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パリ造幣局マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。バックナンバーを読む
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階下に降りると、建物の中心部にある「大造幣所」へと出ます。ここは、ある種の寺院のような雰囲気をたたえた場所で、現在では7台の硬貨鋳造機が設置されており、機械が実際に動いているのを見ることができます。1973年以来、フランスの通貨鋳造はフランス南西部、ジロンド県のペサックの工場で行われていますが、ここでも、今なお2ユーロ硬貨と記念メダル、コレクション用メダルなどが鋳造されているのです。アトリエの半円形の後陣には、貨幣の鋳造を見守り、この場所を守護する巨大な彫像、L.P.ムーシー作《財産の女神》が置かれています。
2階に戻ると、さまざまな形態の通貨を展示する部屋に出ます。ここでは、通貨だけでなく、それぞれの通貨が流通した社会のあり方がよく分かります。ある展示ケースには、カカオ豆、貝、お茶の塊、腰巻き、首飾りなど、非常に多彩な伝統的通貨が展示されています。右手の壁には、通貨の歴史を記した年表があります。
美術作品のコレクションはL.H.デュポン作《ジャン・ワランの胸像》(1930年頃)を中心に紹介されています。ワランは並外れた彫金師でした。フランソワ・ルメール作《子供のルイ14世にメダルの技法を教えるジャン・ワラン》 (1650年頃)が表しているように、ワランはルイ13世、ルイ14世の治世下、貨幣やメダルの製作方法を変革した人物なのです。

ルイ14世が国王付きの第一高級家具職人アンドレ=シャルル・ブール(1642-1732)に注文した素晴らしい小箱には、ルイ14世の治世を称賛するメダルが収められています。これらは王政の歴史の長さ、そしてその連続性を示す目的で贈答品として使われました。造幣局は常に第一級のアーティストたちとコラボレーションをしてきたのです。服飾デザイナーのクリスチャン・ラクロワがデザインしたメダル《1500年の歴史、クロヴィスから共和国まで》が、君主の肖像を描いた金や銀の貨幣とともに展示されています。

アルミニウムで覆われた、まさに金庫のような様相の宝物室では、通貨の歴史におけるいくつかの発見についての展示がなされています。そのひとつが、東インド会社のオランダ船スロット・テル・ホーグの漂流物です。1724年、マディラ近くで難破したこの船には、鋳塊のほか、スペイン・オランダのたくさんの通貨の積み荷が含まれており、1箱を除いて発見されていました。その後、1974年に考古学者が難破船の残骸を再調査し、最後の大箱を中身とともに発見したのです。ミュゼには、見本としてそのうちの1点が展示されています。安南(現在のべトナム)皇帝の宝物は、1885年、フランスがこの国を保護領にした際フランス人によってフエの宮殿で発見されました。宝物は溶かされることになっていましたが、一部は免れました。漢字が書かれた鋳塊と、さまざまな硬貨が大きな展示ケースを明るく照らしています。ひとつひとつの鋳塊が異なる色(ピンクゴールド、グレーゴールド、イエローゴールド)なのです。そして皆さま、パリでも宝探しができることをご存知でしょうか。1938年、ムフタール通りのアパルトマンで、職人たちがルイ15世の治世下に鋳造された3,556点の硬貨を発見したのですよ。

造幣局の成功は、ひとつの場所に展覧会用のスペース、ミュゼとそのコレクション、そして工房での製作と、すべての機能を収めることができた点にあるでしょう。職人が仕事をしているところを見られることが、このミュゼに人間的な側面を与えています。外に出る前に、17メートルの高さの大きなガラス窓から日の光が差し込むとても素敵なショップに立ち寄るのをお忘れになりませんように。それから中庭に面した新しくて居心地の良いカフェ「フラッペ・パー・ブルーム」にもいらしてみてください。
2018年末には、かつての工場の場所に新しい庭がオープンする予定です。工場を壊すことで、1669年、ルイ14世付きの建築家ジュール・アルドゥアン=マンサールによって建造された素晴らしい邸宅が、2世紀以上ぶりに姿を現すのです。

友情を込めて。

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Update : 2018.4.2

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