本展はオートクチュールが発明された19世紀から10年ごとに時代を区切り、現在に至るその歴史を全7章でたどっています。展覧会の幕開けとなる第1章「オートクチュールの発明19世紀」を飾るのが、このイヴニング・ケープです。イギリス出身で後にパリに渡ったデザイナー、シャルル=フレデリック・ウォルトは、オートクチュールの父ともいえる人物。それまでの仕立服とは異なり、デザイナー主導で始めたウォルトの高級仕立服が、オートクチュールの基礎を築くことになりました。
このケープは、イヴニング・ドレスの上に着用するためのもののようです。絹ベルベッドの気品ある光沢、繊細にほどこされた絹リボンのアップリケなど、100年以上を経た現在も色あせない美しさを放っています。
幼い頃からクチュリエ(オートクチュールのデザイナー)になることを夢見ていたというラクロワ。みごと夢を実現させたラクロワは、現代を代表するクチュリエとしてその名を世界に知られるようになりました。そんなラクロワ自身のオートクチュールへの憧れを投影したかのような一着がこのドレスです。
ロングスカートには約7mもの布を使い、19世紀に流行した腰の部分が膨らんだバッスルスタイルを採用しています。また大振りのモティーフはオートクチュールの創始者であるウォルトのスタイルへのオマージュでもあるようです。そんな伝統的なスタイルに合わせたトップスは、なんと金属糸を取り入れた半袖のセーター。伝統と現代的なセンスがみごとに調和しています。
第二次世界大戦中、パリではオートクチュールの顧客が減少した上、街では女性でも軍服のような角ばったデザインの服を着ていました。しかし、戦争が終わった直後の1947年、暗い戦時中の空気を払拭するかのように、当時最大のメゾンであったディオールは新しいスタイルを発表。それは曲線を重視し、ウエストを絞った女性らしいドレスでした。ファッション誌『ハーパース・バザー』はこのスタイルを「ニュールック」と呼び、多くの女性は瞬く間にその虜となりました。
そんなディオールのニュールックの代表例であるこのドレスは、ウィンザー侯爵夫人、ウォリス・シンプソン(Wallis Simpson/1896-1986)のために作られたもの。パール・グレーの絹サテン地にパール・ビーズやスパンコール、ラインストーン、ラメ糸が豪華に刺繍されています。当初は床に届く長いスカート丈でしたが、侯爵夫人のほっそりとした身体とバランスをとるために短く変更されました。豪華でありながら軽快な雰囲気も併せ持つ、チャーミングな一着です。
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