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Chers amis,親愛なる日本の皆さまへ

皆さま、「王妃の村里」をご存じでしょうか? 2世紀にわたって閉鎖されていた「王妃の村里」は、広大なヴェルサイユ宮殿にあって、未だ多くの人には知られていない美しい区域。ディオールのメセナの一環として修復が行われ、この度、一般に公開されることになりました。

宮殿から3kmほどの場所にあるこの村里は、1783年から1787年にかけて建設されました。ルイ15世(1710-1774)がその治世の終わりにつくらせた「グラン・トリアノン(大トリアノン)」、そして宮殿での暮らしを厭ったマリー=アントワネット(1755-1793)が好んで過ごしたことで知られる「プチ・トリアノン(小トリアノン)」からなるトリアノンの一画にあります。大勢の来訪者で賑わうヴェルサイユ宮殿の喧騒から逃れたい方にとって、ここ「王妃の村里」はまさに静かな隠れ家のようなもの。この場所をとりわけ愛したかの王妃マリー=アントワネットのようにここを散策なされば、きっと素晴らしい時間を過ごすことができるに違いありません。

村里の中心にある「王妃の館」を見学するには、ヴェルサイユ宮殿の公式サイト(www.chateauversailles.fr)から、ガイド付き見学の申し込みが必要です。余裕をもって予約なさることをおすすめします。

劇場的な装飾に満ちたこの村里は、素晴らしい魅力に溢れた空間です。ヴェルサイユの宮廷の厳格な礼儀作法、そして過剰な豪華さから遠ざかることを望んだマリー=アントワネットが願い出てつくられ、宮殿からは見えない場所にあります。この度、建物の外観は王妃在りし日のままに改修されました。一方、内装は1811年の状態に修復され、その当時の家具が入れられたというのです。というのも、ナポレオン(1769-1821)は、妻でマリー=アントワネットの姪でもある皇后マリー=ルイーズ(1791-1847)のために、この村里の建物の内装を彼女の洗練されたセンスに合わせて改装、装飾させているのです。さらに、1789年以前にあった家具類は、革命期に散逸してしまいましたが、第一帝政期の装飾品や家具は、ヴェルサイユ宮殿や国有調度品管理局、マルメゾン城などに数多く残されていました。そのため家具の四分の三は、帝政期のものです。1810年から1811年の財産目録と、さらには納入業者の回想録が保管されていたため、それぞれの部屋の装飾と家具を再現するのは、難しいことではありませんでした。

神聖ローマ皇帝フランツ1世(1708-1765)と、オーストリア大公マリア=テレジア(1717-1780)の娘であるマリー=アントワネットは、14歳でフランス王位継承者ルイ16世(1754-1793)のもとに嫁ぎました。この結婚は、フランスとオーストリアというふたつの大国に和平をもたらすためのものでした。けれども、ウィーンの宮廷でのびのびと育ったマリー=アントワネットは、ヴェルサイユの宮廷に馴染めず、フランス皇太子妃としての義務を全うすることを拒みます。1774年5月10日にルイ15世が亡くなると、彼女は18歳でフランスおよびナバラ王妃になりました。ルイ16世は、シンプルな気晴らしとくつろげる場所を夢見ていた妻のためにプチ・トリアノンを贈ります。1775年から王妃は庭を英国や中国風に手を入れ直します。こうしてプチ・トリアノンの庭園はフランス式庭園の持つ厳格な左右対称性とは無縁となり、曲がりくねった小道に、東屋(音楽のサロン)をはじめとするおままごとのような小さな建造物が点在するつくりとなったのです。こうして演劇や喜劇、ダンスを愛した王妃は、ここで日夜壮麗なパーティを催し、お祭りのような暮らしを送ったのです。

自然を楽しむために、また子どもたちの教育という目的もあり、王妃はプチ・トリアノンの一画に趣あるノルマンディーの田舎風の「王妃の村里」をつくらせました。設計の命を受けた国王の第一建築家リシャール・ミック(1728-1794)は、著名な画家で庭園デザイナーでもあるユベール・ロベール(1783-1808)からインスピレーションを得て、「王の村里」を完成させました。ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)をはじめ、自然への回帰が謳われた啓蒙の時代の理想に影響を受けた王妃は、息詰まるような宮廷を逃れ、「王の村里」で子どもたちとともに過ごし、彼らに田園での暮らしを教えたのです。親しい人たちに囲まれて、食事をし、屋内ではビリヤードやトリックトラック(すごろくの一種)に興じ、屋外ではペタンクやクロケットを楽しみ、湖でボートに乗って……しかし、驚くべきことかもしれませんが、王妃は決してここに宿泊することはなかったといいます。

Update : 2019.8.1

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