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バルビゾン村の美術散策 Le Village de Barbizon バックナンバーを読む
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▲かつてのガンヌ旅館を改装したバルビゾン派美術館
©A. de Montalembert
親愛なる日本の皆さまへ

パリから南へ60km、森となだらかな平野に囲まれた美しい村バルビゾンは、世界中から人々が訪れる「バルビゾン派」の聖地です。「バルビゾン派」とは、19世紀末に生まれた言葉で、この地に暮らし、創作した芸術家たちに冠された名称のこと。エコール・デ・ボザールのアカデミックな美術教育に失望した若きアーティストたちが、1830年を境にパリのアトリエを離れ、バルビゾンの自然の中で写生を始めたことに由来しています。19世紀は、鉄道網の発達とチューブ入りの絵具の発明によって、芸術家たちが戸外での制作ができるようになった時代だったのです。表現の自由や真実を探求した若い彼らは、新たなインスピレーション源となる地を求めて、方々を旅して回ります。そして、自然の美に心をゆさぶられ、移りゆく空の光や変化し続ける森の影をカンヴァスに再現しようと試みました。


▲バルビゾン村の大通り
©A. de Montalembert

▲フォンテーヌブローの森
©A. de Montalembert

そして、そんな彼らにとって、フォンテーヌブローの美しい森のそばにあるバルビゾン村は、理想的な場所でした。1本の道で森と結ばれた村は美しく静かで、さらには生活費も安く、村人も親切に芸術家たちの生活を助けてくれたのですから。

1830年から70年にかけて、「バルビゾン派」の芸術家たち(コロー、ルソー、ミレー、ディアズ、シェニョー)の多くが、彼らのたまり場であるガンヌ旅館にやってきました。1824年に開業したガンヌ夫妻の宿はあたたかく家庭的なもてなしで、食事や寝所を提供していました。現在は「バルビゾン派美術館」になっているこの宿屋は、壁や家具など、そこかしこに画家たちが残した絵が見られ、彼らが集っては、賑やかに騒いでいた在りし日の様子を彷彿とさせる場所です。


▲部屋の奥にあるガンヌ夫妻の寝台
©A. de Montalembert

▲ガンヌ旅館内のかつての食料店
©A. de Montalembert

それでは、宿屋の中へと参りましょう。宿の中心は、1階の中央に位置する部屋。かつては、表通りに面した扉が部屋への出入り口でした。そこは食料店の店先であると同時に、寝室であり、調理場かつ談話室でもあったという部屋です。残されたカウンターからうかがえるように、ガンヌ家の人々は、砂糖やコーヒー、シナモンなどの食料品を販売していたのです。部屋の奥には田舎風の夫婦の寝台があります。誰よりも夜遅くまで働き、また、朝早くから仕事を始めていた宿屋の夫妻は、ここでつかの間の休息を取っていたのでしょう。戸棚の扉には、カミーユ・コロー(1796-1875)が描いた小さくて可愛らしい風景画が残されています。


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