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カルヴェ美術館(アヴィニョン)マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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美術館へは左手の応接間から入ります。この部屋にはアヴィニョンの風景を描いた作品があり、ヴェルサイユ宮殿にあるような平らな丸天井の美しさも印象的です。左手には、北方のオールドマスターたちの作品が飾られています。まずはピーテル・ブリューゲル(子、1564-1636)の周辺にいた画家が描いた、賑やかな村の情景をご覧ください。2番目の部屋の中央には、ヤン・ブリューゲル(子、1601-1678)とヘンドリック・ファン・バーレン(1575-1632)による《触覚の寓意》がありますが、これは風景画家と流行の肖像画家とのコラボレーションです。子供が火に近づくのを止めつつ、鳥に指をついばまれている女性像は触覚を擬人化したものです。またフランス・フランケン(1581-1642)の絵画のある小部屋もお見逃しなく。この部屋は黒檀と金箔を施したブロンズの装飾パネル12枚で飾られています。右手のパネル、アブラハム・ブルーマールト作《十字架を運ぶキリスト》(1622年)は、キリストの顔に強い光が当てられ、その苦悩と信仰心が表されています。

彫刻の回廊に着くと、その大きさと明るさに驚かされます。正面前庭と庭園の両方に大きく開いた窓があるこの回廊は、1820年から1900年の新古典主義的な白い大理石彫刻の美しさが、素晴らしく引き立てられる場所といえましょう。その奥、右手にはノエル・コワペル(1628-1707)作の大きなタピスリーの下絵《アポロンの勝利》(1695年)が掛けられています。その前でひときわ存在感を放っているのは、スペインの多色彩色の木彫の騎馬像《聖ロンギヌス》(1700年頃)です。そして、その横にある小さな扉を抜けると、世界は一変。モダンアート・コレクションの部屋です。展示室の名前にもなっているヴィクトール・マルタン(1913-1988)のコレクションをはじめ、貴重な寄贈によるこのコレクションには、《退廃》(または《白痴》)をはじめとするスーティン(1893-1943)の絵画が5点ありますが、強い色彩で人間の惨めさを映し出した現実的な作品で、胸を打たれます。またモーリス・ド・ヴラマンク(1876-1958)の《カフェバーにて》で描かれるのは、ワイングラスを前に煙草を吸う厚化粧の身持ちの悪い女性。その悲劇的な孤独が表されています。

ピエール・ボナール(1867-1947)の《冬の日》(1905-1910年頃)は、ボナールにとって重要な主題が扱われた作品。外の厳しい寒さと対照的に快適な室内でくつろぐ女性の私生活へと私たちを誘うのです。南仏の画家オーギュスト・シャボー(1882-1955)は、《ニームの闘技場》(1927年)において、人物の衣裳に用いた鮮やかなプルシアンブルーから、闘技場に照りつける日差しを表す、燃えるように輝く黄色まで、強いコントラストの色彩を用いています。

近代絵画の展示室を出るとき、ふたつの小さな部屋も忘れずにご覧になってください。ひとつは、金銀細工品の傑作の数々が展示された部屋。もうひとつの部屋はメリディエンヌと呼ばれ、季節をテーマにした南仏の典型的な装飾(1770-1780年)が施された空間です。そこから再び大回廊を通って、17世紀と18世紀のイタリア絵画とスペイン絵画の部屋を横切り、エジプトの部屋まで参りましょう。この部屋はかつてのサロンで、曲線が美しく繊細なロカイユ装飾(天井は石膏と木彫で装飾)が施されています。そして邸宅が建てられた頃にさかのぼる美しいパノラマの風景画が飾られた小さな部屋には、3つの女性の石棺があり、ナポレオン1世によるエジプト遠征を思い起こさせます。

繰形(モールディング)に金を施した次の間には、たくさんの墓碑や石棺があります。青い壁に化粧漆喰の白い繰形が映えるこの部屋には、エジプト新王国時代(紀元前14世紀)の《王の書記官》の素晴らしい像が展示されています。 来たルートを戻り、ルネサンスからフランス革命までのアヴィニョンで創出された芸術作品を展示した部屋を通ります。シモン・ド・シャロン(1506-1568)の《聖家族》(1543年)や、ピエール・ミニャール(1612-1695)の《アマゾーンの女王と会うアレクサンドロス》(1660年頃)のような作品にはイタリアの影響がはっきりと見て取れます。

Update : 2015.12.1

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