Dossier special - 海外の特集

  • 1.さらなる変化を遂げるテート・モダンに行ってみよう
  • 2.現在の常設展示

テート・モダン Tate Modern

さらなる変化を遂げるテート・モダンに行ってみよう

 テート・モダンへのアクセス方法は、ロンドン・ブリッジや、サウス・バンクから、テムズ川沿いを歩いて行く方法もあるが、建築を楽しむために一番正しいと思える行き方は、セント・ポール大聖堂から川を渡って行く方法である。テート・モダンはなんともその巨大さゆえ、川の反対側からでないと全体が把握できない。セント・ポールを背に広場を抜けると、イギリスの代表的建築家ノーマン・フォスター設計のミレニアム・ブリッジの向こうに、イギリス産業社会を誇ったシンメトリーの建物、旧バンクサイド発電所がお目見えする。この発電所を改修した美術館テート・モダンは、新しいイギリスのアート文化のシンボルといっていいだろう。

▲ミレニアム・ブリッジから見るテート・モダン
▲ミレニアム・ブリッジとセント・ポール

街を映し込むテート・モダン

▲テート・モダン・プロジェクト展示

 最近再開発計画が再び動き出したバタシーの発電所の設計や、赤い電話ボックスをデザインしたことで知られるイギリス人建築家ジャイルズ・ギルバート・スコットによる旧バンクサイド発電所は、1994年に新しい美術館建設の敷地として計画された。美術館の設計コンペに参加した建築家の中で唯一既存の建物を残したデザインを提案したのが、日本では《プラダブティック青山》を設計したスイス人建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンであった。35m×152mの巨大なタービン・ホールは新しい時代の美術館の象徴だ。それまで美術館といえば作品を収めるために造られた白い箱が基本であったが、ここでは、産業社会が要請した巨大空間がアートを楽しむ空間として生まれ変わったのである。

▲夕刻、南側より見る
©Herzog and de Meuron and Hayes Davidson 2009

 テート・モダンの新しいアートと建築のプロジェクトはまだまだ続く。タービン・ホールは残念ながら現在閉鎖中だが、昨年一時オープンしたオイル・タンクを改修した新設ギャラリー「タンク」は、さらなる増築部とともに2016年にオープン予定。「タンク」の窓がなくコンクリートむき出しの空間が映像展示やパフォーマンスに使われ、増築部にはレストランやカフェ、学習のための場所など、現在不足している公共スペースが補充される予定(新しいテート・モダン・プロジェクトの詳細は、地上階に展示中)。

 テート・モダンは年間約200万人の来館を想定して設計された美術館だが、2012年現在は500万人超と想定の2.5倍にも及んでいる。そのため1階にあるカフェはいつも家族連れや観光客でいっぱい。ゆっくり食事を取ったりお茶をしたりするのは難しい。増築部がオープンするまではまだまだ休憩施設の不足状態は続くのだが、あまり知られていない穴場としては、テムズ川とセント・ポールを見渡す6階のレストランとバーがある。

▲レストラン・バーからテムズ川とセント・ポールを見る

 エレベーターと階段でのみのアクセスが可能で、展示部からは距離が取られているため、いつもわりと空いている。伝統的なアフタヌーン・ティーをイングリッシュ・ティー・スタンドやスコーンとともに楽しんでみては。バーではさまざまなカクテルが用意され、ギャラリー巡りにちょっとした豪華さを追加。レストランでは評判が悪かった昔のイギリス料理とは対照的なモダンブリティッシュ料理を楽しむこともできる。ミュージアム・ショップは3カ所にあって、1階のメイン・ショップはアート関係の本や、子供向けの本やグッズなどがとても充実しており、テート・ギャラリーが所有する作品のプリントや、展覧会のポスターなども販売されている。

▲カフェ
©Designs and Patents Act 1988
▲レストラン
©Designs and Patents Act 1988
▲ミュージアム・ショップ
▲テート・コレクション・プリント

 テート・モダンといえば大規模な回顧展が特長のひとつ。最近開催された回顧展には、ゲルハルト・リヒター展、ジョアン・ミロ展、デミアン・ハースト展などがある。世界最大の現代アートギャラリーならではのパワフルな展示は必見。次は10月にオープンしたパウル・クレーの大回顧展。クレー自身が生前展示をしたとき以来、世界中に散らばってしまった作品たちが初めて再結集して 、アーティスト自身が構成した生前の展示と同様の展示となっている。2014年4月からはアンリ・マティス展が開催予定だ。

次ページでは、常設展示に関してご紹介します。>>

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文・写真:袴田早矢香(Sayaka Hakamata)
ロンドン在住、建築設計事務所勤務
Update:2013.11.1
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テート・モダン Tate Modern

所在地
Tate Modern, Bankside, London SE1 9TG
Tel
+44 (0)20 7887 8888
e-mail
information@tate.org.uk
URL
http://www.tate.org.uk/visit/tate-modern
開館時間
日〜木:
10:00〜18:00(最終入場は17:15)
金、土:
10:00〜22:00(最終入場は21:15)
休館日
12/24〜26
観覧料
無料(特別展を除く)
アクセス
地下鉄「Southwark」駅から600m、「Blackfriars」駅から800m、「St Pauls」駅から1100m
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