右手には、赤い壁を背景に、このミュゼを象徴する人物ユリウス・カエサルのものと思われる彫像(-紀元前46年)が飾られています。写実的かつ極めて芸術性に富んだこの作品は、2007年秋にローヌ川から引き上げられたもの。皺の刻まれた老人の容貌を見事に捉えたこの彫像は、たとえそれがカエサルのものではなくとも、この地の高官か士貴族、あるいは有力者を表現したものなのでしょう。素材には、希少で高価なトルコ産の大理石が用いられています。
中央では、大理石のアウグストゥスの像(紀元前12-10年頃)が極めて強い存在感を放ち、訪問者は、まるでこのミュゼが劇場であるかのような錯覚を覚えるほど。これはコレクションの目玉作品で、3メートルの目線からほかの彫像を見下ろしています。この彫像の上半身は1750年に、頭部は1834年に発見されました。ルーヴル美術館の優美な《アルルのヴィーナス》の石膏模造(18世紀)や、《アルルの頭部》とも呼ばれる《アフロディーテの胸像》と同様、もともとは、舞台中央のニッチに飾られていました。《アフロディーテの胸像》は、ふたつの三つ編みを下の方でシニョンにしたエレガントな髪型が特徴的です。大理石のアポロンの祭壇(紀元1世紀末)は、舞台の土台を飾っていたと考えられます。
展示室に飾られたふたつの模型のうち、ひとつは今日も町中に見ることのできる円形競技場を表しており、もうひとつは、奥行き450m、幅100mで2万人の観客を収容できたという円形競技場(紀元148-149年)を再現しています。ここでは、二輪馬車の競争が行われていて、その様子は、浅浮き彫りで表されています。また、この地は湿地だったので、地盤を安定させるため3万本もの杭を打たねばならなかったのですが、そのサンプルが完全な状態で展示されています。
このミュゼでは2012年に新たな棟が特別に建設されました。アルル=ローヌ3号と名付けられた大型船を展示するためです。アルル=ローヌ3号は、アルルが河川・海上交通の重要な港で、商品輸送の重要な要となっていたことを示す極めて重要な資料。紀元50年代に建造された全長31mの平底船で、2004年、発掘作業によってその積み荷の石とともに発見されました。ローヌ川から引き上げられたのは2011年のことですが、難しい作業であったために、船を10片に切り分けねばなりませんでした。展示室では、この船の引き上げについての短いドキュメンタリーフィルムが放映されていましたが、思わず引き込まれる面白い映像でしたので、ぜひ、皆さまもご覧になってみてください。このとき見つかった多くの発掘品のうち480点以上が展示されています。例えば、アンフォラ(両取手付きの壺)や紡錘形、円形、洋梨形などさまざまな形の壺などがありますが、これらはオリーヴや果物といった食料品や、ワインやオイルといった液体を運ぶために用いられていました。5つの展示ケースにはガロア、イタリア、スペイン、地中海からもたらされた食器類が展示されています。
Update : 2017.12.1
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