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パリ市立プティ・パレ美術館「イヴ・サンローラン」展 backnumber
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▲「イヴ・サンローラン」展の入り口
© A. de Montalembert
親愛なる日本の皆さまへ

偉大なるフランス人クチュリエにして、類まれなる才能で世界にその名を知られた芸術家イヴ・サンローラン(1936-2008)。その功績を称える特別展が、プティ・パレとピエール・ベルジェ-サンローラン財団の主催により実現いたしました。パリ市立美術館を有するプティ・パレは、サンローランへの敬意を表したこの特別なイベントには、理想的な場といえましょう。


シャンゼリゼやアンヴァリッド、そしてセーヌ河からほど近いこの大きな建物は、建築家シャルル・ジロー(1851-1932)の設計によるもので、1900年のパリ万国博覧会のために建てられました。折衷的な様式ながら重すぎる印象がなく、ふんだんに装飾が施された建物は、まさに芸術作品。反対側の歩道、すなわちグラン・パレ側からは、花飾りや果実、天使などの彫刻で飾られたファサードが、ひときわよく見えます。豪華な中央の格子門もまた、ジローがデザインしたもので、しなやかな曲線と花を組み合わせた文様がアール・ヌーヴォーを思わせる鉄細工の傑作です。


▲プティ・パレのファサード
©A. de Montalembert

▲セーヌ河畔に建つプティ・パレ
© A. de Montalembert


▲柱廊に囲まれたプティ・パレの中庭
© A. de Montalembert

2001年から2005年という長い改装期間を経て、建物は見事に生まれ変わりました。豊かなボリューム感や広々とした回廊、豪華な装飾など、プティ・パレ本来の華やかさが蘇ったのです。シャンゼリゼ公園と中庭に面した大きなガラス窓が至るところで開かれ、館内には自然光が溢れるようになりました。半円形の中庭は柱廊に囲まれており、その丸天井には、ぶどう棚をモチーフにしたフレスコ画が描かれています。ヤシの木やバナナの木、そして花々が植えられ、青と金のモザイク模様の泉で飾られたこの中庭は、都会の喧騒も遠くに感じる穏やかな憩いの場。ゆっくりと心を解き放つには、うってつけの場所です。


▲プティ・パレのギャラリー
© A. de Montalembert

プティ・パレのコレクションは、それだけで見学に値するといえましょう。古代ギリシヤ文明から第一次世界大戦(1914-1918)期に至るまでの、数多の美術作品が収められていますが、とりわけ19世紀絵画のコレクションは見ごたえがあります。ドラクロワ(1798-1863)やクールベ(1819-1877)もありますし、モネ(1840-1926)の《ラヴァクールでのセーヌの日没、冬の日》、セザンヌ(1806-1939)の《アンブロワーズ・ヴォラールの肖像》といった印象派の作品も、お見逃しにならないでくださいね。

このミュゼは、多くの寄贈を受けてきました。最初は、デュテュイ兄弟から贈られた古代美術の驚くべきコレクションで、ルーベンス(1577-1640)やレンブラント(1606-1669)といった黄金期のフランドル絵画やオランダ絵画、さらにデッサン画や版画一式から成るものでした。それから、主として18世紀フランス美術に捧げられたタック・コレクションには、セーヴル磁器の美しい品々や、焼印を押されたそれは見事な家具調度があります。そして、最後に忘れてはいけないのが、フランスのイコンを集めた重要なコレクションです。ご覧のとおりプティ・パレは、かくも多様で豪華な美術作品を数多く所蔵する、他に類を見ないミュゼなのです。

イヴ・サンローランに敬意を表する最初の回顧展がプティ・パレで開かれたのは、ごく当然のなりゆきだったといえましょう。この回顧展は、教養溢れる天才クリエイターとしてのサンローランのみならず、美術コレクターでもあった偉大なる芸術家としてのサンローランにも光を当てています。サンローランのコレクションは非常にユニークなもので、2009年にはグラン・パレで催された桁外れの競売の対象となったばかり。マスコミでも大きく取り上げられ、「世紀のオークション」とさえ呼ばれました。

この特別展は、フランスのファーストレディ、かつてファッション・モデルだったカーラ・ブルーニ=サルコジ夫人のパトロネージュによって企画されました。イヴ・サンローランの歴史を、クリエイターとしての彼の生涯に沿って辿ることができます。展示されているのは、300点ものオートクチュールやプレタポルテの型のみならず、デッサン画や映像、写真の数々。知的で独創的、そして魅力溢れる展示をご覧になれば、イヴ・サンローランがいかに女性モードに貢献してきたかが、よくお分かりいただけると思います。


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