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シャン=シュル=マルヌ城マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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大サロンの右手から、喫煙室へ。喫煙室はビリヤード室とつながっています。19世紀、男性たちは食事の後に、ここに置かれた緑のダマスク織布張りの肘掛け椅子(1930年頃)に腰掛けて煙草を吸ったのでしょう。暖炉の向かいにある、ボーヴェ製作所製の大きなタピスリー(1690-1732年)には、清の第4代皇帝の康熙帝(1654-1722)が、輿を取り囲む騎兵に護衛されて寺に到着し、イエズス会の宣教師に迎えられる場面が描かれています。この部屋は図書室としても使われていたそうです。とりわけ貴重な品々(中にはルイ15世の所有していたものも)もあり、かつては大きな机の上に出して見ることができましたが、今では金のブロンズ飾りが施された摂政様式の黒檀の棚に保管されています。暖炉の横には、ルイ14世の肖像画(18世紀初頭)が飾られていて、窓と窓の間にはジャン=バティスト・ヴァン・ロー(1684-1745)作の甲冑姿のルイ15世を模写した作品が飾られています。中央に架けられた洗練されたシャンデリアは、ルイ14世に仕えた有名な高級家具職人アンドレ・シャルル・ブール(1642-1732)の手で精巧に仕上げられた素晴らしい品です。

続いてはかの有名な「中国風サロン」です。なんと洗練され、繊細でありながら独創性を併せ持った空間でしょうか──。美術史的にも重要だと考えられるこのサロンの装飾は、エキゾティックな東洋を好んだ18世紀の趣味を映し出したものです。壁の板張りは1708年につくられ、絵は1748年頃、クリストフ・ユエ(1700-1759)の手によるもので、中国風の小さな人物像を取り巻く日常を表す空想の情景が描かれています。ルイ16世時代の椅子には、ラ・フォンテーヌの『寓話』を表したタピスリーが張られています。金箔が施された木製のコンソールテーブルの上には、18世紀中国でヨーロッパ向けに作られたボトルクーラーがあります。コーナー家具に「BVRB」の焼印があるのにご注目ください。これは、ポンパドゥール夫人の家具をつくった有名な高級家具職人ベルナルド2世・ファン・リーゼンブルヒ(1696-1767)の印です。

父から城を受け継いだシャルル・カーン・ダンヴェールは、1928年、「赤のサロン」をオフィスに改装します。その際、板張りと暖炉の上の飾り壁を取り外しました。ふたつの大きな本棚(17世紀)は、ブロンズに金箔を貼った四季を表す人物像で豊かに装飾されています。現在、壁には、シャルルの母親ルイーズが選んだ赤と白の絹地が張られ、当時の姿を取り戻しています。ここに隣接するのは、青の濃淡のカマイユ装飾が施された調和のとれた魅力的な小さな部屋です。もともとは化粧室として使われていましたが、1928年に書斎に改装されました。田園の楽しみを描いた中国風の装飾はクリストフ・ユエが1748年頃に手掛けたもので、青のグラデーションで仕上げられています。椅子には壁の色と揃えたタピスリーが張られています。

玄関ホールへ戻って1階のほかの部屋を見学しましょう。玄関ホールへ行く途中に、喫煙室の一部ともいえるような図書室兼ビリヤード室を横切ります。サロンの左手には食堂があります。ここは、食堂専用の部屋としてつくられたフランスで最初の部屋です。内装は非常に簡素で、タイル張りの床に大理石の大きなコンソールテーブル、両側には貯水器のあるふたつの水盤が置かれています。貯水器は金箔を施した鉛の仮面から水が出るようになっています。扉の上には、デポルト(1661-1743)作の犬の絵と、ウードリー(1686-1755)作の狐の絵が飾られています。暖炉の上には、ルイ14世のブロンズ彫刻があり、両側には当時流行していた日本製の磁器を真似たマイセン磁器の花瓶(18世紀)が置いてあります。その隣の、シャルルの息子ジルベール・カーン・ダンヴェールの寝室は飾り気のない部屋ですが、机と整理箪笥の豪華な装飾をご覧になってみてください。整理箪笥には、非常に有名な高級家具職人アンドレ=シャルル・ブールの名前から取った「ブール」と呼ばれる鼈甲と真鍮の寄木細工が施されています。

中庭側の配膳室の廊下を通り、使用人の部屋と子どもたちの食堂へと参りましょう。食堂はもともと18世紀には浴室として使われており、ポンパドゥール侯爵夫人の注文で、建築家アンジュ=ジャック・ガブリエル(1698-1782)が内装を施しました。床はタイル、壁は大理石を模した化粧漆喰です。これはこの種の室内装飾としては今日まで残っている唯一のものです。

Update : 2014.10.1

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