
© Yoko Masuda
エンネル美術館は1924年の開館以降も、数々の寄贈や遺贈によってコレクションを増やし続けてきました。ルーヴル美術館、オルセー美術館からも複数の作品が寄託されており、質、量ともにエンネルに関する最も重要なコレクションを所蔵する美術館となっています。また、エンネル自身が所有していたほかのアーティストの絵画やデッサン、彫刻等がコレクションに含まれており、それらの一部は企画展などを通して紹介されています。
改装工事によって新しく設けられた1階の展示室には、エンネルの作品以外にも彼の使用したパレットや絵の具、アカデミー会員のコスチュームなど、画家ゆかりのさまざまな品々が展示されています。2階から最上階にかけては、アルザス、イタリア時代、そして公的なキャリアと、エンネルの主要な経歴を辿るかたちで作品を鑑賞することができ、それら作品のテーマは、歴史、宗教、神話、肖像画、静物画、アルザスやイタリアの風景と、多岐にわたります。

© Yoko Masuda
展示品はサロン出品の大作から、エスキース(習作)まで、幅広い内容で構成されており、なかには新聞紙やタバコの箱を利用して描かれた珍しい作品も含まれています。こうした画家の個人的な作品を楽しむことができるのは、ひとりの画家をテーマとする美術館ならではの醍醐味といえるでしょう。
エンネルは自身の故郷であるアルザスの風景を生涯を通じ頻繁に描きました。1871年にアルザス・ロレーヌ地方が普仏戦争の敗北によりドイツ帝国の統治下となったことは、エンネルにとって大変ショッキングな出来事であり、彼の故郷に対する想いはそういった理由からも特別なものでした。アルザスの池や雑木林は、風景画のテーマとしてだけでなく、神話画の背景としてもエンネルの作品中に描かれており、それらの作品からは彼の故郷に対する愛情が滲み出ています。
エンネルの作品でもっとも名高いのは、1871年に描かれた≪アルザス、彼女は待つ≫(L'Alsace. Elle attend)と題された人物画です。これはアルザス地方のタン(Thann)という町に住む実業家の妻たちから注文された作品で、当時アルザス・ロレーヌ地方の割譲に対して最も有力な反対者のひとりであったレオン・ガンベッタ(Léon Gambetta)に贈られました。作品は特定の人物を描いた肖像画ではなく、カンヴァスには喪に服した若いアルザスの女性が毅然と正面を見据えた姿で描かれています。普仏戦争の敗北により、フランス人の愛国心がより一層強くなる社会背景のなかで、この作品はアルザスの苦悩を表す絵画としてたちまち象徴的な存在となりました。
そして写真や版画はもとより、陶器、歴史本、メダル、タピスリーなどにコピーされ、広くフランスに普及しました。エンネル自身にとっても故郷喪失の悲しみを表した特別な作品であり、彼のアルザスに対する想いが強く込められています。
- 所在地
43 avenue de Villiers 75017 Paris - Tel
+33 (0) 1 47 63 42 73 - Fax
+33 (0) 1 43 80 00 82 - URL
http://www.musee-henner.fr - E-mail
info@musee-henner.fr - 開館時間
11:00-18:00
*毎月第1木曜日は21:00まで開館 - 休館日
火曜、祝日 - 入館料
一般:5ユーロ
割引:3ユーロ - アクセス
パリの地下鉄3番線Malesherbes駅または2番線Monceau駅より徒歩
- MMFインフォメーション・センターでは、ジャン=ジャック・エンネル美術館のカタログやパンフレットなどを閲覧いただけます。

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