Français 日本語
人類博物館マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
informations 3 2 1

Chers amis,親愛なる日本の皆さまへ

パリの中心、セーヌ河を挟んでエッフェル塔を真正面に望む一等地、名高いシャイヨー宮の建築物の中に、6年におよぶリニューアル工事を経て、あるミュゼがふたたびその扉を開きました。それが、本日皆さまをご案内するミュゼ・ド・ロム、人類博物館。人類や地球の未来をも視野に入れつつ、人類の進化や社会の発展についての理解を深めることを目的とした博物館です。

シャイヨー宮にはいくつもの文化施設がありますが、そのふたつの翼に囲まれた「自由と人権の広場」は、パリで最も人気の高い観光スポットのひとつ。エッフェル塔とシャン・ド・マルスを望む素晴らしい景観を楽しむことができるのです。シャイヨー宮は、ふたつの異なる時代の建築物で構成されています。1878年の万国博覧会の際にスペイン・ムーア様式で建てられたものの、1937年の芸術技術博覧会の際には当時の趣味に合わず、一部取り壊されて古典様式に建て直されたためです。

1937年、シャイヨー宮のパッシー翼に人類博物館を設立したのは、民俗学者のポール・リヴェ(1876-1958)でした。トロカデロ民族博物館(1852-1936)を前身として、「博物館=研究所」という新しく独創的なコンセプトを掲げたのです。人類への包括的アプローチのため、コレクション・研究者・観客がひとつの場所に集められました。そして、先史学、人類学・民俗学といった分野を結集した学際的な機関でもあり、実験室・資料室・図書館なども備えた人類博物館は、世界的に有名な研究機関となりました。その後老朽化により大規模な改修工事が必要となり、外観はそのままに、建物の内側だけ生まれ変わることとなったのです。

この改装によって博物館には自然光が大きな窓から注ぐ明るい空間が生まれ、以前よりもはるかに開放的になりました。2階の大窓からはエッフェル塔を望む素晴らしい眺めを堪能できるようになり、ミュゼの中心となる受付ホールの真上、高さ16mのアトリウムには、建築家ダヴィウ(1823-1881)作のガラス張りの屋根からの光が降り注ぐようになったのです。この屋根は創建当初のシャイヨー宮の遺構で、改修を経て素晴らしい状態で保存されています。展示室やカフェ、その他の場所(ホール、科学のバルコニーなど)の中心にアトリウムができたことで、館内の動線がとてもスムーズになったようです。

それでは、2階の「人類のギャラリー」へと参りましょう。ここは、このミュゼのユニークなコンセプト「博物館=研究所」を体現した展示空間。「われわれは何者か」「われわれはどこから来たのか」「われわれはどこへ行くのか」という3つの実存に関する質問に答えるかたちで人類の冒険を物語っていくのです。ギャラリーではビデオが上映されており、すべての人間はアフリカから来たひとつの大家族に属していること、人間はさまざまな種のひとつに過ぎないこと、そして人間は自然の一部であることを思い起こさせてくれます。

ギャラリー前半の展示では、人類の独自性を物語るさまざまな側面――肉体、思想、他者との関係、言葉――について探ることができます。右手の空間にはロダン(1840-1917)の弟子ポンポン(1855-1933)の美しいブロンズ製の鳥の彫刻がいくつか置かれており、人間が二足歩行をする唯一の種ではないことを表しています。一方、左手にいくと最初の展示ケースで生殖・出産というテーマが扱われており、生殖・出産が驚くほど、家族や宗教、文化などの背景と密接な関わりがあることが分かります。例えば、儀式の際に腹部につける「アンワリデンボ」と呼ばれるアフリカの木製の仮面は多産を象徴しています。

Update : 2016.4.1

ページトップへ

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。