Dossier special - 国内の特集

  • 1.知られざる画家ホドラーの人生を知る
  • 2.3つのキーワードで巡る展覧会

日本・スイス国交樹立150周年記念 「フェルディナント・  ホドラー展」スイスが愛する巨匠の世界を楽しむために

フェルディナント・ホドラー(1853-1918)という画家をご存知ですか?
母国スイスでは「国民画家」として愛されている画家で、近年ではパリやニューヨークで相次いで回顧展が開催されるなど再評価の気運が国際的に高まっています。しかしながら、日本では今回の展覧会がじつに40年ぶりの回顧展。日本人にとって馴染みの薄い画家といえるかもしれません。そこで、まずはホドラーの人生を簡単に紹介します。

不幸な幼少期

▲《バラのある自画像》
1914年、油彩・カンヴァス、43×39cm、シャフハウゼン万聖教会博物館

 ホドラーは1853年、スイスの首都ベルンに6人兄弟の長男として生まれました。父は家具職人、母は料理人や小作人などとして働く、貧しい家庭でした。
 「家族にとって、死はいつでもそこにあった。まるでそうあらねばならないかのように、家には常に死人がいるようだった」
 のちに画家自身が述懐しているように、ホドラーの幼少期は常に「死」と隣り合わせの日々でした。7歳で父を、14歳で母を肺結核で失ってしまうのです。絵を始めたのは、母の再婚相手が装飾画家であったからだったようです。

「死」と「暗鬱」の青年期

 青年期に入ってなお、「死」はホドラーを追い続けます。1885年までに、ホドラーは残された兄弟のすべてを肺病で亡くしてしまうのです。
 折しも時代は世紀末。ヨーロッパ芸術の嗜好とも相まって、ホドラーの描く作品には「死」や「暗鬱」のイメージがまとわりついていました。さらに、詩人ルイ・デュショーサルを通じて象徴主義の思想と出会ったホドラーは、労働者や老人をモティーフに、人間の内面や深層心理を描こうと模索していきます。

▲レアリズムの影響を受けた初期の作品。右は《試作する労働者》(1884年)
▲《傷ついた若者》
1886年、油彩・カンヴァス、103.3×172.5cm、ベルン美術館 Kunstmuseum Bern, Geschenk des Künstlers

「生」の絵画への目覚め

 しかし、ホドラーは40代半ばを過ぎた1900年頃、暗鬱とした世界から解放され、「生」の絵画に目覚めます。
 ホドラーは、踊る人々などをモティーフに、「身体」を通じて「感情」を描くこと、さらには、それらの連鎖によって生まれるリズムが織り成す絵画を追求。「パラレリズム(平行主義)」と呼ばれる独自の美術理論へと向かいました。そして、この理論にもとづく絵画で、スイスを代表する画家として評価されるようになりました。

▲《悦ばしき女》
1910年頃、油彩・カンヴァス、166×118.5cm、ベルン美術館 Kunstmuseum Bern, Leihgabe
▲《感情III》 1905年、油彩・カンヴァス、117.5×170.5cm、ベルン州美術コレクション
©Kanton Bern (Prolith AG, Bern)

愛する人と自らの死

▲《バラの中の死したヴァランティーヌ・ゴデ=ダレル》
1915年、油彩・カンヴァス、60.5×124.5cm、
チューリヒ、コーニンクス美術館

 両親兄弟を立て続けに亡くした幼少期・青年期を過ぎ、「生」を描く喜びを見出した画家でしたが、人生の黄昏を迎えた頃、今度は、恋人の死に直面しました。妻子あるホドラーと恋に落ちた20歳年下のヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルは、出会いから5年後、ホドラーの娘を出産後間もなく、病に倒れ、死んでしまうのです。ホドラーは、恋人が危篤から死に至るまでの過程を120枚を超えるスケッチと18点もの油彩に描きました。
 そして恋人の死から2年後、ホドラーもこの世を去ります。享年65でした。

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Update:2014.11.1ページトップへ

日本・スイス国交樹立150周年記念 「フェルディナント・  ホドラー展」

会期
2014年10月7日(火)〜
2015年1月12日(月・祝)
会場
国立西洋美術館(東京・上野公園)
Tel
03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間
9:30-17:30
*金曜日、11月1日、11月24日は20:00まで
*入場は閉館の30分前まで
休館日
月曜日(ただし11月3日、11月24日は開館、翌火曜日は休館)
12月28〜1月1日
観覧料(税込)
一般:1,600円
大学生:1,200円
高校生:800円
中学生以下:無料

*開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は、公式サイト、ハローダイヤルでご確認ください。

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