
▲花々が咲き乱れる春のブルトイユ城
©Michel André
この城の主ブルトイユ家は、代々、王政と非常に結び付きが強く、中には政治の場で重要な役割を果たした当主もいました。ルイ・ブルトイユ(1609-1685)は、ルイ14世(1638-1715)のもとで大臣を務め、フランソワ=ヴィクトール(1686-1743)とルイ=オーギュスト(1730-1807)も、それぞれルイ15世(1710-74)とルイ16世(在位1774-92)のもとで大臣の職に就いていました。城は父から子へと400年間受け継がれ、現在のブルトイユ侯爵もここに家族とともに暮らし、今からちょうど40年前の1971年に城を一般公開して以来、自ら来館者を迎えています。城の電話の自動音声ガイダンスの声は、実はブルトイユ侯爵のお声なのですよ。庭園は皆さまご自由に散策できますが、城を見学なさる際には必ずガイドが付きます。

▲フランス式庭園の植込みと石壺
©Milochau
この城が建っているのは、今日では鳩小屋のみが残された中世の城塞跡。レンガと石で造られた建物は、16世紀末に方形広場の周りに再建され、18、19世紀と拡張工事がなされたルイ13世様式の城で、本館と両翼からなります。革命期には、未成年のシャルル・ド・ブルトイユ(1781-1864)が城主であったことから、この城は警察によって閉鎖され、破壊を免れることとなりました。シャルルが再びこの城を取り戻したのは、ナポレオン1世(1769-1821)治世下のことでした。そして19世紀末になると、アンリ・ド・ブルトイユ(1848-1916)が風景画家アンリ・デュシェーヌ(1841-1902)とアシル・デュシェーヌ(1866-1947)に依頼し、泉水とイチイの木、彫像、そしてツゲの生け垣が巧みに配されたヴェルサイユ宮殿のようなフランス式庭園を造らせたのです。
それでは、城の1階、ルネサンス風に装飾された19世紀の「大回廊」から見学を始めることにいたしましょう。ここでわたくしたちは、光栄にもブルトイユ侯爵から、著名なご先祖の肖像画について、中でもルイ14世(1638-1715)の大臣を務め、ペローの友人でもあったルイの肖像画についてお話しいただく機会に恵まれました。ここには、ルイ16世(1754-1793)の肖像画も2点飾られていますが、そのうち、ジョゼフ・ボーズ(1745-1826)の手による1点は、門外不出の作品。エレガントな普段着姿の王の肖像画は、革命以前に国王から直々に贈られたものだそうです。暖炉の上に掛けられたもう1点の肖像画はアントワーヌ=フランソワ・カレー(1741-1823)の作で、王家の象徴である百合の花が刺繍された青いマントをはおり、聖別式の荘厳な衣装に身を包んだルイ16世が描かれています。