Francais 日本語 縁日博物館
informations 3 2 1

©Les Pavillons de Bercy
親愛なる日本のみなさまへ

もし年末の休暇にパリにいらっしゃるなら、ぜひともご家族そろって訪れていただきたい特別な場所があります。小さな子どもから大人まで、みんなが楽しめる空間――、それが9月にわたくしが訪れた縁日博物館です。この博物館は訪れるすべての人を、魅惑的な世界やおとぎの国へと誘い、誰もがすばらしい思い出を残すことができるでしょう。


まずはわたくしから、ちょっとしたアドバイスを。この博物館にお出掛けになられるのでしたら、事前に必ず予約を入れておくことが大切です。博物館を訪れれば、理由はきっとすぐにお分かりになるはずですよ。入場は少人数のグループに制限されていて、他ではまずめったに体験できないことですが、誰もが展示品に触れて、動かすことができるようになっているのです。それは、ここが生きた博物館である証です。ここを訪れた方たちは、たくさんの遊びやすばらしいアトラクションに参加することができます。たとえば、いくつもあるメリー・ゴーランドに乗ることでさえ、可能なのですよ。わたくしは、テーマパークに足を踏み入れたような感覚に襲われ、たいへん驚かされました。

縁日博物館は、パリの東、ベルシーの新興地区にあります。ここにはかつて古いワイン倉庫が建ち並んでいました。18世紀に入ると、ワインの取引所が開かれ、19世紀には世界で最も大きなワイン市場となります。そのため、数多くの倉庫の建設が必要となりました。当時、このあたりはパリで最も陽気で華やいだ地区のひとつだったのです。


▲ワイン倉庫の中にある縁日博物館。
©A. de Montalembert

▲縁日博物館の入り口。
©A. de Montalembert

▲緑が美しい縁日博物館の受け付け。
©A. de Montalembert


▲ベルシー公園の湖の家。
©A. de Montalembert

▲クール・サンテミリオン正面の入り口。
©A. de Montalembert

そして今日、この地区は再開発が進められ、大蔵省やパリ−ベルシーのパレ・オムニスポール、シネマテークが軒を連ねています。ベルシー公園もとても魅力あふれる場所なので、足を運んでみてくださいね。公園には芝生やさまざまな庭園(果樹園や菜園、ばら園)があり、ぜひとも訪れていただきたいところです。

ワインが取引きされていた時代を偲ばせるかのように、園内には今でもぶどうの苗や立派に復元されたワイン醸造所がいくつも残されています。散歩を楽しまれるなら、わたくしは、クール・サンテミリオン通りをお勧めします。そこは石畳の小さな歩道――。ワイン商人が築いた小さな町だった頃の面影がそこかしこに刻まれています。通りの中央には、ワインの運搬に使われていたレールが今でも残されています。そして、煉瓦造りの古い倉庫には、洗練されたブティックやたくさんのワインバーもあるので、ひととき足を止めてみてくださいね。きっと、明るく打ちとけた雰囲気を楽しんでいただけるはずです。

地下鉄のクール・サンテミリオン駅を出て、サンテミリオン・ショッピング・アーケードを抜ければ、縁日博物館が建つ「パビリオン・ド・ベルシー」の後ろ側に出ます。1996年に建てられたこの博物館は、みごとに復元されたワイン倉庫のなかにあります。煉瓦でできた丸天井の出入口や、金属製の大きな骨組みをもつ、 珪石 けいせき で建てられた趣深い倉庫は、建築家ギュスターヴ・エッフェル(1832-1923)の弟子、ルルーの作品です。


▲パビリオン・ド・ベルシー。
©A. de Montalembert

▲サン・テミリオンのアーケード。
©A. de Montalembert


▲「テアトル・ド・ヴェルデュール(緑の劇場、野外劇場)」。
©A. de Montalembert

さて、建物のまわりを一周して、メインゲートから「パビリオン・ド・ベルシー」に入ってみることにいたしましょう。中では、「ヴェネツィアン・サロン」や、「縁日博物館」、「テアトル・ド・メルベイユ」、「テアトル・ド・ヴェルデュール(緑の劇場、野外劇場)」が、みなさまを迎えてくれます。お祭りや見世物用のこうした建物は、熱心な収集家だったジャン=ポール・ファヴァンによって建てられたもの。彼は誰もが喜び、幸せを感じられるようにと、19世紀の終わりから20世紀初めの時代の縁日の雰囲気を再現しようとしたのです。ファヴァンは、ベルギーやドイツ、イギリス、そしてフランスなどのヨーロッパの国々から、たくさんの縁日にまつわるアトラクションを集めることに成功しました。こうしたアトラクションを当時のままの姿に復元することに、彼は情熱を傾けました。その彼の熱い思いが実り、ここのアトラクションは命を吹き込まれたかのように、すべて完璧な状態で動くようになったのです。こうしたジャン=ポール・ファヴァンのコレクションは、世界でも最も重要なコレクションのひとつであり、そのごく一部がこの縁日博物館で展示されているという訳なのです。そして倉庫では、まだまだたくさんの品々が再び命を与えられることを待っています。


次のページへ