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アノンシアード美術館 バックナンバーを読む
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▲アノンシアード美術館の正面玄関
©A. de Montalembert
親愛なる日本の皆さまへ

コート・ダジュールでのヴァカンスの折、美しく小さな湖畔の町ポール・グリモーから連絡船に乗って、サン=トロペへと足を延ばしました。サン=トロペはわたくしが生まれた村。そのせいか、ここにはとても愛着を感じていて、今でも折につけ立ち寄るのです。ビーチが素晴らしく、ナイトライフも充実していることから、世界中から多くの富裕層が集まることで知られています。色とりどりの家々が軒を並べ、ヨットや豪華なクルーザー、そして「ポワンチュ」と呼ばれる漁船が行き交うこの小さな漁村には、宝物がたくさん隠されています。そのひとつが、今回、皆さまをご案内するアノンシアード美術館(Musée de l'Annonciade)です。


▲サン=トロペの港
©A. de Montalembert

港の喧噪から少しだけ奥まった場所にあるアノンシアード美術館は、フランス絵画史を語る上では欠かせない「点描派」や「ナビ派」「フォーヴィスム」の流れを俯瞰できるミュゼ。趣きのある建物は、1922年に16世紀の礼拝堂を改装してつくられたもので、1950年代に当時の趣味に合わせて改装されています。19世紀末から20世紀初頭の傑作が一堂に会するこのミュゼを巡れば、サン=トロペが前衛芸術において、とても重要な地であったことがお分かりいただけることでしょう。実際、1892年から20年以上もの年月をここで暮らしたシニャック(1863-1935)をはじめ、彼を頼って、マティス(1869-1954)やクロス(1856-1910)、ボナール(1867-1947)といった多くの画家たちがこの地に集まってきました。サン=トロペの地に溢れる独特の光が、彼らの作品に大きな影響を与え、色彩、そして技法を一新させることになったのです。

美術館に入ると、礼拝堂の身廊、内陣、側廊といった空間がそのままに残されており、この建物がかつては祈りの場であったことを思い起こさせてくれます。今では地中海の光が入るように窓が改装されており、そこから港や船、海、遠くにはモール山脈の山並みを望む素晴らしい風景を見ることができます。そして、サン=トロペとその周辺地域の存在を不朽のものにした絵画は、作品が描かれたときと同じ、類い稀な光の中に展示されています。2階の大展示室に入り、そこに飾られた絵画を見回すと、まず、鮮やかで、まばゆいばかりの色彩に驚かされます。


▲アノンシアード美術館
©A. de Montalembert

▲2階の大展示室の様子
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.


▲スーラ《グラヴリンの水路のための習作》1890年
©L'Annonciade, musée de Saint-Tropez, photo Jean Louis Chaix, Ville de Saint-Tropez.

「新印象派」は19世紀末に登場した流派ですが、その最も典型的な作品といえば、そのリーダーであったジョルジュ・スーラ(1859-1891)の《グラヴリンの水路のための習作》(1890年)。このミュゼが所蔵する最も古い作品でもあります。スーラは、視覚的効果に関する科学的発見に影響を受け、新しい技法「点描画法」を練り上げることで、絵画を革新しました。それぞれがはっきりと分かれた細かな色のタッチを使うことで、離れて見ると明るい印象を再現することができるのです。


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