〜3月4日(日)
  • 会場
    三菱一号館美術館(東京・丸の内)
  • 所在地
    東京都千代田区丸の内2-6-2
  • Tel
    03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • URL
    http://mimt.jp/
  • 展覧会
    http://mimt.jp/redon2012/
  • 開館時間
    水曜・木曜・金曜:10:00-20:00
    火曜・土曜・日曜・祝日:10:00-18:00
    *入場は閉館の30分前まで
  • 休館日
    月曜日
    *ただし2月27日(月)は開館
  • 観覧料
    一般:1,400円
    高校・大学生:1,000円
    小・中学生:500円

*開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は、公式サイト、ハローダイヤルでご確認ください。

MMFよりチケットプレゼントのお知らせ
2012年2月1日以降銀座MMFにご来館いただいた方の中先着10名様に「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」展の無料観覧券を1枚プレゼントします。「MMFウェブサイトを見た」とおっしゃってください。
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三菱一号館美術館の高橋明也館長監修、岐阜県美術館の学芸部長山本敦子氏執筆の『もっと知りたいルドン』(東京美術刊)では、ルドンの生涯とともに、その代表作を時系列でたどります。ルドン好きの方にも、そして今回の展覧会で初めてルドンに興味を持った方にも最適な1冊です。
 

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。