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ラ・ロッシュ邸マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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建物の幅全体をつかったギャラリーは、ラ・ロッシュ邸の目玉ともいえる空間で、ラウル・アルベール・ラ・ロッシュのコレクションを展示していましたが、残念ながらそのコレクションは散逸してしまいました。右手の通常より低くつくられた天井の下を通って中にはいると、暖炉のそばにル・コルビュジエがデザインしたカウチがあり、ここからラ・ロッシュはギャラリー全体の眺めを楽しむことができました。1928年、水害に遭い、建築家のシャルロット・ペリアン(1903-1999)とアルフレッド・ロス(1903-1998)が改修工事をした際に、階段の手すりの下にガラスと金属でできた戸棚、部屋の中央には黒大理石の天板に金属製の脚のついたテーブルを設置しました。さらにギャラリーは創建当初の色彩を取り戻しました。入り口の壁は明るい水色、リノリウムの床はバラ色、荘重な階段の手すりは赤茶色でその丸みを帯びたフォルムは、ファサードとぴったり重なり合っています。この階段は3階から中2階、そして図書室へと続いています。この奥まった部屋は、反対側から見られずにすべてを見渡すことのできる空間で、コンクリートの棚が建築物と一体化しています。

2階はプライベートな空間です。食堂は、水平連続窓があるため外へ大きく開けており、とても明るい空間。装飾はなく、シンプルな家具が置かれています。木のプレートにニッケルの脚がついたテーブルは、ル・コルビュジエがデザインし、2009年に復刻されたものです。曲げ木を使ったトネ社の肘掛け椅子に、北アフリカの絨毯が敷かれ、天井からは裸電球が3つ下げられています。壁と天井のオークル(茶褐色)がこの部屋をとりわけ温かみのある場所にしています。隣には配膳室があり、ここに1階のキッチンから配膳リフトで料理が届く仕組みになっています。

3階に再び戻り、ラ・ロッシュの「ピュリスムの寝室」へと参りましょう。この部屋には、彼が気に入っていたピュリスム時代のル・コルビュジエの絵画の数々が掛けられていたため、そんなふうに呼ばれているのです。小さな部屋で、現在は何も置かれていませんが、当時はここにベッドとテーブルと低い整理箪笥が置かれ、質実剛健な雰囲気だったことが感じられます。バスルームとクローゼットが隣接しています。
最後にもう一度階段を上り、屋上庭園に行きましょう。ここからは庭と近隣の家並みの美しい眺めが得られます。四季折々の花咲く居心地のよい庭園で、小さな屋根もあるのでお天気の悪い日でもほっと一息つくことのできる場所です。

ル・コルビュジエは今や神話となった偉大な芸術家。近代生活により適した住居の新しい規範を打ち立て、建築をこれまでにないスピードで発展させました。続く世代は彼の作品を常に参照し続けていますが、彼の建築の見方は今なおアクチュアルな論争を呼んでもいます。例えば、彼の作品は現代の郊外団地の走りとなったと批判されたりもしているんですよ。いずれにせよ、彼の仕事が、建築に対するわたくしたちの見方を変えたことには、疑いの余地がありません。

友情を込めて。

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Update : 2016.2.1

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